今観てほしいおススメ映画「レ・ミゼラブル」

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現代社会が抱える闇を描いた作品「レ・ミゼラブル」

ビクトル・ユーゴの小説「レ・ミゼラブル」度々映画化されミュージカルでも有名なこの作品の舞台となったパリ郊外のモンフェルメイユは現在は犯罪多発地区の一部である。ある事件をきっかけに警官が移民の男の子に発砲、それをきっかけにとんでもない大きな暴動に発展してしまう。モンフェルメイユ出身で現在もこの地に暮らすラジ・リの初長編監督作品で、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞している。ラジ・リ監督の体験に基づいた話であり、ドキュメンタリー要素のある映画である。

シェルブールから赴任してきた善良な警官のステファン(写真左)と正義のなんたるかを忘れた警官(写真中央と右)引用元https://www.la-croix.com/Culture/Cinema/Cannes-2019-Miserables-lautre-cote-periph-2019-05-15-1201022133

フランスでは都市郊外のスラム化が社会問題になっていて、ヨーロッパ全土にも広がっている。特に移民を受け入れているフランスでは、宗教と人種の入り混じった難民問題がありそれが事件や事故に発展することがある。

「絶望」という言葉がぴったりなこの街は、権力と暴力でふりかざす良心のかけらもない警官や、麻薬の売人やロマのサーカス団、無学で暴力と悪意しかない地域の大人たちとそれに虐められる子どもたち、移民と低所得層がひしめき合っている。警察官が移民の男の子に発砲する事件がおこり、それをきっかけに今までの積り積もったものが爆発する。「格差社会の現実の悲惨さを」描いた物語で、こうした現状を作った社会や政治に対してのメッセージである。

ちょっとした悪戯心からライオンを盗んだ移民の少年(写真右)をきっかけに物語はとんでもない展開へと進む。引用元https://intrld.com/les-miserables-de-ladj-ly-aura-le-droit-a-une-trilogie/

上映映画館

大阪

シネ・リーブル梅田https://www.ttcg.jp/cinelibre_umeda/

神戸

シネ・リーブル神戸https://www.ttcg.jp/cinelibre_kobe/

京都

京都シネマhttps://www.kyotocinema.jp/

kansaipress編集部から

最後に出てくるビクトル・ユーゴの言葉「よく覚えておきなさい。世の中には悪い草も悪い人間もいない。ただ、育てるものが悪いだけだ」のように、この物語の子どもたちも彼らの周りにいる大人同様理性の利かない愚かな大人になり、またその子供も同じようにと、負の連鎖は続いていく。どこかで負の連鎖を断ち切らないといけないのに、どうすることもできない。それを教えるものもいないし、知る術もなく知ろうともしない。優雅で華やかで、お洒落で哲学的な街 パリ。だけど見ている部分はほんの一部で郊外に行けばこれが現実である。ドキュメンタリー映画じゃないか思うぐらいにリアルである。予告で言ってある通り最後の30分は恐ろしくもあり衝撃的だった。

文/後藤麻希