【国宝・姫路城で平成中村座と共に江戸時代へタイムトリップ!】「父が遺してくれた宝物と宿題、僕達は一生かけて守り、発展させてく!!」

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国宝・姫路城三の丸広場にて江戸時代の芝居小屋が蘇る!

2023年5月3日(水祝)〜27日(土)まで姫路城三の丸広場内 特設劇場にて、姫路城世界遺産登録30周年記念として「平成中村座姫路城公演」が開催される。一八世 中村勘三郎(当時、勘九郎)が2000年に東京・浅草に実現させた「平成中村座」は、江戸時代の雰囲気を持ち合わせながら、舞台と客席が密接な一体感を持ち、その魅力は日本国内にとどまることなく、ニューヨーク、ベルリンなど、海外の観客までを魅了してきた。そして勘三郎が思いを込めた「平成中村座」は現在、中村勘九郎、中村七之助へと脈々と受け継がれている。
そんな「平成中村座」の関西での上演は8年ぶりとなり、今年は世界遺産登録30周年を記念して、姫路城での公演が実現!!公演開催にあたり、中村勘九郎、中村七之助が囲み会見に出席。亡き父に対する想いや、坂東玉三郎が演出の「天守物語」をはじめとする中村座初の演目についてなど、公演に向けての熱い想いを語ってもらった。

兄弟の夢が実現!姫路城を借景に、ご当地の演目を堪能!

 ——姫路城で上演することに対する思いをお願いします。
 
勘九郎
2002年に扇町公園(大阪市北区)で上演された時は、芝生の上に立てていたので、まさに“芝居″、江戸の芝居小屋にタイムトリップしたような感じでした。2010年は大阪城を借景に、大阪城・西の丸庭園で上演させていただき、思い出深い公演となりました。そして2023年は姫路城。美しいお城を借景に上演できること、とても楽しみで光栄ですね。今回もご当地ならではの演目を上演します。これもご縁で一期一会、この時でしかみられない感動を味わっていただきたいです。
七之助
実は大阪での中村座の公演も予定していましたが、コロナ禍によって中止に。昨年ようやく10月、11月と浅草にて中村座の公演が実現し、今年5月は初めての場所 姫路で上演できる。さらに、昼夜供にに、姫路にゆかりのある演目を上演します。中でも「天守物語」は姫路城の天守の話。さらに坂東玉三郎さんに演出をしていただけるという盆と正月がいっぺんにきたような感覚で、こんなに嬉しいことはないですよね。

城の歴史と歌舞伎の歴史が交錯し、現代に相応しい歌舞伎に。

演目は第一部(正午開演)に「播州皿屋敷」「鰯賣戀曳網(いわしうり こいのひきあみ)」、第二部(午後4時開演)に、「棒しばり」「天守物語」が、全て中村座では初のお披露目となる。
——「播州皿屋敷」についての特徴を教えてください。
勘九郎
一般的には「番長皿屋敷」の方が有名かもしれませんが、「播州皿屋敷」の方が元だと言われています。姫路城のお菊さんの井戸は、実際に見るととても大きいですね。「播州皿屋敷」は納涼で、おじの(中村)芝翫と(中村)扇雀さんがされていましたが、今回はその息子たちの中村橋之助、中村虎之介が演じます。彼らもとても気合いが入っていますし、ご当地でご当地ものができること、不思議なパワーを頂けるので、良い作品を皆さまにお届けできるのではないでしょうか。

「天守物語」は、姫路城での公演がなければ演じることはなかったアンタッチャブルなもの

——泉鏡花 作、「天守物語」は坂東玉三郎さんが演出とのこと。
七之助
泉鏡花さんの作品の中でも最高傑作と言われており、本人もこの作品を舞台化するなら自費で出すと言っていたほど、泉鏡花さんも思い入れのある作品です。舞台化されたのは泉さんが亡くなってから。いま存命で、歌舞伎界で演じたことのある方は、坂東玉三郎さんだけ。演じることができるのは坂東玉三郎さんしかいないと僕の父も言っていたほど、この作品は僕達の中でもアンタッチャブルなものなんです。
勘九郎
公演するにあたって実際に姫路城に行った時に、「播州皿屋敷」と「天守物語」は決定だと思い、七之助に「天守物語」を絶対にやれ!と言いました。ここでやらないと、今後も上演されることはないし、玉三郎さんが教えなかったら後世に残らないと。とにかく七之助にやるように説得しました。
七之助
そして、いろいろ熟考した結果やろうと。なにせ、観終わった後、後ろを振り返ると本物がある。これは空前絶後であり、そんな凄いパワーを借りられたら、間違いなく素晴らしいものになる。そして(坂東玉三郎さんに)断られると思いながらお願いをしたんですが…。
——坂東玉三郎さんは、なんと?
七之助
快諾してくださいました。そして決まったら、僕達より動いてくださって。富姫のかけや縫い、刺繍などを新しく綺麗にして、今回のために作ってくださいました。ご本人も公演中でお忙しい中、音楽を選んでくださったり、付きっきりでお稽古をしてくださっています。そんな熱い思いも受け取っているので、これは気を引き締めてやらないと!という気持ちでいっぱいです。
勘九郎
中村座の演出の特徴の一つとして、後ろを開けると借景という演出があります。もしかして「天守物語」の上演中に後ろが開いたら…?これは今まで誰もやっていないことですし、夢の空間ですよね。
——三島由紀夫 作、二世 藤間勘祖 演出・振付「鰯賣戀曳網(いわしうり こいのひきあみ)」と岡村柿紅 作「棒しばり」を選ばれた背景は?
勘九郎
三島先生が私の祖父・十七代目 中村勘三郎と、六代目中村歌右衛門のおじ様に当て書きした作品で、父や玉三郎のおじ様がコンビで演じていたものを私たちが受け継いだ作品、中村座にとっても家の芸と言っても過言ではない。実は中村座で「鰯賣戀曳網」は初。今回は姫路バージョンで2人で練り直しています。「棒しばり」も中村座では初ですし、今回4つの演目全てが中村座では初の演目となりますね。

亡き父への想い

——2012年に父・中村勘三郎さんが旅立たれて10年以上が経ちましたが、この10年を振り返っていかがですか?
勘九郎
今生きていてもまだ67歳。普通に居てくれるものだと思っていたので、皆さまの想像以上に喪失感が大きかったです。父という後ろ盾がいないことによって、いろんなことがありましたが、めげずに突き進めたのは、父を愛してくださった周りの人達の協力があってこそ。私たち兄弟だけでは到底できなかった。そんな皆さまへの恩返しとして、これからも良いものを創り、発信し続けないと、と思っています。今は家に居ながらなんでも観れる時代。そんな中でも高いチケット代を払って、足を運んでもらい、生の演劇を観てもらうには、相当な覚悟を持って臨まないといけないと思っています。そう思わせてくれるような、力をもらえた10年間だったように思いますね。そして父は古典をこよなく愛していましたので、平成中村座という芝居小屋で古典を演じられることに、大変喜んでいました。だから僕達は、父から受け継いだ中村座を必ず一生かけて守るし、発展させていかなければならない。そんな宝物と宿題をもらったという気持ちです。
七之助
あっという間の10年でした。父という存在はもちろんのこと、年々、中村勘三郎という役者への喪失感の方が大きくなっていきます。“この芝居、役は父で観たかったな”とか。とはいえ、この10年間は父に恥じないように突っ走ってきました。だからこそ、父にも自信を持って顔向けできます。そして、こうして中村座を遺してくれた父に感謝していますね。
今回も劇場の前には、平成中村座史上最大となる“三十軒長屋″も出現!ご当地・姫路の特産品や、平成中村座の歴代公演地の浅草、小倉からも出店が予定されている。そしてお練りも予定しているとのこと。中村座初お目見えとのことで地元 姫路も大いに盛り上がることだろう。チケットは発売から二日間で完売したとのことだが、立ち見席も発売予定で、観劇以外でも平成中村座の雰囲気を楽しめることができる。
勘九郎
芝居見物は、一日がエンターテイメントなんです。特に中村座の中は、江戸時代にタイムスリップできるような場所。城内での飲食もお酒も大丈夫だと思います。また、舞台との一体感もより一層楽しんで頂けるのではないでしょうか。生で皆さまと触れ合える時間を楽しみにしています。

公演概要

2023年5月3日(水・祝)~27日(土)

第一部 12時~
第二部 16時~
※開場は各開演の45分前を予定
【休演】10日(水)、18日(木)、23日(火)

第二部劇場:平成中村座

一般チケット:3月4日(土)チケット発売

姫路城世界遺産登録30周年記念 平成中村座姫路城公演(関西テレビ放送開局65周年記念事業) | イベント | 関西テレビ放送 カンテレ (ktv.jp)

取材・文・撮影/ごとうまき