【編集部オススメおうちで鑑賞映画】戦争映画のイメージを覆すヒューマンドラマ『ハクソー・リッジ』

アイキャッチ画像=キノフィルムズよりhttps://kinofilms.jp/movies/hacksawridge/
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良心的兵役拒否者(宗教上などの信念によって兵役を拒否した者)としてアメリカ史上初の名誉勲章を、トルーマン大統領から授けられた人物、その名もデズモンド・トズ。彼は第二次世界大戦の沖縄戦、沖縄の難攻不落の断崖ハクソー・リッジで銃や手りゅう弾、ナイフひとつ持たずに、たったひとりで75人もの命を救った。『沈黙 サイレンス』『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドが主演。『パッション』『ブレイブハート』などを手掛けたメル・ギブソンが監督、第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞を受賞している。Netflixをはじめ多くの動画配信サービスで配信中。

「殺すのではなく救う」臆病者と呼ばれた英雄の感動実話

人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンド・トズ(アンドリュー・ガーフィールド)は、軍隊でもその意志を貫こうと頑なに武器を持つことを拒んだ。そこで、デズモンドは戦闘兵ではなく衛生兵として壮絶な戦場に行くことに。上官や同僚たちから疎まれ、さらに軍法会議までにもかけられ「臆病者」と嘲笑されながらも、武器を持たない、殺さないという信念を貫き、彼はたった一人で、被弾し傷を負った兵士たちにモルヒネを投与し担架に乗せて高地と崖を往復、自らの命をかけて救い続けた。救った75人の中には日本人が2人いたらしい。

(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016 映画.comより

戦争、信仰といったテーマと共に彼の半生が丁寧に描かれている。 

デズモンドが武器を持たない、殺さないことに拘り続けた理由とは何か。それは子供のころの家庭環境や経験が影響している。第一次世界大戦で心に傷を負い酒におぼれ、母親とのけんかが絶えなかった父親を持ち、さらに幼いころに誤って兄を煉瓦で殴ってしまった経験から、「汝、殺すことなかれ」という神の教えが深く彼の胸に刻まれた。戦場のシーンは観ているこっちが「いつ敵に殺されるか」という緊迫感と臨場感たっぷりだ。壮絶で過酷でリアルな戦場の描写。思わず目を塞ぎたくなる戦場のグロテスクなシーンとは対照的にデズモンドの妻となるドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)との恋、デズモンドを信じ続け彼の帰還を願うドロシーの愛、戦争映画なのになぜか泣けるのは、75人もの命を救った彼の偉業の他にこういった描写があるからだろう。

(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016 映画.comより

強烈な信仰心と信念が人を動かし奇跡までも生む

人は誰もが何かしら信念をもって生きているのではないだろうか。だとしたらデズモンドのような立場にたった場合、彼のように信念を貫き通せる自信はあるだろうか。正直私は本作の中盤で、壮絶ないじめや嫌がらせを受けようとも一ミリたりとも信念を曲げないデズモンドに「頑固者にもほどがある」と狂気を通り越し滑稽に感じていた。だけどある一線を超えると猛烈に彼を応援していた。強烈な信念が人を動かし、さらに奇跡を生むんじゃないかと。

(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016 映画.comより

作品名:ハクソ―・リッジ
監督: メル・ギブソン
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワ―シントン、ルーク・ブレイシー
原題: Hacksaw Ridge 
配給:キノフィルムズ
製作 2016年 アメリカ・オーストラリア合作

KANSAIPRESS編集部から

戦争ものの映画はグロテスクなシーンも多く戦争の怖さをまじまじと見せつけられる。ただただ悲しいから苦手なんだけど、この映画は評判が良かったので劇場で観賞。戦争映画なのにヒューマン・ドラマでもあって、泣ける。劇場ほどの臨場感はなくとも、ある程度の臨場感と、何かしら観る人それぞれの琴線に触れる作品ではないかと。まだ観ていない人はこの機会に観てほしいです。

文/後藤麻希