【珠玉の王道ラブストーリー】『花束みたいな恋をした』から改めて考える”恋愛賞味期限”

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会
エンタメ

東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦と八谷絹。二人は好きな音楽や映画、本棚の中などほとんど同じだったことから、お互い恋に落ちる。大学卒業後の二人はフリーターをしながら同棲をスタートさせるが、学生から社会人になるにつれ、変わりゆく環境や人間模様、恋愛感情の変化。2015年から2020年までの5年間の社会背景と時代を彩ったカルチャーとともに綴られた偶然始まった恋愛模様をリアリティかつ、フレッシュに描かれた作品である。

オリジナル脚本を手がけるのは、「東京ラブストーリー」「最高の離婚」「カルテット」など数々のヒットドラマを手がけてきた坂元裕二氏。「いま、会いにゆきます」「罪の声」「映画 ビリギャル」などの土井裕泰監督がメガホンをとり、菅田将暉、有村架純、オダギリジョー、清原果耶、戸田恵子、小林薫、押井守、瀧内公美などの豪華キャスト達が今を生きる若者たちに珠玉のラブストーリーを届ける。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

 

 

5年間の時代を彩ったカルチャーとともに

本作は2015年から2020年の時代背景、社会を彩ったカルチャーの分野における名前が次々に出てくると共に、そこから時の流れを自然に感じられる構成となっている。

例えば渋谷パルコの閉店、スマスマの終了、SMAPの解散、ミイラ展、パズドラ、ニンテンドーSwitchのゼルダ、クマムシ、ワンオク、キノコ帝国、前田裕二の『人生の勝算』、Air Podsじゃないイヤホン・・・。

「カラオケっぽく見えないカラオケ」「カラオケっぽく見えるカラオケ」・・・たった一年であの“蜜”が今は遠い昔のように感じたのは私だけだろうか。

本作から考える「恋愛生存率」と「男女の脳の構造によるすれ違い」

劇中でオダギリジョー演じる加持が言うように『恋とはナマモノだから、賞味期限がある』のだ。

『ずっと一緒にいようね』

そんなものはないと大人になるにつれ分かっていく。人の気持ちなんて常に変わっていくものである。恋の賞味期限はよくもって三年と言われるが、いや、脳そして快楽ホルモンといった観点から見れば半年という説もあり、いわば脳の快楽ホルモンの支配によって「恋愛」という錯覚を起こしているということが科学的にも証明されている。

男女が出会い、恋に落ちてセックスをして子どもができる。妊娠から出産、そして子が乳離れする期間が3〜4年、出産してから子が乳離れするまでの期間は母子だけでは生存していくことは容易ではない。つまりその三年は両親が二人で協力して子育てするように組み込まれているらしい。恋愛感情はよく持って三年と言われる理由はここからきているのである。どれだけ人類が進化しようと太鼓の昔から受け継がれてきたDNAはそう簡単には書き換えられないのである。

劇中の男と女の脳の構造のすれ違いによって起こるすれ違いや喧嘩も、リアリティあり、緊張が走る。そして男の愛情は責任であり、女は共感やダイレクトな愛情を求めるという部分もうまく描かれていて、他人の恋愛事情をしっかりと見ることにより、「恋愛」について客観かつ冷静に見つめることができた。とはいえ、頭ではわかっていてもやはり理性では抑えきれない、恋に落ちてしまうというのが人間なんだな。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

花束みたいな恋の意味を考えた

花束は特別なもの、そこにあるだけで日常が彩り華やぐが、その花束は遅かれ早かれ枯れてしまう。だけど枯れた花はドライフラワーにして楽しむこともできる。例えるのならそれが“結婚”ではないのかなと。(経験者だからこそ言える、、、。異論は認めるけど、きっとそれは造花だ。)

でもでも、やはりドライフラワーより、満開の生花、瑞々しいフレッシュな花束の方が良いもので、だから不倫って古今東西なくならないんです。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

誰の中にもある大切な恋愛経験が蘇る

わかりみが深いとはこのこと。歳を重ねれば重ねるほど、現実世界を嫌でも生きることになり、少しずつ感性も鈍くなり、気づけば若かりし頃のフレッシュな恋愛も難しくなる。

もちろん、大人の恋はそれはそれで素晴らしいのだけど。

かくいう私も本作が進むにつれ、あー、わかるわかる、こんなことあったよね、とついつい昔の恋を思い出したり。仮にいま、昔の恋人と再会しても戻ることは絶対にないのだけれど、私の青春時代の最高にキラキラした尊い思い出を残してくれた彼は今も特別な存在としてずっと心の奥にいる。

そんな誰にでもある大切な大切や恋愛経験を思い出させてくれる『花束みたいな恋をした』に花束を贈りたい。

爽やかな”エロ”とほんの少しの”エモさ”によって観終わった後に何とも言えない余韻を残してくれる本作からは「恋せよ若者!夢みよ若者!」

私にはそんなメッセージ性が感じられた。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

花束みたいな恋をした

監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
キャスト:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
製作:2021年製作/124分/G/日本
配給:東京テアトル、リトルモア

 

文/ごとうまき