【不朽の名作】4Kデジタル修復版としてあの感動が劇場で蘇る『海の上のピアニスト』

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船上で生まれ育ち一度も船を降りることがなかったピアニストの生涯を描いたドラマで「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ。日本では1999年に劇場初公開され、約20年を経た2020年、トルナトーレ監督の監修による4Kデジタル修復版(121分)同時に99年公開時には実現しなかった、170分の「イタリア完全版」も8月21日から初公開された。

あらすじ

大西洋をめぐる豪華客船の中のピアノの上に置き去りにされていた、生後間もない赤ん坊。世紀の変わり目である1900年にちなみ、赤ん坊はナインティーン・ハンドレッド(=1900)と名付けられた。船がゆりかごとして、そこですくすく育ったナインティーン・ハンドレッド、8歳の時に育ての父は事故により亡くなりそこから彼は孤独と向き合いながら育っていく。彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と作り出し、ジャズ界の大物も負かしてしまうほどの才能に溢れた天才だった。ある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。そして彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への思いから、人生で初めて船を下りることを決心するが・・・。

それぞれの人生哲学と深い友愛の物語

もう一人の主役のトランペット奏者のコーン(マックス) 二人の強い絆に感動する

「何かいい物語があってそれを語る相手がいる限り人生は捨てたもんじゃない」

あくまでも私が観て感じた感想になってしまいますが、海の上で生まれた1990の徹底した信念と生きざまがあまりにも潔くて、そして切なかった。『ピアノの鍵盤は88と決まっていて無限ではない。弾く人間が無限であって人間の奏でる音楽が無限、それがいい。無限の鍵盤で人間が弾ける音楽はない』このセリフがとても印象的です。陸に出て、広い世界に出てみるのも一つの生き方で幸せにつながるのかもしれない。だけど1990のように変わりたくない人、一つの狭い世界で生き抜くのも一つの幸せであって、それこそ人それぞれの価値観、人生哲学があるのだと。コーンと呼ばれた1990の友人マックスは1990の思いに寄り添った。私がマックスの立場ならどうしていただろうかと考える。

そしてなんと言ってもピアノの演奏が素晴らしい。黒人ジャズピアニストとの対決のシーンには鳥肌が立った。音楽で恋愛、怒り、孤独、絶望、喜び・・表現できることが素晴らしいですね。1990演じたティム・ロスの美しい瞳、孤独な表情やピアノの弾きざまには目が離せない。と同時にもう一人の主役でもあるマックス演じるプルイット・テイラー・ビンスも最高だった。二人の友情の物語でもあります。

巨匠エンニオ・モリコーネの音楽

イタリアを代表する世界的な映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ。彼の残した音楽は私たちに深い感動と喜び、美しさを残して7月6日にこの世を去った。彼は12歳からローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミーで作曲を学び、トランペット奏者としてもジャズバンドで演奏。アカデミー卒業後はTVやラジオ番組で編曲家として働き、イタリアンポップスの編曲も手がけた。1960年代前半から映画音楽の作曲を始め、セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」(64)が世界的に大ヒットし、マカロニ・ウエスタンの作曲家として欠かせない存在になる。あまりにも有名な「ニュー・シネマ・パラダイス」の曲、今作の「愛を奏でて」、日本でもNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」(03)で音楽を担当し、2019年には映画音楽分野で日本・イタリアの交流促進に寄与したとして旭日小綬章を授与されている。

「愛を奏でて」は言葉にならないほどに美しいメロディとハーモニーがこの作品をより際立たせている。いや「愛を奏でて」があってこそのこの作品でしょう。

上映館・作品情報

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監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

音楽:エンニオ・モリコーネ

原作:アレッサンドロ・バリッコ

キャスト:ティム・ロス、 プルイット・テイラー・ビンス

原題:The Legend of 1900

製作:1999年製作/121分/G/イタリア・アメリカ合作(日本初公開:1999年12月18日)

配給:シンカ

公式サイト:http://synca.jp/uminoue/

KANSAIPRESS編集部から

まき
この作品が日本で公開されたのが1999年、当時私は中学一年、リアルタイムではこの作品を観てはいないのですが、中学二年生の時に当時習っていたピアノの先生に「これを弾きなさい」と渡された楽譜が『愛を奏でて』当時の私は何も知らずにただ言われるがままにその曲を弾いたのですが、この美しいメロディがすぐに大好きになりました。今思えばこの作品観てないし、愛が何かさえも分からない中二の子どもが弾いてもね・・って感じですが。なので私にとってこの作品は思い入れがあります。

こんな大作を生み出すことができる人の才能が羨ましいを通り越して自分はなんてちっぽけな人間なんだと少し自己嫌悪に陥ったり。改めてエンニオ・モリコーネの偉大さを痛感しました。音楽が好きな人も是非みてほしい作品です。

文/ごとうまき