「歌に導かれ、皆さまと結ばれた10年の『縁』——。林部智史、集大成のフェスティバルホールへ」

インタビュー

2026年、デビュー10周年という大きな節目を迎える「泣き歌の貴公子」こと、林部智史さん。 3月13日(金)に大阪・フェスティバルホールで開催される『10th Anniversary Concert in 大阪』は、関西フィルハーモニー管弦楽団との共演、さらにゲストに南こうせつさんを迎えるという、記念すべき年にふさわしい豪華なステージです。 今回は、ニューアルバム『縁(えにし)』に込めた想いから、デビュー前の苦労時代、そして10周年を見据えた現在の心境まで、じっくりとお話を伺いました。 

先人たちと結ばれた「縁(えにし)」

――2025年9月にリリースされたニューアルバム『縁(えにし)』。加藤登紀子さん、南こうせつさん、小椋佳さんといった、音楽界のレジェンドたちが林部さんのために楽曲を書き下ろされています。これは一昨年のカバーアルバム『カタリベ ~愛のエクラン~』がきっかけだったとか。 

林部
はい。カバーさせていただいたことが縁となり、今回、畏れ多くも新曲を書いていただくことになりました。レコーディングは、まさに「戦い」のような緊張感がありましたね。

――特に印象に残っているエピソードはありますか? 

林部
阿木燿子さんと宇崎竜童さんご夫妻がスタジオに来てくださった時は、お二人の圧倒的な存在感に身が引き締まる思いでした。その場で「言葉を伝えるには、こっちのメロディの方がいいんじゃない?」と阿木さんが宇崎さんに相談され、みるみるうちに曲が進化していく。そのプロの現場に食らいついていくのは必死でしたが、最高の経験でした。

――今回のコンサートにゲスト出演される南こうせつさんとの交流も、このアルバムがきっかけですか? 

林部
 こうせつさんとは、コロナ前にお会いしたのが最初だったと思います。当時は「ゆず胡椒」をいただいたり(笑)、気さくに接してくださる方だなという印象でした。昨年、僕が『夢一夜』をカバーさせていただき、その後、番組の企画で大分にあるこうせつさんのご実家を訪ねる機会があったんです。その番組内でじっくりお話して、初めて「曲を書いてください」とお願いすることができました。

 運命に導かれた、6年越しのフェスティバルホール

 ――2026年3月のフェスティバルホール公演。ここは6年前、4周年の際にも関西フィルハーモニー管弦楽団の皆さんと公演を行われた場所ですね。 

林部
そうなんです。もともとオーケストラとの共演は東京や地元の山形が中心だったのですが、「いつか大阪でも」という想いがずっとあって。それが4周年の時にようやく実現するはずだったのですが、コロナ禍で延期を余儀なくされました。1年後にようやく開催できた時は、まだお客様も、そしてステージ上の60名近い楽団員の皆さんも全員マスク姿。あの異様な、でも必死に音楽を届けようとした光景は、今でも鮮明に焼き付いています。

 ――オーケストラとのコラボレーションについて、林部さんはどのような魅力を感じていますか? 

林部
 僕はもともとディズニー音楽が大好きなんです。オーケストラの演奏は、聴く人を一瞬で「海の底」や「ライオンキングのような壮大な草原」へ連れて行ってくれる。空間そのものを変えてしまう力があるんです。

――60人以上の音が重なる厚み、そしてピアノだけの静寂。その対比も魅力ですね。 

林部
 まさにその「抜き差し」が醍醐味です。バンド編成とはまた違う、心まで揺さぶられるようなダイナミックな抑揚を、僕の歌と一緒に楽しんでいただければと思います。セットリストも、最新アルバム『縁』の楽曲を中心に、これまでの10年間の軌跡をたどる集大成のような内容を構想しています。

苦労の時代が教えてくれた「言い訳をしない」姿勢

 ――林部さんはデビュー前、看護学校に通われたり、新聞配達をしながらボーカル学校に通われたりと、多様な経験をされています。当時の経験は今に活きていますか? 

林部
 新聞配達をしていた頃は朝2時起きでした。今はそこまで早くはありませんが(笑)、早朝の番組で歌う時など、「自分は2時に起きて仕事ができる人間なんだ」という自負があります。

 ――ボーカル学校を首席で卒業されたというのも、凄まじい努力の賜物だと思います。 

林部
当時はジレンマもありました。「プロになるために来ているのに、なぜ自分は今、台風の中で新聞を配っているんだろう」って。でも、時間がないからこそ、歌に対する気持ちがより強くなった。首席で卒業できたことで、「時間が足りないことは、言い訳にはならない」と確信できたんです。それは今の仕事の根底にも流れています。

10周年、ファンという「縁」に感謝を込めて

 ――林部さんのファンは、熱心に何度も会場へ足を運ぶ方が多い印象です。 

林部
 本当にありがたいことです。僕はテレビに頻繁に出るタイプではありません。そんな僕を見つけて、わざわざコンサートまで来てくださる。これこそが不思議で尊い“縁”だと思っています。

――リピーターの方が多いからこそ、セットリストへのこだわりも強いのでしょうか? 

林部
 そうですね。初めての方に楽しんでいただくのはもちろんですが、何度も来てくださる方のために、常に新しい発見や驚きを届けたい。そのバランスにはいつも悩みますが、それが僕とファンの皆さんを繋ぐ大切なコミュニケーションだと思っています。

 ――最後に、10周年という大きな節目を迎える2026年、どのような年にしたいですか。

林部
「集大成」の一年にしたいです。これまで10年間、ジャンルの枠を超えて少しずつ新しいことに挑戦してきました。何か奇をてらったことをするのではなく、今まで積み上げてきたものを、より大きく、より深く表現したい。一歩ずつ歩んできた道のりの先に、皆さんと笑顔でお会いできる日が来ることを楽しみにしています。

公演情報

 林部智史 10th Anniversary Concert in 大阪 with 関西フィルハーモニー管弦楽団

  • 日時: 2026年3月13日(金) 17:00開演
  • 会場: フェスティバルホール
  • 出演: 林部智史 • 管弦楽: 関西フィルハーモニー管弦楽団 
  • 特別ゲスト: 南こうせつ

 

インタビュー・文・撮影:ごとうまき