徳永ゆうき「明日への翼」から始まる第2章。「気付けば“ポップスと年配の架け橋”になっていた

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歌手の徳永ゆうきさんが3月12日に5年ぶりのシングル「明日への翼」をリリースした。30歳の節目を迎えた彼が、壮大なスケールで歌い上げるこの楽曲は、演歌の枠を超えた希望の応援歌だ。またカップリング曲「空を見上げて」では、爽やかなメロディーで子どもから大人まで幅広い世代に響くメッセージを届ける。デビュー12年目を迎え、「演歌と若者の架け橋」を掲げてきた徳永さんが、ポップスや舞台、鉄道愛まで多彩な経験を糧に描く“第2章”とは? 新曲に込めた思いや、ファンとの絆を語ったインタビューをお届けする。

── 5年ぶりの新曲「明日への翼」は壮大な楽曲ですね。演歌でありながら、従来の演歌とは異なる雰囲気を感じます。この曲に込めた思いを教えてください。

徳永

ありがとうございます。「明日への翼」は、今までの僕のオリジナル曲にはない、スケールの大きな歌の世界が特徴です。30歳という節目を迎え、僕の原点である演歌・歌謡曲に立ち返りたいという思いがありました。この曲は、コンサートのフィナーレで歌うような、力強く歌い上げる楽曲です。歌詞には希望や前進する気持ちがストレートに込められていて、聴く人に勇気を与えられる曲になったと思います。

── 前シングル「車輪の夢」から5年。徳永さんにとってこの5年間はどのような時間でしたか?

徳永

この5年間は本当にいろんな経験をさせていただきました。2018年に米津玄師さんの「Lemon」をカバーしたことをきっかけに、ポップスや他のジャンルにも挑戦する機会が増えました。お芝居にも沢山挑戦したり、演歌以外の活動も広げてきました。そうした経験が、今回の新曲にも活きていると感じます。30歳になり、気持ち的にも少し大人になった部分をこの曲に込められたかなと思います。

── レコーディングで印象的なエピソードはありますか?

徳永

久々のレコーディングだったので、最初は少し緊張して力が入りすぎていました(笑)。作曲の岡千秋先生やディレクターさんから「体全体で大きく歌うように」というアドバイスをいただき、そこで緊張がほぐれました。特に「明日への翼」では、こぶしの使い方を意識しました。最初はこぶしが多くなり過ぎましたが、前半は語るように抑えて、サビで一気に感情を爆発させるような歌い方を試みました。ポップスや他のジャンルを歌ってきた経験が、こぶしのコントロールにも役立ったと思います。

── カップリング曲「空を見上げて」についても教えてください。

徳永

「空を見上げて」も「明日への翼」と同じく応援歌的な楽曲ですが、こちらはもっと爽やかで、青空の下で気持ちよく歌える雰囲気です。歌詞は子どもたちにも親しみやすく、合唱曲のように歌ってもらえたら嬉しいですね。レコーディングはスムーズで、1~2回歌っただけで「OK!」となりました。僕の声の質とも相性が良く、聴き手にすっと届く曲になったと思います。

── 今回の新曲は「徳永ゆうきの第2章」と表現されていますが、具体的にどんな第2章をイメージしていますか?

徳永

30歳という節目を迎え、原点である演歌・歌謡曲に戻りつつ、新しい挑戦を続けるのが第2章です。デビューからの第1章を例えるなら、にぎやかな歌人生でした。BEGINの比嘉さんや宮沢和史さん、つんく♂さん、youth caseさんなど、ジャンルを超えた多くの作家さんに曲を書いていただき、演歌からポップスまで幅広い楽曲に挑戦させてもらいました。第2章では、その経験を活かしつつ、演歌の魅力をさらに多くの人に届けたいです。

── ミュージックビデオ(MV)も壮大なイメージですね。撮影のエピソードや舞踊家で歌手の花園直道さんとのコラボレーションについても教えてください。

徳永

徳永、ついに地球を超えて宇宙に行ってしまったって思いますよね(笑)。MVは歌に合わせて壮大なスケールを表現し作っていただきました。振りを担当し、指導してくれた直道さんとはデビュー当時から交流があり、「一緒に何かやりたい」と話していたので、今回実現できて嬉しかったです。6月11日〜13日には渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールで『徳永ゆうき×花園直道「金太郎VS桃太郎」THE歌踊笑!』でもご一緒するので、楽しみです。

── 演歌以外の活動で得たものは、今回の新曲にどう反映されていますか?

徳永

舞台やドラマでの経験は、表現力や感情の伝え方に影響を与えています。またポップスを歌う中で、こぶしの使い方や歌詞の届け方を意識するようになりました。『「演歌の乱」~ミリオンヒットJポップで紅白歌合戦SP~』(TBS系)で「Lemon」をカバーした時は、こぶしを抑えるよう言われたんですが、本番では自然と演歌らしい節回しが入ってしまって(笑)。当時、収録終わってから放送されるまでめちゃくちゃ不安だったんですよ。叩かれるんじゃないかって……。でもそれが逆に好評で、ポップスとこぶしの相性の良さに気づきました。水森英夫先生にも「こぶしは調味料。入れすぎず、ポイントで使うと歌詞が心に響く」と教わり、今回のレコーディングでもそのバランスを大切にしました。

── 挫折した時や落ち込んだ時に励まされた言葉や楽曲はありますか?

徳永

僕は「なんとかなるやろ」という精神で、寝たら大抵のことは忘れるタイプです(笑)。落ち込んでも過去を引きずらず、失敗から学んで前を向くようにしています。そのマインドが「明日への翼」や「空を見上げて」にも通じているのかもしれません。

── ファンの皆さんとの交流で印象に残っていることは?

徳永

最近は、子どもから年配の方まで幅広い世代のファンの方たちに支えられています。嬉しいですね。特に『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)や鉄道番組を通じて、若い層や子どもたちに知ってもらう機会が増えました。キャンペーンで高校生がCDを買ってくれたり、子どもたちが“とくちゃん応援してる!”と、手紙をくれるのが嬉しいです。達筆な年配の方からの手紙も、かわいらしい子どもの手紙も、全部宝物です。

── 徳永さんは鉄道好きとしても有名ですが、インスタグラムでも鉄道アカウントに3,500枚以上の写真を投稿されていますね。

徳永

鉄道は僕のライフワークですね。以前はオフの度に鉄道を撮りに出掛けましたが、いまはゆっくり過ごして“鉄分”を補給し、地方に行った時に隙間時間に撮っています。鉄道番組やYouTubeを通して子どもたちに見てもらうことで、親子でライブに来てくださることも増えました。2月20日の誕生日には、ドクターイエローのラストランを見に行き、YouTubeにもアップしました。音楽と鉄道、両方でファンの皆さんと繋がれるのが幸せです。

── 30歳を迎えた今、30代の目標や目指す男性像は?

徳永

人生の階段をまた一つ登った感覚です。今回の新曲をきっかけに、演歌の魅力を老若男女に届けたいです。将来、「演歌歌手といえば徳永ゆうき」と誰もが答えるような存在を目指して頑張ります!デビュー時から掲げる「演歌と若者の架け橋」になる目標は変わりませんが、最近では年配のファンの方から「とくちゃんは私たちにとって、“ポップスと年配の架け橋”にもなってるよ」と言われて、知らないところでもう一個架け橋作っていたんだと、新たな使命感も感じています。演歌・歌謡曲を原点に、これからもいろんなジャンルの楽曲に挑戦しながら僕の歌の世界を届けていきたいです。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき