石井ふく子白寿記念公演『かたき同志』、藤山直美と高島礼子が初競演!大阪・新歌舞伎座で12年ぶりの上演

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2025年8月30日(土)から9月21日(日)まで、大阪・新歌舞伎座にて、石井ふく子白寿記念公演『かたき同志』が上演される。本作は、橋田壽賀子・作と石井ふく子演出によるゴールデンコンビが手掛ける傑作喜劇で、1978年の初演以来幾度もの再演を重ねてきた。2013年藤山直美と三田佳子によ好評を博した本作が、新たなキャストを迎え、12年ぶりに帰ってくる。記者会見には演出の石井ふく子、藤山直美、高島礼子、熊谷真実、金子昇、木戸邑弥、込山榛香が登壇し、作品への意気込みを語った。

 作品概要と見どころ 

『かたき同志』は、江戸下町の飲み屋の女将・かめ(藤山直美)と、呉服問屋の女主人・お鶴(高島礼子)という、育ちも気質も異なる二人の母親が、息子と娘の結婚を巡って繰り広げるドタバタ劇。橋田壽賀子の脚本らしい、ユーモアと親子の情愛が織り交ぜられた物語は、観る者の心に響く名セリフによって描かれる家族の絆が印象的だ。互いに「かたき」として火花を散らす二人が、やがて「同志」へと変わっていく姿は、観客に笑いと感動を届ける。

石井ふく子

この作品は、橋田さんとの長年の仕事の中でも特に心に残るもの。家族の心と心が通じ合う物語を作りたいという橋田さんの思いを大切にしています。現代では家族の絆が薄れがちですが、この芝居を見て『家族っていいな』と感じていただければ嬉しいです。キャストの皆さんのパワフルな演技に私も期待しています

 藤山直美と高島礼子、初共演の化学反応 

かめ役を演じる藤山直美は、2013年の公演でも同役を務め、そのコミカルかつ情感溢れる演技で観客を魅了した。今回は新たにお鶴役に高島礼子を迎え、初共演ながら息の合ったバトルが期待される。 

藤山直美(かめ役)
石井先生の白寿記念公演のお話をいただいた時、何が何でも参加したいと思いました。私の母も先生と同い年で、先生の現役バリバリの姿に励まされています。この作品は、息子を愛する母親の葛藤と成長を描いた温かい物語。苦労して育てた子が巣立つ喜びと寂しさ、親離れと子離れの過程が描かれています。橋田先生の長いセリフと体を張った演技で、1カ月間お客様に喜んでいただけるよう頑張ります

高島礼子(お鶴役)

12年前、藤山さんと三田佳子さんの『かたき同志』を明治座で観て、圧倒的なパワーに嫉妬しました。三田さんの役を私が引き継ぐなんて、今から緊張していますが、挑戦のつもりで臨みます。かめさんとお鶴さんがいがみ合いながら同志になる過程は、橋田先生と石井先生の関係に似ていると感じました。子育てを終えた世代が新たな一歩を踏み出し、仲間と共に生きる喜びを描いたこの作品は、観る人にパワーを与えてくれると思います

豪華脇役陣の意気込み 脇を固めるキャストも個性豊か。呉服問屋の女番頭・お伸役の熊谷真実は、石井作品への強い思い入れから自ら出演を直談判し、役を勝ち取った。


熊谷真実(お伸役)
藤山さんと高島さんを支えるムードメーカーとして、稽古場から盛り上げたい。以前の公演で沢田雅美さんが演じたこの役が印象的で、キラリと光る存在を目指します

金子昇は、旗本の三男坊・松下源之介役で、母親たちの喧嘩に火を注ぎつつ仲裁する重要な役割を担う。


金子昇(松下源之介役)

石井先生の作品には9年ぶりの参加で、藤山さん、高島さんとの共演は感慨深い。この役は喧嘩を煽りつつもまとめ上げる面白い役どころ。先生の演出を一挙手一投足味わいながら演じたい

かめの息子・清太郎役の木戸邑弥と、お鶴の娘・お袖役の込山榛香は、若手ならではのフレッシュな視点で作品に挑む。


木戸邑弥(清太郎役)

藤山さんのパワフルさに圧倒されていますが、負けないよう家族の絆を表現したい。自分の母親の気持ちを思い出し、リアルな感情を込めて演じます
込山榛香(お袖役)

高島さんは私の憧れのお母さん像。反抗しながらも母を大切に思うお袖の気持ちに共感しました。母娘の絆や成長を描くこの作品で、大先輩方と一緒に輝きたい

石井ふく子の白寿への思い 

公演期間中となる9月1日に99歳の誕生日を迎える石井ふく子は、杖をつきながらも「体はピンピン」と意気軒昂。家族の大切さを強調し、本作への思いを語った。


石井ふく子
石井ふく子:
「私は一人っ子で、家族の温かさに支えられてきました。現代は信じられない出来事が多く、家族の絆が薄れている。だからこそ、この芝居で心のドラマを届けたい。キャストの皆さんのエネルギーに期待しています

 作品の魅力とメッセージ

記者会見では、橋田壽賀子の脚本の魅力や本作の現代的意義について語られた。藤山は「親子の愛と葛藤を通じて、親離れと子離れの大切さを描く温かい物語」と語り、高島は「いがみ合っていた二人の同士が同志になる過程が、人生の新たな一歩を踏み出す励みになる」と強調。最後に、藤山と高島が観客に向けてメッセージを送った。

藤山直美(かめ役)
世の中が大変な今、劇場に来て本物の感動を味わってほしい。石井先生を先頭に、万博に負けないパワフルな舞台をお届けします

高島礼子(お鶴役)

わざわざ足を運んでくださる皆さんのために、体を張って楽しんでいただける舞台を、直美姉さんと一緒に全力で頑張ります

 白寿を迎える石井ふく子の集大成ともいえる本公演。藤山直美と高島礼子の化学反応、豪華キャストの熱演が織りなす『かたき同志』は、家族の絆と人生の喜びを再発見する舞台となるだろう。大阪・新歌舞伎座での上演を心から楽しみにしたい。

取材・文・撮影:ごとうまき