【インタビュー】KOBUDOー古武道ー デビュー15周年記念公演 古武道歳時記〜浪速春しぐれ〜 新歌舞伎座で3月12日公演

KOBUDOー古武道ー チェロの古川展生さん(左) ピアノの妹尾武さん(右)
EVENT
2007年に結成されたインストゥルメンタルユニットKOBUDOー古武道ーは、純邦楽【尺八:藤原道山】、クラシック【チェロ:古川展生】、ポップス【ピアノ:妹尾武】異なるジャンルで活躍のトップアーティストが集結したユニット。今年でデビュー15周年を迎え、3月12日(土)大阪・新歌舞伎座にて「KOBUDOー古武道ーデビュー15周年記念公演 古武道歳時記〜浪速春しぐれ〜」が開催される。そしてヴォーカルゲストには岩崎宏美を迎えての特別なステージが!感謝の気持ちを込めて、新たな感動と音の贈り物を届けてくれる。
KOBUDOー古武道ーは、大阪・新歌舞伎座でこれまでに2013年から毎年12月に「古武道忘年会〜師走の協奏曲(コンチェルト)〜」シリーズを7回開催してきた。今回は新歌舞伎座では2019年以来の春のステージとなり、岩崎宏美さんとのコラボは関西初となる。公演間近に迫った「古武道歳時記〜浪速春しぐれ〜」に向けて、ピアノの妹尾武さん、チェロの古川展生さんにインタビュー。4月6日に発売されるデビュー15周年記念アルバム「光」のことや、曲作り、メンバーそれぞれに対する思いなど、たくさん語ってもらいました

「新歌舞伎座」で演奏できることが特別!

ーー約2年ぶりとなる新歌舞伎座での公演にあたっての意気込み
妹尾さん
これまで新歌舞伎座で毎年続いている公演がなくなると、ポッカリ穴が空いたような気持ちにもなりました。でもこの期間、しっかりパワーチャージをしました。はしゃぎ過ぎずに楽しみたいです!
古川さん
同じ場所で継続的に何度も公演をするのは世田谷パブリックシアターと新歌舞伎座の二箇所だけなんです。自分たちの歴史を感じる場所であり、またこの会場に立てることに感謝、光栄です。それにスペシャルなゲスト、岩崎宏美さんに出演していただける。想像するだけで胸が弾みます。
ーー新歌舞伎座の魅力とは?
妹尾さん
「新歌舞伎座」っていう響きがもう特別ですよね。和の雰囲気を感じながら、ちょっとしたお祭り気分を味わえる場所、このような場所って日本のどこを探してもない。あぁ、大阪来たんだな、という気分になって心が躍ります。
普段クラシックをされている古川さんは、会場の響きなどによって音の出し方なども変えているが、新歌舞伎座ではPA(音響機器)を入れるので安心感があると話す。
古川さん
新歌舞伎座はコンサート形式をするにしても間口が広く、お客さまに囲まれているという感覚があって、とても弾きやすいんです。お客さまにとっても舞台などが見やすいと思います。

ゲストの岩崎宏美さんについて

本公演は二部構成となり、前半は皆さまに感謝の気持ちを込めて、KOBUDOー古武道ーのみの演奏をお届け、後半は岩崎さんと共に豪華な舞台が展開される。4月6日に発売されるデビュー15周年記念アルバム「光」に収録されている楽曲をはじめ、心揺さぶる音楽が奏でられる。ゲストの岩崎宏美さんといえば1975年「二重唱(デュエット)」でデビューして以来、唯一無二の歌唱力で「ロマンス」「思秋期」「聖母たちのララバイ」など数多くのヒット曲を出してきた国民的歌手。近年では映画「美女と野獣」日本語吹替版で「ポット夫人」の吹替をするなど幅広い活動を続けている。本公演での共演は2012年以来となり、大阪では初となるコラボレーションとなる。

ーー岩崎宏美さんの印象は?
初めて買った岩崎さんのシングル曲が「好きにならずにいられない」だという妹尾さんは、2012年の世田谷パブリックシアターで共演した時に、この曲をリクエスト。大阪でも「好きにならずにいられない」をリクエストするとのこと。
妹尾さん
僕にとっては姉御というか、小学校の頃からの‟テレビの向こう側”という、憧れの人なんです。国民的歌手と同じステージに立てるというだけでワクワクする。岩崎さんと一緒に舞台に立つことで、皆さんにもっと元気や希望を与えられたら・・・。こんなに嬉しいことはないですね。
古川さん
気さくで温かい方です。そして相変わらず見た目も気持ちもお若い、‟テレビの中で見ていた憧れの人”というのは僕も同じ、時を経ても変わらないというイメージとオーラをお待ちですよね。以前ラジオの仕事でお会いして改めて感じました。
と岩崎さんを称賛した。

デビュー15周年記念アルバム「光」について

尺八、チェロ、ピアノのみの編成でレコーディングされた初のフルアルバム!
4月6日(水)にはデビュー15周年記念アルバム「光」が発売。全曲録り下ろし、そして2021年世田谷パブリックシアターでのライブ音源を初収録した最高傑作となっている。
妹尾さん
これまではストリングスやゲストミュージシャン、打ち込みのシンセサイザーなどが入っていましたが、今回は初の3人のみのフルアルバム、限られた時間の中「せーの」で撮る曲が多く、緊張感と楽しさがありました。
アルバムタイトル「光」、様々な‟光”で構成されている
収録曲は12曲、古川さん作曲の新曲から始まり、ショパンやラフマニノフなどのクラシック、映画の名曲、唱歌、そして2021年世田谷パブリックシアターでの臨場感溢れるライブ音源が収録されている。一曲目の「エレジー」は、一昨年天国に旅立った古川さんのお母様を想って作られた追悼曲、また12曲目「地平を航る風に」は古川さんの息子さんが生まれた時に作られた曲。“昇天の光”から始まり、“降誕の光” で終わる構成となっている。
古川さん
息子が生まれたのが2011年東日本大震災の2ヶ月後だったんです。色んなものを背負って生まれてきてくれたという感謝と、犠牲者のための責任、そして逞しく元気に生きてほしいという願いを込めて、この曲を作りました。
そんな息子さんも4月から小学5年生、ピアノを習われているとのことで、数年後には親子で演奏する姿が見られるかもしれない。
妹尾さんがKOBUDOー古武道ーとして正式にデビューする前に3人で佐賀から鹿児島まで演奏旅行をした時に作られた初めてのオリジナル曲「Best Friend」は、今回はバックトラックは用いらず、3人だけの演奏でレコーディング。15年の時を経て深まった3人の友情、本公演でもその絆が感じられることだろう。
妹尾さんと言えばこれまでにも多くのアーティストに楽曲を提供、テレビCMやドラマ、映画など、数多くの楽曲を手掛けている。そんな妹尾さんの曲作りに対して心掛けていることや、創造性を高めるために行っていることについて訊ねた。
妹尾さん
今はコロナ禍で旅行に行けていませんが、旅先でインスピレーションを得ることが多いです。あとは映画を観たり、天体観測も好き。ぼーっとした時間を作り、想像を膨らませています。
アルバム「光」に収録されたKOBUDOー古武道ーの新曲「Dolphin on the moon」も夜空に浮かぶ幻想的な月と、妹尾さんの好きな映画「Le Grand Blue」のイメージを重ね合わせて作られたという。

KOBUDOー古武道ー結成から15年の時を経てーー。

ーー切磋琢磨しながら信頼構築してきた3人。互いの印象や関係は結成当時からどの様に変化しましたか?
妹尾さん
藤原くんからは邦楽の世界のルールや決まり事、日本の伝統的な楽器の歴史も学ぶことができました。そして古川くんは、僕の中に眠っていたクラシック愛を目覚めさせてくれた。僕は30代の頃は、ポップス街道まっしぐらでしたが、古川くんとの出会いによって、ピアノでクラシックを弾くことの楽しさを再認識できた。
結成15年経っての嬉しい進歩を感じているという。KOBUDOー古武道ーの3人はユニットを結成する数年前から、一緒にコンサートなどを開催、そんな機会が少しずつ増え、お客さまたちからの声もあって、ユニットを組んだという。
古川さん
最初は探り合う、いわゆる日本人的な遠慮の塊、言いたいことも言えなかった気がする。だけど時と共に殻を破って、意見を交わし合える仲になってきました。みんなお酒が好きなので、何かあれば一席設けて腹を割って話す機会を作る。そのお陰もあって、信頼関係が築き上げられているのかな。
妹尾さん
そう、まさに「Best Friend」なんですよ!
ーー藤原道山さんについて
古川さん
道山さんは、かっこよくて、スマート、憧れの人です。天に二物も三物も与えられたような人。道山さんは僕にとっては先輩にあたるので、まだ気遣いのような部分も少しはありますね。普段やっているジャンルも異なりますし、僕は管楽器のことは、分かっているようで分かっていないから、とても勉強になります。
妹尾さん
僕はそんな藤原くんを“女優”と表現しているんです。いつも姿勢が良くて、自分の信念を曲げない、竹のようにしなやかで、凛としている人だと。彼がいると良い意味で空気が変わるんです。
普段は互いに口には出さないものの、それぞれが敬愛できる部分があるからこそ、うまくいっていると妹尾さんは話す。
妹尾さん
たとえば、古川くんは普段オーケストラをしていますが、これってめちゃくちゃ大変。僕には計り知れない苦労が感じられるし、尊敬している。同じ音楽でも違う世界を覗き見る感覚が面白く、学びも大きいです。
古川さん
僕たちは普段はそれぞれの分野で活動していますが、妹尾さんと僕は同じ大学でクラシックを学び、藤原さんは東京藝術大学でアカデミックな西洋音楽の教育を受け、皆ベースは同じなんです。結成当初は新しいことをする事に対しての周りからの批判の声も少なからずあったと思います。それに対しての覚悟、外野の声に惑わされないようにと、強い気持ちを持って活動してきましたが、15年経って少しずつKOBUDOー古武道ーという名前が浸透してきたと感じています。有難いですよね。

KOBUDOー古武道ー

「光」を忘れずに、自分たちに出来ることを精一杯やりたい

ーーコロナ禍、未曽有の事態となった二年間について
古川さん
大変な2年間でしたよ。特に2020年は8月くらいまで仕事が何もなかった。だけど、この経験があったからこそ、今までと違う演奏のアプローチを試したり、これまで忙しくしていた自分ともゆっくり向き合えることができました。まだまだ制限がありますが、今出来ることを一生懸命にやるしかないのかなって。
明日、何が起きるかわからないから、今を大切に」を常に胸に刻んでいると話す妹尾さんは、1995年の阪神淡路大震災で親友を亡くした。
妹尾さん
あれ以来、僕はそんじょそこらの事じゃ何も驚かなくなったんですよね。昔だったら大泣きしたり、大笑いしたりとかあったのかもしれない。あの経験を通して“今の時間を大切に”っていう気持ちと、‟明日へ向かう希望は失ったらダメだ”という気持ちがより一層強まったんです。まだ先が見えない状況ではありますが、僕はこんなコロナ禍だって大切で、愛おしくなります。コンサートってナマモノじゃないですか。だからこそ、今この瞬間を大切にしたい。
この瞬間を大切にーー。3月12日の公演でも、KOBUDOー古武道ー3人の“ありがとう”がいっぱい詰まった音のシャワーが会場いっぱいに降り注ぎ、私たちの心を照らすだろう。3人の美しいハーモニーが明日の希望の「光」となる。

公演概要・チケット

KOBUDOー古武道ーデビュー15周年記念公演 古武道歳時記~浪速春しぐれ~
ゲスト:岩崎宏美
公演日時 2022年3月12日(土) 15:00開演
料金 (税込)
S席(1・2階) 7,000円
A席(3階) 5,000円
特別席(2階最前列) 8,000円

チケット購入:KOBUDO-古武道-デビュー15周年記念公演 古武道歳時記~浪速春しぐれ~ ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[クラシック 器楽・室内楽のチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

インタビュー・文/ごとうまき