「人間の様々な感情が渦巻く‟昭和歌謡版リチャード三世”」中川大志、大阪公演に向けて意気込み語る!

山内圭哉、中川大志、松井玲奈 撮影:髙村直希
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倉持 裕が中川大志へ当て書き。明治座×東宝×ヴィレッヂによる三銃士企画第2弾!

明治座、東宝、ヴィレッヂという、歴史もカラーも異なる3社から、同い年の男性プロデューサー3名が集結し立ち上げた本企画は、2020年に『両国花錦闘士』が第1弾として上演され話題を呼んだことで記憶に新しい。あれから2年…第2弾作『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』が大阪・新歌舞伎座で2022年12月17日(土)〜25日(日)まで上演される。

今作は、シェイクスピアの『リチャード三世』と昭和歌謡が融合した作品で、作・演出は倉持 裕が手がける。タイトル通り、中川大志に当て書きされた作品となっており、出演には中川に加え、松井玲奈、福本雄樹、浅利陽介、中村 中、山内圭哉、池田成志と実力派俳優たちが顔を揃える。今回は中川大志、松井玲奈、山内圭哉を取材。本記事でたっぷりと作品の魅力を掘り下げていきたい。

——中川さんは今回初めて座長という大役を務められますが、タイトルにご自身の名前がついていることに関してどのように感じていらっしゃいますか?

中川
タイトルに関しては、散々いろんなところで言われて弄られています(笑)。僕も、まさか自分の名前がタイトルに入るとは想像もしてなくて、未だに本公演のポスターやフライヤーに馴染めません。初めて座長に挑戦しますが、僕より経験豊富な方が大勢いてくださるので、大変心強いです。演劇の大先輩、アンサンブルの皆さんと沢山コミュニケーションをとりながら、僕の演じる定と桜木というキャラクターにしっかりと向き合い、深めていきたいです。

——松井さん、山内さんは座長・中川さんにどんな印象と期待を持たれていますか?

松井
中川さんは座長に歌に、とてもプレッシャーが大きいだろうな、と思っています。‟座長らしく”というより、中川さんが役に向き合っている姿に、わたしたちはついて行こうという気持ちでいます。また中川さんの歌声もとっても素敵。心が震えるような中川さんの歌声をお芝居をしながらステージで聴けるのも楽しみです。

山内
初座長の中川さんに対して、何の不安もありません。実はそれは珍しいことなんですよね。本人の中ではいろんな戸惑いもあるかと思いますが。中川さんは最後には、タイトルの「中川大志之丞変化」にお客さまが納得して帰られるような作品にすると思っています。もちろん、僕たちも一生懸命支えさせてもらいます。

——作品の魅力、それぞれの役について、どのように演じようと考えていらっしゃいますか?

中川
2020年に三銃士企画第1弾の『両国花錦闘士』を拝見しました。明治座という歴史ある場所で、新しいエンターテインメントを感じ、キャストからも新たな挑戦に対する熱量を感じたことを鮮明に覚えています。今作も、いろんな世代やキャリアの異なるキャストが集結し創り上げていく作品。音楽、ダンスというエンタメ要素もありながら、演劇としても見応えあるかと思います。というのも、今作には人間の深い部分が描かれています。今までにないような作品にしていきたいですね。

さらに、鳴尾定と桜木輝彦の2役を演じる中川は、2役を演じるイメージをあまり持っていないと話す。

中川
感情の源、湧き出てきているのは1人の人物が共有しています。光を浴びている時と闇にいる時、互いの姿や時間が影響を及ぼしあって昇華されていく部分を大切にしたいです。そして姿、形、纏っているオーラは、お客さまに驚いてもらえるように変身します。

松井は、本作はミュージカルのように歌がセリフになっている訳ではなく、物語の中に楽曲が寄り添うように流れるのも魅力だと話す。

松井
私が演じる蘭丸杏は鳴尾プロダクション、一族に対して深い恨みを持ち、定と手を組んで復讐していくという狡猾な女性。本作には昭和歌謡をイメージした楽曲が物語に寄り添うように沢山出てきます。当時、昭和歌謡曲を聴いていた人には郷愁を感じてもらい、若い方には新たなジャンルの曲として楽しんでもらえるのではないかと思います。

山内
『リチャード三世』をベースにした作品のため、ピカレスクのような独特の魅力があります。舞台を昭和の芸能界に当てはめ、恨み、嫉み、妬み…などの人間の負の感情がうまく渦巻いた物語になっています。これはSNSが普及した現代でもリンクする部分があるんですよね。つまり、弱者がのし上がっていくためには悪事しかないという社会性が現代人にも響くのかと。それにしても、こういった類の話ってどうしてこんなにも魅力的なんでしょうね?私が演じるのはヤクザ。鳴尾プロのケツ持ちです。昭和感を知らない世代にはある種のリアリズムを持って帰っていただきたいし、昭和を知っている方には、“おったおったこんな奴”と思ってもらえたら。

シェイクスピア作品をベースにしたオリジナル作品

——倉持 裕さんがシェイクスピア作品初挑戦とのこと、作品にはシェイクスピア要素はどの位受け継がれていますか?

中川
『リチャード三世』がベースにはあるものの、物語はオリジナル脚本。シェイクスピアだから難しいとか、敷居が高いと感じる必要はなく、昭和歌謡の世界を覗きにいく、といった気持ちで足を運んでもらえると嬉しいです。もちろん、『リチャード三世』のエッセンスが散りばめられています。時代背景が“昭和”という部分においても新たな化学反応が起きると思っています。

山内
確かに、事前に『リチャード三世』をがっつり勉強して来られると逆に難しくなってしまうかもしれません。そもそも、シェイクスピアは当時のゴシップネタを本にして街の人たちに見せていたとか。つまり、とっつき易い、エンターテインメント作品にしていたということですよね。だから今回も“エンターテインメント”として楽しんでいただけるかと。

——本作の舞台は昭和。平成生まれの中川さん、松井さんにとって昭和とはどのようなイメージですか?

中川
戦後、復興していこうとする人々の凄まじいエネルギーに加え、ファッションやカルチャーといった様々なものが掛け合わさったカオスさが魅力的。対して今は規則的に感じます。この、ごちゃ混ぜになっているイメージが作品にも反映されていて、お客さまにも昭和の世界観を体感していただけるかと思います。

松井
ファッションが特に好きですね。昔は昭和のファッションって今と全く違う印象だったのですが、現在は流行があるようでない…。色もビビッドでアクセサリーも大ぶりで、お洒落をすることを楽しんでいるように感じます。本作でも昭和をイメージしたお洋服を着ることが楽しみです。

中川大志、松井玲奈は42歳じゃないかと思うほど頼もしい。

一方で昭和生まれの山内は、昭和の時代のエピソードを聞かれてユニークに答える。

——山内さん、昭和ってどんな感じでしたか?

山内
昔は不良の大人がいっぱいいたんですよ。僕の師匠・中島らも もそうでしたが(笑)。何やっているかわからへんけど、皆んなおもろがっている大人がいたから、若い時“大人になったら楽しいんや”と思っていました。今はコンプライアンスとか言い出しているし、不良の人たちも“不良じゃないよ”って言うので…。若い人たちは大人になることを楽しんでいるのかな?と思ったりしますね。それに、芸能の世界に入ると犯罪犯さないとあかんと思っていましたし(笑)。

自身が演じるヤクザ・大松守男に重ねた解答で、取材陣を笑わせた。

——カンパニーでの世代間、ジェネレーションギャップは感じますか?

山内
人によりますが、中川さんも松井さんも本当にしっかりとされていて、ひょっとしたら42歳なんじゃないかなと(笑)。佇まいも落ち着いていて安定しています。

——中川さん、スター桜木輝彦を演じるにあたってモデルにされている人はいますか?

中川
昭和に活躍された歌い手の方を調べていると、1人で立っている方が多いなという印象を受けました。そこに立っている歌手の方が背負っているもの、辿ってきた人生、軌跡…。ひっくるめて音楽にその人のエネルギーが乗っているといった印象を受けました。今作でも桜木輝彦というキャラクターは、定としての時間や景色が桜木になったと思ってもらえるように演じたいです。

稽古場では70%、後の30%はお客さまが作ってくださるもの

——大阪公演に向けてのメッセージ

中川
新たな経験、お客さまの前に立てること、とても楽しみにしています。東京、福岡と経て、大阪に来る頃には僕自身、作品もより良く変化しているかと。楽しみにしていてください。

松井
新歌舞伎座に立つのは初めてです。‟歌舞伎座”がつく舞台に立てるなんて想像もしていませんでした。公演するときは12月、外はとても寒いと思いますが、劇場の中ではとても熱いお芝居をお届けできれば。

山内
そういえば、明治座から新歌舞伎座なので劇場のつくり的にもほとんど違和感なく演じられると思います。僕たちが稽古場でやれるのは70%ぐらいで、後の30%はお客さまが作ってくださるものだと、いつも舞台に立って感じています。皆さま、想像力や感性などを膨らませて、最後の30%を創りに来てください。

初座長で、1人2役を演じながら歌も歌うという難しい役に臨む中川大志。彼の新たな挑戦と脇を固める豪華キャストが贈る“三銃士企画”のスペクタクルでケレン味たっぷりな舞台を是非堪能してみては。東京、福岡公演を経て、大阪・新歌舞伎座では12月17日(土)〜25日(日)全10回公演が開催される。ちょうどクリスマスシーズン。音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』がきっと最高のクリスマスギフトになることだろう。

公演概要・チケット

音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』

作・演出:倉持 裕

出演:中川大志/松井玲奈 福本雄樹/浅利陽介 中村 中/山内圭哉/池田成志 ほか

公演期間 2022年12月17日(土)~25日(日)
料金 (税込)
S席(1・2階) 13,500円
A席(2階左右) 8,500円
B席(3階) 6,000円
特別席(2階最前列) 14,500円

チケット『歌妖曲~中川大志之丞変化~』 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 演劇のチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(10:00~16:00)

撮影:髙村直希

取材・文/ごとうまき