【大竹しのぶインタビュー】若い人にも見せたい!「人として知っておかないといけないことが詰まっている」

インタビュー

こまつ座第152回公演 『太鼓たたいて笛ふいて』が2024年12月4日(水)〜8日(日)まで大阪・新歌舞伎座にて上演される。本作は、井上ひさしさんの音楽評伝劇の中でも人気の高い作品のひとつ。2002年の初演以来再演を重ね、今年10年ぶりに東京、大阪、山形、愛知などで上演される。この作品で2002年、第10回読売演劇大賞 最優秀女優賞を受賞し、今回も初演から戦時中、従軍記者として活躍した林芙美子を演じる大竹しのぶさんに、本作や役に対する思い、意気込みなどを語っていただきました。

台詞も音楽も素晴らしい作品

── 上演に向けての意気込みをお願いします。

大竹
演出の栗山民也さんと、いつかもう一度この舞台をやりたいと話していました。ここ数年、世界の情勢などに心を痛めることもあり、こんな時だからこそ、この芝居が出来ることを大変嬉しく思っています。井上ひさし先生が命を削って作り出した作品の一つです。心を込めて演じます!今回のポスターは、これまでの流れを大事にしながら、新しい作品に取り組むという意思が表現されています。

── 作品に対してどのような思いを抱いていますか?

大竹
「放浪記」で一躍有名になった後の林芙美子の、1935年から1951年までの16年間の軌跡を描いています。従軍記者として戦争について書いていた芙美子ですが、そんな自分を恥じて、市井の人々の小さな悲しみや喜び、世の中の真実を書いていくという物語。笑いあり涙ありで、歌とともに物語が進んでいくのですが、台詞に加え音楽、歌が本当に素晴らしいのです。この作品は絶対に若い人に見せたい!と思い、初演時、井上先生に「私がこまつ座の宣伝係になりますよ」と、言いました。

── 「若い人に見せたい」とのことですが、具体的にどういったことを伝えたいですか?

大竹
日本人として生まれて、日本がどういう歴史を辿ってきたのか……。人として知っておかないといけないことだと思うし、それを学ぶことができる作品だと思います。ミュージカルなどもとても素晴らしいのですが、その一回分をこっちで見て!って言いたいです。

大竹
ちなみに息子(二千翔)は、私の作品の中で、この作品が一番好きって言ってくれるんです。何気ない芝居だけど、ズシンとくると。当時大学生だった息子は、この作品を観た時、手で顔を覆って泣いたみたいです。でも一番好きなシーンは、私が死んだ後のシーンとのこと(笑)。

役者としての役割を理解し、喜びを感じる作品

── 初演から22年経ちましたが、当時の心境や、作品に対する思いはどのように変化しましたか?

大竹
「この作品に出会わせてくれてありがとう」と、夜眠る前に空に向かって言っていたくらい、芝居ができる喜びに浸っていました。井上先生の分かりやすい言葉で深いことを言ったり、面白いことを言ったり……。その言葉が、客席にじんわりと染み渡っていく様を肌で感じていました。そして言葉、物語を伝えていくことが役者の仕事なんだと、この戯曲によって深く理解することができました。あれから22年、「戦争」という言葉に、私たちはより恐怖が増しているように思います。

── この作品に対して、過去に井上ひさしさんや演出の栗山民也さんと、どのようなディスカッションをされましたか?

大竹
井上先生とは「人を笑わせること」や「戦争」など、いろんな話をしました。とくに栗山さんとは『ピアフ』のお稽古をしているときに「戦争」について沢山語りました。初演時、井上先生が「この作品は過去の話じゃないからね、10年後の日本の話、君たちの未来の話だからね」と、小学生達に熱弁されていたのを覚えています。その後、先生は天国に旅立たれ、再再演をした時にはその小学生達は高校生になっていて、同じメンバーで観に来てくれました。

大竹
“笑いながら泣けてしまう”そんな作品をお書きになる井上先生は凄いです。いま生きておられたら何を書いて、何を私たちに教えてくださるのだろう……。栗山さんとそんな話をよくしています。

── 公演を楽しみにしてくださっている皆さま、まだ観たことのない方、若い世代の方に向けてのメッセージをお願いします!

大竹
初めて観る方、どうか騙されたと思って来てください!何か必ず受け取れるものはあるから……。音楽も決して派手ではないけれど、心に染み渡る曲ばかり。私は新歌舞伎座の舞台に立つのは初めてです。大阪のお客さまは笑ってやる!という感じで客席に座ってくださるので、笑い声が東京とは違って、役者にとっても嬉しい場所。思いっきり笑って、泣いてもらえるような熱い芝居をお届けしますので、楽しみにしていてくださいね。

公演・チケット

こまつ座第152回公演
『太鼓たたいて笛ふいて』
公演期間 2024年12月4日(水)~12月8日(日)
料金 (税込)
S席(1・2階) 11,000円
A席(3階) 6,500 円U-25チケット(観劇時25歳以下対象)あり

チケットこまつ座 第152回公演「太鼓たたいて笛ふいて」 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 演劇のチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

撮影:髙村 直希

取材・文:ごとうまき