『タイタニック』のヒロインローズ役のケイト・ウィンスレット×『ストーリー・オブ・マイライフ』のシアーシャ・ローナンが魅せる、性別を超えた“愛の物語”。
現在公開中の『アンモナイトの目覚め』は、前回の『彼女』に続き同性愛作品である。両作品ともに、美しい女性二人の艶めかしい見事な濡れ場が見どころの一つである。本作は19世紀イギリスを舞台にした古生物学者とお金持ちのお嬢さんが惹かれ合い自分を見つけ出していく物語。静謐で繊細で時に大胆、波の音が印象的で、音楽や台詞など余計なものを削ぎ落としたシンプルな作品。
普段寡黙で大人しい人ほど、何か一つスイッチか入るととてつもないエネルギーを放出させる。それはため込んでいた感情だったり、隠れていた才能だったり、恋愛面での感情や性体験など多大なパワーが溢れ出す・・・。
「おやすなさい」のキスから始まった二人の関係、古生物学者“稲妻メアリー”の内に秘めた激しい情熱とエロスをケイト・ウィンスレットが巧みに演じている(タイタニックのローズを演じてから二十数年も経っているとは感慨深い)。
あらすじ
1840年代、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジス。人間嫌いの古生物学者メアリー・アニングは、世間とのつながりを絶ち、年老いた母と慎ましく暮らしている。かつて彼女の発掘した化石が大発見として世間をにぎわせ、大英博物館に展示されたが、女性であるメアリーの名はすぐに世の中から忘れ去られた。土産物用のアンモナイトを発掘し、細々と生計を立てているが、ある日を境に裕福な化石収集家の妻シャーロットを数週間預かることになった。若く美しく可憐なシャーロット、彼女はまるで籠の中の鳥。モラハラ夫への愛情はとっくに無くなっていた。何もかもが正反対のシャーロットに対しメアリーははじめは苛立ち、冷たく突き放す。しかし、シャーロットを看病する日々が続き次第に彼女に愛おしさを感じるようになりやがて二人は惹かれていく。実在した女性古生物学者メアリーをウィンスレット、シャーロットをローナンが演じる。メアリーとシャーロットは一緒に暮らしていたという事実しかわかっていないため、実際の二人の関係は定かではない。メガホンをとったフランシス・リー監督は初長編作「ゴッズ・オウン・カントリー」で、惹かれ合う2人の青年の姿を描いている。2020年・第73回カンヌ国際映画祭(新型コロナウイルス感染拡大のため通常開催を見送り)のオフィシャルセレクション作品である。
古生物学者の名もなき人生
階級社会かつ、女性の地位が低かった100年前のイギリスでは女性がいくら偉大な功績を残そうが名前を消されてしまっていた。古生物学者メアリーは実在した人物ではあるが僅かな記憶しか残っていないらしい。フランシス・リー監督が想像を膨らませ当時の時代背景や二人の移り行く複雑な感情を巧みに紡いでいる。
レズビアンの生々しい描写は見応えたっぷり!?
LGBTものでも女性同士を描いた作品は男性同士の作品よりも少ないため新鮮ではあるが、最近はもはや男女という性別を超えた人類愛の物語ではないかと感じるようになってきた。近年よくあるような同性愛カップルの愛をロマンティックに美しく描いた作品とは異なり、ラストの展開は拍子抜け。さらに二人の性描写は生々しい(長いドレスを捲り上げてのシーンは斬新である)。一緒に観る相手によっては気まずくなるかもなので要注意!いずれにせよ、ローナンファンは必見の作品だ。