【ミステリークルーズ】名作「ナイルに死す」を映画化 重厚な本格サスペンス『ナイル殺人事件』

(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved
映画

ミステリーの女王アガサ・クリスティによる名作「ナイルに死す」をケネス・ブラナーが監督・製作・主演で映画化。アガサ・クリスティ原作といえば「オリエント急行殺人事件」があり、ケネス・ブラナーはオリテント急行殺人事件でも製作・監督・主演のポワロ役を引き受けた。ポワロの悲しき過去と“髭”の理由、個人的なストーリーが冒頭で語られ、そして後のナイルでの連続殺人事件とリンクしている。美しきリネット役に「ワンダーウーマン」のガル・ギャドット、その夫サイモン役に「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーなど豪華キャストが競演。

あらすじ

エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員と、かつての友人でリネットの夫の元恋人であるジャクリーン。リネットは友人ジャクリーンの恋人のサイモンを略奪婚した。ストーカー化したジャクリーンに疑いの目が向けられる一方で、拳銃、スカーフ、マニキュア、絵具、本作のためだけに製作されたティファニーのネックレス・・・と事件のカギとなるアイテムを頼りに名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていく。またこの事件をきっかけにして数々の難事件を解決してきたポアロの人生も変わっていく。

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解説・レビュー

愛は時に凶器ともなる

原作からは大きく改編された本作、LGBTや多様性を考慮し現代版として描かれている。壮大なエジプトの風景と優雅な豪華客船、スフィンクス、アブ・シンベル神殿、ピラミッドなどと共に描かれる重厚な本格サスペンス。サスペンスとともに描かれるのは、愛によって狂った人間の姿、憎悪や嫉妬(人間の汚い部分を炙り出す作品は私の大好物)。今作も分かりやすい関係図で最高に美味しくいただきました。人間の心の機微について深く考えさせられる作品でもある。

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美しく富も名誉も、ハンサムな夫も、全て手に入れたリネット、その周りを囲むのは嫉妬と欲望、激しい愛憎、人間のどろどろしたものが蠢いている。お金には興味のないリネットの名づけの母マリーと狂った金銭感覚から抜け出せないナースのバワーズ、リネットの元婚約者で医師のウィンドシャム、オリエント急行でも登場した親友のブークとその母親、ブークの恋人のロザリーやその叔母でジャズシンガーのサロメなど個性的な招待客全員にリネット殺しの疑いの目が向けられる。

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ポアロの特徴的な髭、物事に動じない、どこか冷めたような性格になった理由を知れる冒頭シーンから始まり、1時間ぐらいは事件などは起こらずにエジプトの美しい風景、登場人物たち一人一人に焦点が向けられそれぞれのキャラクターが紹介される。多くの人が、この時点から誰が犯人か…と考えながら見ているはず、その見せ方も巧みだ。とくに、始めの30分間はなかなかエジプトシーンに移行せずで、何の意味が?と思っていたものの、ラストにはしっかりと伏線回収される。ただ、ラストの謎解きでは粗さが少し目立つし、キャスティングも改編されているため原作ファンにとっては少しがっかりかもしれない。とはいえ、遺跡ツアーや優雅な大河の絶景はため息もの。是非劇場で。

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ナイル殺人事件

監督:ケネス・ブラナー
原作:アガサ・クリスティ
製作:リドリー・スコット ケネス・ブラナー ジュディ・ホフランド ケビン・J・ウォルシュ
脚本:マイケル・グリーン
キャスト:ケネス・ブラナー、ガル・ギャロット、アーミー・ハマー、トム・ベイトマン、アネット・ベニング
原題:Death on the Nile
製作:2022年製作/127分/G/アメリカ
配給:ディズニー

文/ごとうまき