「ポンヌフの恋人」「汚れた血」などの監督レオス・ カラックスが、今をときめくアダム・ドライバーと「エディット・ ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤールを主演に描いたロック・ オペラ・ミュージカル。
本作はロック界で50年のキャリアを持つ兄弟バンド・ スパークス(ロン&ラッセル・メイル、 二人のライブ映像とともに振り返るスパークス・ ブラザーズも現在公開中)が、 ストーリー仕立てのスタジオアルバムとして構築していた物語を原 案に、映画全編を歌で語り、全ての歌をライブで収録している。
スパークスは『ホーリー・モーターズ』 での楽曲使用が縁でカラックスと知り合い、 ミュージカルの案をいくつか送り、『アネット』 が選ばれて長期間のコラボを経て映画化が実現した。 カラックスは10代からスパークスのファンだったといい、 アルバム『ヒポポタマス』(2017年)ではボーカル& アコーデオンで“When You’re a French Director”にも参加した。
あらすじ
アメリカロサンゼルス、 攻撃的なユーモアセンスをもったスタンダップ・ コメディアンのヘンリーと、 国際的に有名なオペラ歌手のアンは運命の恋に落ち、 やがて二人は結ばれる。 美女と野人の意外な組み合わせは世間から注目されるようになり、 一躍時の人に。しかし、 二人の間にミステリアスで非凡な才能をもったアネットが生まれた こと、 二人の能力の差や人気の格差によって彼らの人生は狂い始めるーー 。
深呼吸して、息を止めて、さぁ、物語に溶け込もう
ダークなおとぎばなし、良くも悪くも評価が分かれる作品となる。かなり癖が強く大衆的な映画ではないが、この世界観がピタッとハマればその人の人生に響く一本になるはず。
しかし本作、最初っから最後までずーっと歌っている。たぶんただの台詞が全くと言って良いほどないはず・・。
そしてスパークスの音楽スタジオで収録するオープニングから、 エンディングの始まりの挨拶と締めくくりがあってメリハリが効い ていて思いのほか良い。
とりわけ、物語が始まる前の音楽スタジオからの映像が「今から何が始まる んだろう」「何を見せてくれるんだろう」と、ワクワクさせてくれる演出が心憎い。
芸術的で創造的、凡庸でいて新しい。 そして切なくって悲しいロックなオペラ…。
赤ん坊のアネットが木彫りの操り人形というのがなかなか斬新。ラストでようやく、アネットが人形の意味が分かるのだが、それにしてもアネット役の子役が超絶可愛くて演技も上手い!そして赤ん坊を取り上げる産婦人科医が日本の俳優• 古舘寛治だから最高にファンタスティック!ちなみに水原希子も出演しているので見逃さぬように。現在公開中の映画『スパークス・ブラザーズ』と併せて見るとより楽しめるはず。
アネット
監督:レオス・カラックス
製作:シャルル・ジリベール ポール=ドミニク・バカラシントゥ アダム・ドライバー
脚本:ロン・マエル
キャスト:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーク、デビン・マクドウェル、ラッセル・メイル、ロン・メイル、古館寛治、水原希子、福島リラ
原題:Annette
製作:2020年製作/140分/PG12/フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ合作
配給:ユーロスペース
文/ごとうまき