第94回アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した作品『ベルファスト』が3月25日から全国劇場で公開中だ。本年度のアカデミー賞作品賞に『コーダ 愛の歌』が受賞したが、本作も負けず劣らずたまらなく魅力的!とりわけ主人公バディを演じたジュード・ヒルの可愛さに誰もがノックアウトされ、この小さな俳優に虜になるはず。そして、奇しくもいま世界中に影響を与えているウクライナとロシアの戦争、人生や家族を奪われたウクライナの人々たちと重ね合わせてしまうだろう。
解説・あらすじ
本作は「オリエント急行殺人事件」などの俳優・監督・舞台演出家として世界的に活躍するケネス・ブラナーが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品となっている。舞台は北アイルランドのベルファスト。1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始め、(1998年まで続いた「北アイルランド紛争」)9歳のバディの穏やかな生活を一変させた。住民すべてが顔なじみで、ひとつの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断され、暴力と隣り合わせの日々が続いた。いつしかバディと家族たちも故郷を離れるか残るかといった決断を迫られることになる。この‟分断”によって引き裂かれたバディの家族、激動の時代に翻弄されるブラナーの故郷ベルファストの様子と少年の成長がモノクロの映像とともに力強く描かれている。争いによって分断される街ではあるが、そこには確かな人々の営み、音楽や映画といった芸術や文化、様々な‟愛”で溢れていた。
レビュー
本作を見て多くの人が今世界を騒がせているロシアによるウクライナへの軍事侵攻、母国を離れざるを得なくなった人々に対して思いを馳せるだろう。もちろんこれは偶然でしかない。本作に描かれているのは誰もが持っている故郷やアイデンティティ、といった普遍的なテーマが散りばめられている。
筆者は本作の持つ世界観がとにかく好み。冒頭のカラーの映像と心揺さぶられる音楽、そこからタイムスリッ
“人間は変化を嫌うもの、だけど時代は変わるもの”
顔見知りの街の住人たち、祖父母や両親、兄、そして初恋のキャサ
ベルファスト
文/ごとうまき