【家族を引き裂くアメリカの移民法】繊細かつ激しい演技で名優たちが奏でる『ブルー・バイユー』

(C)2021 Focus Features, LLC.
映画

第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、8分間におよぶスタンディングオベーションで拍手喝采と称賛を浴びた映画「ブルー・バイユー」が、2022年2月11日から全国で公開されている。本作はアメリカの養子縁組の闇、移民法の落とし穴によって愛する家族と引き離されてしまう韓国系移民のヒューマンドラマ。

あらすじ

韓国で生まれ、3歳のときに養子としてアメリカ南部に引き取られたアントニオは看護士のキャシーと結婚し、連れ子のジェシーと3人で暮らしていた。キャシーの妊娠がわかり、家族が増える喜びもある一方でタトゥーアーティストとしての収入では不十分だと思い、アントニオは求職活動をするも、窃盗の前科もあって不採用。そんなとき、ジェシーの父親である警官のデニーが現れトラブルに。逮捕されたアントニオは、30数年前の養子縁組書類に不備があったと告げられ、国外追放命令を受けた。場合によっては強制送還となり、二度とアメリカに戻ってくることはできない。アントニオとキャシーは裁判を起こして異議を申し立てをしようとするが、そのためには5000ドルという高額な費用が必要だった。アメリカに残れるようにと奔走するも、アントニオに次から次へと問題が襲いかかる。

子役の名演がよりセンセーショナルに訴えかける

’80年代~’90年代に韓国から養子として渡米した多くの移民たちが国外追放されているという現実を知っている人はどのくらいいるだろうか?アメリカの移民問題と聞いても、島国日本で生まれ育った私たちにとってあまりピンと来ないであろう。
韓国系アメリカ人として生まれ育ったジャスティン・チョンが監督・脚本・製作・主演を務めているが、国外通報命令を受けた彼らの悲痛の叫びと悲劇をチョンが知り、“家族”という共感を呼びやすい普遍的なテーマで訴えた。韓国系アメリカ人として生まれ育ったジャスティン・チョン自らが主役を演じることによってその悲痛な問題が浮き彫りになり、リアリティさが増す。

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チョンの筆運びは繊細さと強引さが絶妙なバランスをとりながら表れている。エモーショナルな映像と演出が彼の強いメッセージ性となり、養子縁組や移民の問題を浮き彫りに。
ホームビデオのようなザラザラとした画質、16mmフィルムで撮影されたカメラに主人公アントニオの不器用な性格や壮絶な幼少期が映像にも投影されている。カメラに映り込む妻や連れ子、生まれてくる娘を愛し、頑なに護ろうとするアントニオの姿に心が大きく揺さぶられる。

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そして同じ移民であるベトナム人女性との邂逅によってアントニオの幼少期、そして母を強く思い起こさせたのだろう。本作のタイトル「ブルー・バイユー」は青い入江、そして移民の歌でもある。アリシア・ビカンダーの歌声、青い湖、連れ子のジェシーとの時間、どれも美しく、エモーショナルに描き出され、アメリカの養子縁組、移民法の不条理さを訴えている。

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ブルー・バイユー

監督・脚本:ジャスティン・チョン
製作:チャールズ・D・キング キム・ロス ポッピー・ハンクス ジャスティン・チョン
キャスト:ジャスティン・チョン、アリシア・ビカンダー、マーク・オブライエン
原題:Blue Bayou
製作:2021年製作/118分/G/アメリカ
配給:パルコ

文/ごとうまき