『チョコレートドーナツ』待望の再演!東山紀之「亞門さんが描きたかったものを一緒に作り上げていく」

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 PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『チョコレートドーナツ』が2023年11月3日(金・祝)〜5日(日)大阪・豊中市立文化芸術センター 大ホールにて上演される。

本作は、同性愛に対して差別と偏見が根付いていた1970年代のアメリカでの実話をもとに、育児放棄されたダウン症の少年と家族のように暮らすゲイカップルの愛情を描き、全米各地の映画祭で観客賞を受賞した同名映画を2020年世界で初めて舞台化。主演・東山紀之の魅惑のダンス、唄、演技によって観客を虜にした。そして3年の時を経て、ポール役に岡本圭人を迎え、宮本亞門の翻案・脚本・演出によって再演される!初演時はコロナ禍によってわずかな上演回数になったというが、今回は10月8日からの東京公演を皮切りに11月から地方公演を巡演する。

 公演に先立ち、主演の東山紀之さんが取材会に出席。東山さんが演じるのは、シンガーを夢見てショーパブのダンサーとして働くルディ。再演にあたり、役づくりや作品の見どころ、赤ちゃんの頃から知っている岡本圭人さんとの共演についてなど語っていただきました。愛情豊かなルディを演じるにあたり、いつもより感情を露わにするという東山さん、映像では見ることのできない舞台ならではの魅力とは……。

門さんの演出によって新たな一面が

── 3年ぶりの再演、お話を聞かれたときの心境は?

東山
初演時のあのような状況下、足を運んでくださったお客様が沢山いて、制限がある中でもエンターテイメントの力を感じることができました。今回は制限なく思いっきり開放的に演じることができます。

── 2020年の初演時を振り返って、実際舞台に立たれていかがですか?

東山
僕自身大好きな映画で、まさかこの舞台をやるなんて思わず映画を見ていました。舞台ではお客さまの感情の揺れ動きを非常に強く感じましたし、その反応を観るのも楽しくて、やり甲斐があります。演出の宮本亞門さんとも初めてご一緒させていただくことが出来て、とても嬉しかったですね。亞門さんの演出も的確で、僕の新たな一面を引き出してくださり喜びを感じながら舞台稽古に臨んでいました。

── 東山さんが感じる本作の魅力とは?

東山
法とは?人間とは?を問う作品です。差別と偏見が色濃く残る1970年代のアメリカが舞台。現代は昔よりも理解が深まってきたとはいえ、今も通ずる社会問題が描かれています。そしてそこに立ち向かう姿勢や愛の形が魅力的です。それをエンターテイメントとして表現できることで、ステージの新たな魅力を感じてもらえるのではないでしょうか。

亞門さんの演出と台本に寄り添って、忠実に演じたい。

── 東山さん演じるルディ役はどんな人で、どのように演じようと思われていますか?

東山
ルディはとても正直で、愛の人。それゆえに感情がよく動く。その部分を亞門さんは特に求められ、時には泣き叫ぶ!ということもします。ある意味大変ではありますが、これまで淡々とした役が多かったので、僕の新たな面を引き出してくださいました。また、ドラァグクィーンという扮装をすることによって徐々に自分の気持ちも高ぶりますし、そういった高ぶりやルディの感情を素直に出せたらと思っています。

── 東山さんはポール役の岡本圭人さんを赤ちゃんの頃から見守っておられたとのこと。今回ご一緒するにあたってどんなお気持ちですか?

東山
健一の息子としてずっと接していましたし、彼がHey!Say!JUMPに入った時も驚きました。そしてその後、父と同じ役者で生きていくと聞いた時もびっくりしました。まさか、このような縁が生まれるなんて自分でも思っていませんでしたね。これまでにも何度か圭人の舞台を観ましたが、役に真摯に向き合っていたのが印象的です。一俳優として、敬意をもって接していきたいです。

── 東山さんと岡本さん、お二人だからこそ生まれる化学反応や見どころもあるのではないでしょうか。

東山
今回は亞門さんがポール役の圭人の方にアレンジを加えてくださいました。年齢差、性別、育った環境といったものを乗り越えていく物語なので圭人も同じような気持ちを持って取り組んでくれると期待しています。再演にあたって、初演時よりもルディとポールのバックグラウンドが深く描かれています。例えば、どうしてポールがショーパブに来て、なぜ酔っ払っていたのかなど……。初演時に描けなかった背景が補われているのでそこに注目してもらいたいです。

 

様々な家族の愛の形を観て感じ取ってほしい

── 今回の舞台で大切にされていることは?

東山
3年前様々な制限の中、覚悟を持って開演しました。それに初演時はコロナ禍で最後まで完走できなかったという悔しさもあります。今回は亞門さんが本当に描きたかったものである“愛”を一緒に作り上げていきたいです。ルディの愛がいろんな人に伝染していく。

── ショーシーンなども含めて、今回特に注目してもらいたいところはありますか?

東山
今回はドラァグクィーンとして踊るので、いつもの踊りとは一風変わっていて楽しんでもらえるのではないでしょうか。特にオープニングのステージングは皆さんにとっても衝撃的だと思いますが、僕にとっても衝撃的で。ドレスにハイヒールで登場ですよ。そこから舞台の雰囲気は一気に変わっていきます。お客さまの反応もシーンによって驚いた表情をされるところやちょっと引き気味なところもあったりして(笑)。衝撃度は高いのではないでしょうか。

東山
また、隣室のダウン症の少年マルコ(トリプルキャスト)を演じる彼らも大変素晴らしいんです。ダウン症の方が舞台に立つというのはとても意味があることで、様々な子どもたちの可能性を引き出してあげることができると思うのです。特に初演時から出演してくれている丹下開登くんのお母さんは当時闘病中で……もう亡くなられたんですが……。3年前にお母さんとお話したとき、開登が舞台で生き生きしている姿を見るのが幸せだとおっしゃっていました。そういった事も聞いているので、余計に思うのです。

── 映像や舞台などいろんな作品にご出演されていますが、出演を決める際の基準などはありますか?

東山
楽しそう!というのが基準です。特にステージにおいて難役であれば面白そうだと惹かれます。今回のようにドラァグクイーンとして歌って踊って、さらに感情の揺れ幅が大きい役は困難もありますが、それを乗り越えた時の達成感や喜びは計り知れません。

── 大阪公演ならではの魅力などを教えてください。

東山
場所によって根付いている文化が違うため、お客さまの雰囲気も違います。吉本新喜劇の影響もあるかと思うのですが、大阪の方達は演劇などへの関心が強く、いつも真剣に観て、喜んでくださいます。皆さんの感情の高ぶりが舞台に伝染するのを感じます。本作が愛や希望の象徴になっていくと信じています。様々な家族の愛の形を観て何か感じていただけると嬉しいです。

チョコレートドーナツ | PARCO STAGE -パルコステージ-

 

取材・文・撮影:ごとうまき