実話に基づく恐ろしく重いテーマである一方で、娯楽性も感じられる重厚な作品
今でも日本のマーケットで流通し、どこの家庭にも一つや二つはあるだろう、テフロン加工のフライパンや鍋。このテフロンが体に有害な事は結構前から知れ渡っているため、テフロンフライパンはとっくに破棄して他の調理器具を使っている人もいる一方で(筆者もその一人)、まだまだ使用している人も少なくないだろう。なんとこの有機フッ素化合物の一種「テフロン」の特許を持ち、その製造過程で有害な物質が生じることを把握しながらも、工場から40年も廃棄物を垂れ流し土地や川を汚染し、結果、人や動物を病気や死に陥れた米化学大手「デュポン」が本作での“悪役”として活躍する。
俳優マーク•ラファロと実在するモデルの弁護士、二人の信念に胸を打たれる
本作を手がけたのは「キャロル」のトッド・ヘインズ監督、主演のマーク・ラファロはプロデュースも務めている。環境保護の活動家という一面も持つマーク・ラファロは、デュポンの訴訟をニュースで知り、この“訴訟”を世に広めるために映画化に向けて動いたという。しかし相手は米国大手の巨大企業だ。“真実に光を当てる”ことによってマーク自身の俳優生命や私生活にも大きな危険が生じる可能性だってあろうに、彼らの全てを失う覚悟とその勇気、“事実を世間に広めたい”という強い信念に大きく胸が揺さぶられる。また、共演のアン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ、ビクター・ガーナー、ビル・プルマンたちも本作に真摯に向き合い、メッセージ性を理解して伝えようと懸命に向き合ったことが演技や作品からも伝わってくる。
家族との時間も犠牲にし、自身の身体にも顧みずに減給されてもなお弱者のために身を粉にして奮闘する弁護士ロブ・ビロットの不屈の精神と信念に敬意を表したい。
(C)2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
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あらすじ
1998年、オハイオ州の名門法律事務所に勤務し、企業側につく立場だった弁護士ビロットは、ウェストバージニア州のデュポンの工場の近くで農場を営む男性から牛の大量死を調査してくれと頼まれたことがきっかけで、巨大企業の恐るべき不正を知り、環境汚染と健康被害に苦しむ住民側につくことを決意した。ロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切るが、悪事から逃れようとする巨大企業「デュポン」との法廷闘争は、真実を追い求めるロブをあの手この手で窮地に陥れた。特筆すべき点として、この闘いはいまもなお続いているということだ。
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公害被害者や地元の人々が参加しリアリティをより一層強めている
本作にはデュポンのお膝元、公害被害をもろに受けたウェストバージニア州の地元の人々も参加したという。訴えた農場を営むアール・テナント(ガンで死去)の弟や、デュポン社のテフロン加工工場で勤務している期間に妊娠した女性の息子(出生時奇形児だった)も実際に登場している。公害被害者たちが実際に出演し、現実味がより増す映画構成となっている。また撮影場所にはオハイオ州のシンシナチの一流弁護士事務所「タフト」が使用されたという。
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「デュポン社」だけでない。こんなの氷山の一角だ
弱者に焦点を当てて描き出すトッド・ヘインズ監督の語り口によって観る者に静かな大きな感動を与えている本作は、今年公開された『MINAMATA』同様、私たちは本作を見てただ終わりだけではいけない。日本でも企業や政治家の隠蔽やデータ改竄はあちらこちらで行われている。周りにも同じような例がないか今一度よく考えてみる必要がある。そして劇中のセリフにあったように、自分のことは自分で護るしかないのだ。私たちが賢くならないと、ね。
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関西上映館
大阪ステーションシティシネマ (osakastationcitycinema.com)
シネ・リーブル神戸 | 上質な空間で多彩なラインナップを楽しめる映画館 (ttcg.jp)
TOHOシネマズ 西宮OS:上映スケジュール || TOHOシネマズ (tohotheater.jp)
TOHOシネマズ 二条:上映スケジュール || TOHOシネマズ (tohotheater.jp)
TOHOシネマズ 橿原:上映スケジュール || TOHOシネマズ (tohotheater.jp)
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ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男
監督:トッド・ヘインズ
脚本:マリオ・コレア マシュー・マイケル・カーナハン
製作:マーク・ラファロ 、クリスティーン・ベイコン 、パメラ・コフラー
キャスト:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ、ビクター・ガーナー、ビル・プルマン
原題:Dark Waters
製作:2019年製作/126分/G/アメリカ
配給:キノフィルムズ