世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス＆セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたヒューマンドラマ。ウィル・スミスが主演・製作を務め、実物そっくりに演じている。その役作りが評価され、2022年・第94回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞（ウィル・スミス）、助演女優賞（アーンジャニュー・エリス）ほか計6部門にノミネートされている。また製作にはウィリアムズの妻のジェイダ・ピンケット・スミスやヴィーナス&セリーナ姉妹が名を連ねる。

「巨人の星」星一徹のお株を奪うスパルタ練習と父親の愛

スポーツ映画でもあり、子どものために人生を賭けた父親と母親、天才テニスプレイヤーの物語となる。家族が一つの強力なチームとなって、姉妹と一心同体となり、のし上がっていく物語は、誰もが好む王道ストーリーでしょう。実話っていうのがポイント！
優勝したテニス選手が4万ドルの賞金を受け取る姿をテレビで見たのをきっかけに、自分の子供をテニスの世界チャンピオンにしようと考える、荒唐無稽なプランを立てたテニス未経験の主人公ウィリアム。本などで知識を得ながら、子供が生まれる前に「世界王者にする78ページの計画書」（ドリームプラン）を独学で作り、その計画書に基づき、娘2人を世界的テニスプレイヤーへと世に送り出す。

劣悪な環境と資金不足からスタートしたウィリアムズ一家。彼らはアメリカで最も危険な街と言われるL.A.のコンプトンに住み、そこの公営テニスコートでスパルタ練習を積み、姉妹の才能を見抜いたコーチとの契約は高額なために断った。後にテニススクールに入門するも、学業を優先させ、若くしてプロ契約を結ぶことを拒否していた。普通では考えられない無茶苦茶なやり方、普通とは一線を画した父親のスパルタ教育の裏には父の娘たちに対する深い愛も描かれている。

順風満帆に進んでいくストーリー、特別大きな事件や号泣するようなシーンもなく、淡々と姉妹がのし上がって行く過程とぶっ飛んだお父さんと家族を支える忍耐強いお母さんが描かれる。とくにセリフが軽快で小粋。
臨場感あり思わず息を呑むラストのテニスシーンは圧巻だ。
人種差別、環境、資金問題など、あらゆるハンデを乗り越えたウィリアムズ一家。自分を貫き通し、不可能を可能に、娘を守り通そうとする父としての姿、そして自分を信じ、闘う姉妹たちの姿に元気と勇気がもらえる作品だ。製作も手掛けたウィル・スミスの本気度が本作からも伝わってくる。それにしても、短パンが似合い過ぎよ。