94歳のおばあちゃんが主役のドキュメンタリー『GOGO94歳の小学生』《映画レビュー》

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命がけで学校に通うケニアの子どもたちの姿を描いた「世界の果ての通学路」(2012年)のパスカル・プリッソン監督がメガホンをとった最新作。今度は同じケニアで、小学校に通う94歳のゴゴ(おばあちゃん)を追ったドキュメンタリー。本作は文部科学省特別選定作品にも選ばれている。

 

あらすじ

3人の子ども、22人の孫、52人のひ孫に恵まれ、ケニアの小さな村で助産師として暮らしてきたプリシラ・ステナイ “GOGO”という愛称で周りから慕われている。(GOGOとはカレンジン語で“おばあちゃん”という意味を持つ)

植民地時代の1923年に生まれた彼女は他の少女たちと同様に学校に行くことを禁止され、若くして結婚。幼少期に勉強を許されなさったことから教育の大切さを痛感していた彼女は、学齢期を迎えたひ孫たちが学校に通っていないことに気づき、当初は高齢すぎるため入学を拒まれるも、「自分が見本となることで、娘を学校に行かせない他の親たちを説得できるだろう」と、粘り強く校長に交渉し許可を得て、90歳にして6人のひ孫娘たちと共に小学校に入学した。

他の小学生たちと同じように寄宿舎で寝起きし、制服を着て授業を受ける彼女だが、耳は遠くなり目も片方は全く見えない状態で勉強を続ける。そんな状態で語学などを習得するも、そう簡単にはいかず、苦労しながら勉強に励んでいく。彼女の寄宿舎のドアには「学ぶことに年齢は関係ない」という看板が掲げられていて、助産師として自分が取り上げた教師や、クラスメイトたちに応援されながら、念願の卒業試験に挑む姿をありのまま描かれている。

94歳のゴゴがなぜ小学校に通うのか・・?

メッセージ性の強いドキュメンタリー

本作からは教育の大切さ、学び続けることの意味、同時に人生には遅すぎることなんてなく、何歳からでも挑戦できるという明確なメッセージが込められている。一方で貧困や慣習などの理由から未だアフリカに残る教育問題が本作を通して浮き彫りとなっている。

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作品概要

監督:パスカル・プリッソン
キャスト:プリシラ・ステナイ
製作:2019年製作/84分/G/フランス
原題:Gogo
配給:キノフィルムズ
オフィシャルサイト:https://www.gogo-movie.jp/

評価点とレビュー

83点!!

80分という時間的にも丁度良い作品で集中して観ることができた。ただしストーリー性は高くなく淡々と進んでいくため、途中で寝落ちしそうになる部分は否めない。

ケニアの美しい広大な大自然に野生の動物達の姿も楽しむことができ、また美しい色使いのファッションにも注目だ。 そしてなんといってもゴゴが可愛い。彼女の生き様が表れた真の美しさ、強さ、信念が本作から垣間見られ、人生100年といわれる時代に、歳をとることや「老い」対しての不安が払拭されたような気がして、希望を与えてくれる作品である。

コロナ禍で海外旅行に行けない今、映画を通して外国を見ることができるのも良い所である。私は様々な外国の映画を好んで鑑賞するのだが、その理由の一つにはその国の文化や歴史的背景、社会問題などを知るきっかけになるからといった理由がある。そして映画は総合芸術、いろんなジャンルの芸術家達の技術や努力が一つの作品に集結していて、これを2時間近くでギュッと凝縮、これほどコスパよく効率よく楽しめるのは映画だからであると改めて思う。だから映画はやめられないのだ。

緊急事態宣言が発令されているが、映画館が営業している限りは私も感染対策をしっかりして、できるだけ劇場に足を運びたい。Netflixがどれだけ世界を征しようと、私は劇場の大きなスクリーンと臨場感ある音響で映画の世界に入り浸りたい。今年も沢山の素晴らしい作品に出会えることを期待して、私も日々学び続けるつもりだ。

文/ごとうまき