カルト的人気漫画が実写化!サイコミステリー『ホムンクルス』

(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ
エンタメ

狂気に満ちた人々と生々しい描写とともに、人間の正体に迫る。

『ホムンクルス』は「殺し屋1」などの山本英夫の同名漫画を綾野剛主演で、清水崇監督によって実写映画化したもの。

車上生活を送る名越進(綾野剛)の前に、ある日突然研修医の伊藤学(成田凌)が現れる。記憶がなく生きることにも希望を見いだせない名越は、伊藤の勧めにより期限7日間、報酬70万円を条件にある手術を受けることに。

その手術とは、トレパネーションといって第六感が芽生えるという頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術を受けた名越は、右目をつむって左目で見ると、人間が異様な形に見えるようになる。伊藤はその現象を「他人の深層心理が視覚化されて見えている」と言い、その異形をホムンクルスと名付けた。名越はその能力を用い、心の闇を抱える人たちと交流し、救っていく。

 

見どころなど

名越が交流する人々は子供の頃のトラウマを引きずったヤクザの男(内野聖陽)や、自傷行為を繰り返しながら売春する女子高生(石井杏奈)、のっぺらぼうの女性(岸井ゆきの)などである。ヤクザからはロボットや鎌、女子高生からは砂、そして名越を手術した研修医伊藤からは水や金魚といったホムンクルスが見えていた。

左目で見える世界は現実か、それとも虚構の世界かー? (C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

この現象は彼らは過去に経験した壮絶な出来事からのトラウマや深層心理が引き起こしているのである。そして名越が出会う岸田ゆきの演じる謎の女性の登場によって物語はさらに急展開へ。

名越がなぜ記憶を失ってしまったのか、伊藤がなぜ執拗にホムンクルスにこだわるのかー。

繊細な心理描写とミステリアスな世界観&スリル感を味わいながら物語が少しずつ明らかになってゆく過程や主人公名越の揺れ動く感情や混乱する頭(脳)の中、彼の記憶や心の闇が見られるところも見どころである。

また、「ヤクザと家族 The Family」に続き、常田大希が率いる音楽集団millennium paradeが劇中音楽とメインテーマを担当しており、音楽とともに特異な世界観が楽しめるのではないだろうか。

ヤクザ (C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

女子高生 (C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

謎の女
(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

左目から見える世界は現実か?それとも虚構か?(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

名越に手術を施した伊藤 (C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

 

レビュー

不気味なのにちょっとエモい

筆者は原作である漫画は読まずの鑑賞。普段はこういった類の作品は好みではないので観ないのだが綾野剛さんが好きなことと、予告編に興味をそそられて鑑賞した。

まずカメレオン俳優 綾野剛の凄みを今作でも実感したのは言うまでもないが、それ以上に成田凌の演技力には圧倒され、彼の驚異的なサイコっぷりには舌を巻く。良い意味で成田さんには期待を裏切られた。本作の中でもある時は真面目な研修医、ある時はパンクロッカー、ある時はオネエ系っぽく?一番謎に包まれた男が成田凌演じる伊藤であった。(▶減点ポイント 最後には伊藤の背景も描かれるが、その描き方も曖昧でもう少し深堀りして欲しいところではある)

本作のみどころの一つである成田凌の凄まじい演技力には圧倒される (C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

ミステリアスな世界観、人間の深層や裏の部分などを炙り出す作品には常に興味をそそられる。しかし本作を理解するには難易度が高く、きちんと理解するためには原作の漫画は必読かもしれない。もちろん原作を知らなくても楽しめることは楽しめるが一回で全てを理解できる人は多くはないはず。(▶減点ポイント 女子高生のエピソードは理解できず・・そしてあのシーンは強姦ではないかしら?)

また人によってはエグい・グロい描写も多いので要注意!

しかし『愛がなんだ』の主演の岸田ゆきのと成田凌の二人のシーンが少しだけ観れたことに、ちょっと嬉しかったり。

伏線からの回収は巧みではあるが、少し突っ込みどころも多かったりもして、2時間で詰め込むことの難しさを感じた。エンドロール後はお楽しみシーンがありますので席は立たぬように!

(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

ホムンクルス

監督:清水崇
脚本:内藤瑛亮 松久育紀 清水崇
原作:山本英夫
キャスト:シャイ・アビビ、ノアム・インベル
製作:2021年製作/115分/PG12/日本
配給:エイベックス・ピクチャーズ
文/ごとうまき