サシャと彼女に寄り添う家族の姿に心揺さぶられる
フランス北部、エーヌ県に住む少女と少女の家族の葛藤や奔走を、 幼少期のトランス・ アイデンティティの課題とともに捉えたドキュメンタリー。
身体は男性として生まれたが、 2歳を過ぎた頃から自分は女の子であると訴えてきたサシャ。 ワンピースやお人形遊びが大好きな彼女は学校やバレエ教室では 男の子として扱われ、 ありのままに学校生活を送ることができない。 例えば学校へスカートを穿いて通うことはNG、 バレエ教室では男の子の衣装を着用させられるといった周囲の無理 解と疎外感にサシャは苛まれる。また、 もっとも理解すべき教育者である学校の先生でさえサシャや彼女の 両親の声に耳を傾けようともしない。男子からは「女っぽい」 と言われ、女子からも仲間に入れてもらえない。そんな不寛容で閉鎖的な社会へ訴える7歳の少女とそんな彼女の心を理解し、彼女の幸せを願って奔走する母、 寄り添う家族達の姿を繊細かつありのままに捉えている。
監督のセバスチャン・リフシッツは、カンヌ、 ベルリンをはじめとした世界中の映画祭で高く評価され、本作『 リトル・ガール』 も2020年ベルリン国際映画祭をきっかけに様々な映画賞を獲得 し続けている。また、コロナ禍での劇場の封鎖されたフランスで、 同年12月にTV局ARTEにて放送されるや、視聴者数1, 375,000人、 その年のドキュメンタリーとしては最高視聴率(5.7%) を獲得。オンラインでは28万回以上の再生数を記録、大反響となった。このことからもトランスジェンダーの問題に世界中が注目していることがわかる。そしてこれまでの価値観や意識が変わることに希望が持てる。
幼少期でのトランスジェンダーの問題に切り込んだドキュメンタリ ーは珍しい。 7歳の子が性の違和感を抱え悩みながら葛藤する姿には胸が痛むと ともに、サシャを支える母や家族の姿にはジーンとくる。 特にサシャの病院へ兄を含めて家族で行くシーンが筆者はお気に入り。 お兄ちゃん、頼もしいね!
個人主義国でLGBTQなどにも比較的寛容だと思っていたフランス が固定観念でガチガチとは意外( 日本なんてもっと酷いんだろうな)。サシャのようなマイノリティ側の人を虐める人や脅す人、 心ないことで傷つける人々もいる一方で、 彼女に優しく寄り添う医師や友人もいる。 マイノリティの人たちに寛容になりもっと理解が深まるような社会にな れば、、、。本作がその手助けになる一本かと。
リトル・ガール
監督:セバスチャン・リフシッツ
製作:ミュリエル・メナール
キャスト:サシャ
製作:2020年製作/85分/G/フランス
配給:サンリスフィルム
原題:Petite fille
オフィシャルサイト:映画『リトル・ガール』オフィシャルサイト (senlisfilms.jp)
文/ごとうまき