【一周回って潔い!】いまの社会の生きづらさと懸命に生きる女たちの人間ドラマ『女たち』

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就職、転職、起業、結婚、出産、介護、友情、恋愛…ありとあらゆる呪縛に苦しめられる現代の女性たちがさらにコロナの下によって鮮明に浮き彫りになる生き辛さ。ここには苦しみながらも懸命に生きる、生きる意味を模索する女たちの魂の叫び、生き様が描かれている。

コロナ禍に撮影されたチームオクヤマ最新作

映画『ハチ公物語』(1987)、『ソナチネ』(1993)、『GONIN』(1995)と邦画斜陽期から攻撃的な姿勢で様々な色合いの映画を製作してきた、レジェンダリープロデューサー・奥山和由。現在もプロデューサーとして『エリカ38』『銃』『海辺の映画館-キネマの玉手箱』などを手掛けている。製作総指揮の奥山和由が女たちの生き様を描き出すのは映画『GONIN2』以来約 25 年ぶりとのことだ。監督には内田伸輝がメガフォンをとり、「共喰い」の篠原ゆき子、「3月のライオン」の倉科カナ、ベテラン女優の高畑淳子が顔をそろえる。

(C)「女たち」製作委員会

あらすじ

大学を卒業するも就職氷河期世代で希望する職にも就けず、結婚も出産も経験しないまま気づけば40歳を迎えていた主人公の美咲。数年前に父は自殺、今は体が不自由な年老いた毒母の介護によって美咲の精神はギリギリに追い詰められていた。そんな彼女の唯一の癒しが介護士として家を訪れる直樹との逢引きと幼馴染であり養蜂家の香織との時間だった。しかし直樹の手ひどい裏切りと香織の突然の死をきっかけにみるみるうちに負の連鎖が美咲に押し寄せるーー。

(C)「女たち」製作委員会

蜂蜜が女たちの心を一つにしていく。

本作の舞台の一つである‟養蜂場”、ここにはミツバチのように懸命に働き生き抜く女たちの生き様がある。「蜜蜂は害虫ではない」ーー殺虫剤で蜂を殺そうとした児童を押し倒した美咲は、蜜蜂を香織や自分自身と重ね合わせていたのではないのだろうか。香織の残した養蜂場、美咲が作る蜂蜜が壊れた親子関係や心を再生させていく。美咲演じる篠原ゆき子の演技じゃない演技、毒親を演じた高畑淳子の鬼気迫る演技に注目、彼女たちの役者魂に魅せられっぱなしの97分だった。

(C)「女たち」製作委員会

実際に居たらちょっと面倒な人間たち・・

本作を観ての率直な感想、筆者と本作に出てくる女性たちとは性格や性質が真逆のため、終始彼女たちに共感することはなかった。ちょっとメンヘラ?こんな女性が周りにいたら正直面倒くさいな~と感じるようなキャラクター達が勢ぞろい。「ここはもっと怒るべきでしょ」「ここは反論すべき、言い返そうよ」などと常に心の中で突っ込みが入り、むしろ歯痒さが残る感じだ。とは言え、世の中様々な人間がいるわけで、美咲のようにはっきりと自分の意見を主張できない、感情を貯めこんでしまう人も少なくはない。そんな人たちにとっては本作は共感できるし、何かしら琴線に触れるものがあるのだろう。

(C)「女たち」製作委員会

女たち

監督:内田伸輝
製作:奥山和由
プロデューサー:木谷真規
キャスト:篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ
製作:2021年製作/97分/G/日本
配給:シネメディア、チームオクヤマ

文/ごとうまき