【松阪ゆうき ロングインタビュー】「ジャンルにとらわれずに、音楽の素晴らしさを伝えていきたい」

松阪ゆうき
アーティスト

伸びのある声質で、“スーパーハイブリッドシンガー”と称され、民謡から演歌歌謡、オペラ、POPSと幅広いジャンルを歌いこなす松阪ゆうき 。2022年11月9日には、通算7作目のシングル『真実(ほんとう)の愛』をリリース。これまでの曲とは一味違ったドラマティックで壮大な世界観を味わえる曲となっている。本記事では、新曲のことやこれまでのことを訊き、彼の魅力を深掘りしたい。

『真実の愛』について

——作曲を浜圭介先生、作詞を石原信一先生が手掛けられた本作、初めに詞を読まれた時、どのように感じられましたか?

松阪さん
深い詞だと感じました。“真実の愛”と歌うサビの部分は2回繰り返しているんですが、実ははじめは1回のみだったんです。特に2番の歌詞“青春の夢を 夜更けに語り 朝焼けの空に 未来を投げた”では、自分の学生の頃の思い出が蘇ってきますね。レコーディング時に石原先生とお話させていただきましたが、この部分は石原先生の実体験に基づき描かれているんです。目には見えないけれど、いつも側で見守ってくれる人がいる。亡くなった方からの愛のメッセージを感じていただけるような歌詞となっています。大切な人を失うことはとても辛いですが、時間と共に、気持ちが落ち着いてきた頃にこの曲を聴いてもらえたら…。そういった人たちに寄り添えるような曲として届けたいです。

——曲も深みがあってスケールが大きいですね。

松阪さん
僕は大学時代は声楽科で学んできたこともあり、オーケストラっぽい曲が好きなんです。今作では弦楽器が多く使われていて、ドラマティックで壮大。僕もとても気に入っています。メッセージ性の強い曲で、伝えたい相手も明確なので、詞の世界観を伝えることと、大切な人を失った人に寄り添えるような歌い方を意識しています。

——カップリング曲の『おーい!しあわせくん』は『およげ!たいやきくん』を手掛けた佐瀬寿一先生が作曲されたのですね。

松阪さん
ハンモックに揺られてのんびりしているところで、“しあわせ”についてふと気づく…というイメージで歌っています。曲調は元気で可愛らしい感じなんですが、歌詞は、最近はしあわせを忘れている感じがする、だから僕のところにしあわせが来てほしいといった思いが書かれた曲です。曲は、演歌歌謡曲の世界観とは少し違います。老若男女 幅広い世代に口ずさんでもらえると嬉しいですね。

“スーパーハイブリッドシンガー”の足跡

——民謡から演歌・歌謡曲、オペラ、POPSと幅広く歌いこなす松阪さん、いつから歌手を目指されたのですか?

松阪さん
僕は子どもの頃から歌手に憧れていたというわけではなかったんです。だけど、民謡好きの祖父、演歌好きの祖母の影響もあり、昔から日本の音楽に触れたりと、歌うことは好きでした。実家の隣りに住む人が自宅にカラオケの機械を設置していて、週末は遊びに行って、一緒に歌ったりしていました。

——音大ご出身とのこと、音大に入学される頃に、歌手を志されたんですね。

松阪さん
実は高校生の頃に音楽の教師に憧れていました。大学進学で、教育学部か音大かで迷い、音大を目指そうと決意したのですが、僕は子供の頃から楽器も歌も習っていなくて…。小4で担任をしてくださった先生が音大卒で、その先生に相談したんです。“あなたは昔から歌が好きだったし、歌で受験したら?”と、歌の先生を紹介してもらいました。そこから2年半、週2〜3回の猛練習が始まりました。歌に、ピアノに、レッスン漬けの日々でした。当時通っていた高校では福祉科を専攻していたので、介護福祉士の資格を取得するため国家試験の勉強と大学受験が重なり、掛け持ちしていました。高三の時が人生で最も勉強をしていた時期ではないでしょうか(笑)。

そして無事、武蔵野音楽大学に入学、大学で歌う楽しさに目覚めたという。

松阪さん
大学に入った頃にはもう、歌うことが楽しくて楽しくて。大学で教員免許は取得しましたが、いつの間にか歌を仕事にしていきたいと強く思うようになりました。大学時代に門下生の旅行に行った時に、和田アキコさんの『あの鐘を鳴らすのはあなた』を歌ったんですが、大学の先生に“あなたはクラシックよりも日本の音楽を歌った方が向いている”と言われ、その言葉をきっかけに、民謡を勉強したいと思うようになりました。きっと子どもの頃に、祖父が民謡を聴いていたことも大きく影響していますね。

2012年より民謡歌手・原田 直之に師事、現在も原田氏の稽古に通い研鑽を積んでいる。

——そして2015年にデビュー。ミュージカル、民謡と、幅広く経験を積んでいらっしゃいますね。

松阪さん
原田先生に教えていただいたことから、NHKの民謡の番組などに出演させていただいています。これまでミュージカルなどにも出させていただき素晴らしい経験をさせていただきましたが、やっぱり、自分のオリジナルの曲を歌いたい、自分がこの世界で生きてきたという証を残したいという憧れがありました。今回7作目をリリースできること、大変嬉しく思っています。

──これまでの歩みが今の松阪さんに活かされていますね。幅広いジャンルの歌を歌われますが、歌うときはどのようにして切り替えていらっしゃるんですか?

松阪さん
民謡、クラシック、演歌など、自分の中にスイッチがあってその都度切り替えて歌っています。松阪ゆうきの歌を聴きに行けば、様々なジャンルの曲が聴ける!と思ってもらえるように、皆さんに楽しんでいただけるようにもなりたいですね。ただ、自分の中ではジャンルといった概念がありません。良いものは良い。ジャンルにとらわれずに音楽の良さを伝えていけたなら…。

——幅広いジャンルの曲が歌えるのは松阪さんの強みですよね。

松阪さん
そうでありたいですね。この間もラジオのパーソナリティーの水谷ひろしさんに“あなたは何でも歌えるから、一つに絞らずに様々な曲を歌ったらいいよ”というお言葉をいただきました。今後もいろんな歌を歌っていきたいですね。普段、演歌をあまり聴かれない方には演歌を、クラシックを聴かれない方にはクラシックを…それぞれ聴いていただき、興味を持っていただくきっかけになれば嬉しいです。

飛行機が大好きで月刊カラオケファンでも飛行機に関する「松阪ゆうきのエアボーイ」を連載中。「ご翔印」集めも始められたとか。

様々な経験を積んで、いろんな世界を見ることで歌にも深みが出る

——音楽教諭免許(中学、高校)、介護福祉士、エアライン検定(2級、3級)、温泉ソムリエなど、多趣味でいて、資格も沢山お持ちですね。

松阪さん
昔から好奇心旺盛な性格なのかもしれませんね。何もしないで家に閉じこもっていても、良い音楽は生まれない。いろんなことを経験することで、音楽や歌にも深みが出てくるのかなと思っているんです。今後もできるだけ外に出かけて、いろんな経験をしてみたいです。

——2023年に向けての抱負をお願いします。

松阪さん
まずは新曲『真実の愛』をもっと広く届けたい。歌謡曲というジャンルのファンの方だけでなく、いろんな人に聴いてもらいたいです。そして来年、ソロのコンサートもできたらいいなと思っています。自身が声楽科で学んできた経験を活かして、ゆくゆくはオーケストラと一緒にコンサートもしたい。関西だったら、大阪のフェスティバルホールなどで開催できたらいいですよね。その夢に近づけるように僕も頑張ります!

インタビュー・文・撮影/ごとうまき