あなたにとっての本当に大切な人を思い出させてくれる作品
恋は脳の錯覚、子孫を残すためのもの。その恋の魔法の効果は半年、長くても三年、そこからうまく愛に移行できればいいが、多くの場合の恋が愛に移行できずに枯れてゆく。愛とは○○だとかよく言うけど、果たして本当に愛の意味を知っている人はどのくらいいるのだろうか。巷に溢れる“愛”って実は上っ面の愛ばかりじゃない?
真実の愛を知らない男がパラレルワールドで知る“真実の愛”を描いたフランス映画が話題を呼んでいる。愛、友情、人間の愚かさと愛おしさを描いたラブコメディファンタジー。摩訶不思議なパラレルワールドが見せるもう一つの物語とはーー。
あらすじ
高校時代にひょんなことをきっかけに出会い一目ぼれから結婚したラファエルとオリヴィア。出会ってから10年、今や人気SF作家として多忙な毎日を送るラファエルと、小さなピアノ教室を運営するオリヴィアの夫婦生活はすれ違いが続き、二人の関係は倦怠期を迎えていた。
オリヴィアと大ゲンカをした翌朝、ラファエルは見覚えのない部屋で目を覚ます。そこは夫婦の立場が逆転した“もう1つの世界”で、ラファエルはしがない中学教師、そしてオリヴィアは人気ピアニストで、ラファエルのことを知らなかった。ラファエルは無事に元の世界に戻ることができるのだろうか。
監督に「あしたは最高のはじまり」のユーゴ・ジェラン監督、主人公ラファエルを「私の知らないわたしの素顔」「パリのどこかであなたと』のフランソワ・シビル、オリヴィアを「最後のマイ・ウェイ」のジョセフィーヌ・ジャピが演じる。
【レビュー】ラファエルの自己中ぶりをどうとらえるかによって評価が大きく分かれる作品。
いきなり超個人的な話になって申し訳ないが、以前夫と喧嘩した時に『君はいつも自分のことしか考えていない。少しくらいは俺をきちんと見てくれ。支えてくれよ。』と言われた言葉が頭をよぎった。本作の評価の分かれ目は主人公ラファエルを観た人がどう感じるかだ。ラファエルと自分自身が重なるところがあったりで、いやはや、筆者にとってはなんとも耳の痛い話である。
多くのカップル、夫婦が陥りがちな“慣れ”。
10年以上も、付き合った頃のラブラブな気持ちを持ち続けることは脳科学的観点から見ても不可能であると言われている。それをどのようにして関係性を継続するか、もう一度同じ人に恋をするか、愛し続けるか…。これは相当意識して、互いの努力が必要だ。
長年連れ添った夫婦、付き合いの長いカップル、または友人、親、子供など、愛しているけど“居て当たり前”あるいはまるで“自分の身体の一部、生活の一部”になっていないだろうか。だからラファエルのような おざなりな態度やいい加減な対応になりがちになる。本作はそんな人たちに対してのある種戒めのようなメッセージ性を発している。
別世界に行ってまで“自分中心”だったラファエル。そう、妻だったオリヴィアをまるで私物化していたようにも感じる。だけど最後の最後で“真実の愛”を知るんだけど、いかんせん、人間ってのは愚かなもので本当の愛の領域に達するには相当の訓練と修業が必要なんだな。
それにしてもラファエルの親友フェリックス(バジャマン・ラベルネ)が最高だった。彼が本作のスパイスとなり、二人の友情にはグッとくるものがあった。現在も緊急事態宣言の中で上映館が少ないのがとても残念ではあるが、緊急事態宣言が明けたらぜひ見てほしい全力でオススメしたい一本だ。
ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから
文/ごとうまき