【落語×ラジオ】Clubhouse寄席からリアルイベントが実現!「生クラブハウス寄席」

(左から) 笑福亭笑利、樋口大喜、桂紋四郎、桂九ノ一
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音声SNSのClubhouse内で開催されていた「Clubhouse寄席」からのリアルな寄席「生クラブハウス寄席」が3月11日に大阪・天満天神繁昌亭で開催された。本公演は3月17日には東京・お江戸両国亭で開催される。

大入り満員だった大阪 天満天神繁昌亭で行われた「生クラブハウス寄席」

Clubhouse寄席は1月30日から10日間連続で開催されたシーズン1と(シーズン1の記事はこちら)2月から週2回、毎回ゲストを呼んで新たなClubhouse寄席の形としてスタートしたシーズン2に分けて、約1ヶ月間にわたり開催された。

当初からClubhouse寄席のゴールは「生の寄席に来てもらうこと」を目標としていて、その目標はあっという間に実現、両公演ともにチケットは完売である。今回は3月11日に大阪の上方落語の聖地である天満天神繁昌亭で行われ大盛況だった「生クラブハウス寄席」の様子をレポート、さらにメンバーである桂紋四郎、笑福亭笑利、桂九ノ一、FM802DJの樋口大喜たちに開演前の心境、「Clubhouse寄席」について改めて振り返ってもらった。

開演前のメンバーを取材!

ーー開演1時間前ですが、今のお気持ちは?

紋四郎さん
正直、寝れてないんですよ。昨日Clubhouse内で前夜祭をやっていて、テンション上がりすぎて、明日どうなるかなーって。眠れなかったんですよ〜。さっきオープニングのリハをしていてこれは楽しいだろうなと、ちょっとワクワク感もあって楽しみにしています。

ーーこのメンバーでの寄席は初めてとのことですが・・

笑利さん
紋四郎兄さんも、九ノ一さんも何回か一緒になったことはありますけど、みんなで集まるのは初めて。今回は形が新しいし、生の寄席が初めての人が多いので、そういった人達に楽しんでもらえるだろうか?といった緊張がありますね。でもClubhouse寄席でずっとやってきたことを生で見てもらうことが実現できて嬉しい。生じゃないと感じ取れないことが多いかなと思っていて、空気感も含めて感じてもらえたら。雀太兄さんもおっしゃってたように、これまでの答え合わせをしてほしいですね。

※シーズン1でのメンバーであった桂雀太さんはシーズン2からは一旦お休み中。

紋四郎さん
繁昌亭ってホーム感があるから、普段は緊張しないんですよね。でも今日は違う繁昌亭です。(樋口さんを見ながら)なんかFM声するしね(笑)

《ーーみんな笑う》

樋口さん
このメンバーでリアルで会うのって5回ないくらいで、LINEは毎日していますし、LINE電話での打ち合わせやClubhouseのクローズでの打ち合わせとかはしょっちゅうしてます。

紋四郎さん
樋口さんどっちかというとイラストのイメージ強いから(笑)声だけ独り歩きしていますよね。目瞑って喋って聞いてた方がいい(笑)

お馴染みの樋口さんのアイコン

ーーClubhouse寄席のモデレーターを務める樋口さんのMC力にはお見事としか言いようがなく。そんな樋口さんがこの経験を通して、本業であるラジオ DJの仕事にどう活かされていますか?

樋口さん
活かされた点としては二つあってClubhouse寄席を聴いて、ラジオに興味を持った人、つまり音声メディアに興味を持たれた人がラジオを聴いてみようと思ったという人がいるのが一つの成果。

もう一つの点は、ラジオもClubhouseも「みんなで作っていこう」というものであることを実感して。

Clubhouseから公式LINEを作ってくださった人、ロゴを作ってくださった人もいて、皆さんの自主性で成り立っているんですよね。

今後グッズ展開もしていきますが、そこにも『協力させてください』という声をいただいたりして。それで成り立っているんですよ。ラジオも、皆さんからいただくメッセージやリクエストで構成されていく。そこが共通点かな、って。

 

生クラブハウス寄席の「落語とラジオの融合」をコンセプトに、オープニングトークでは軽快な音楽とともに噺家たちと樋口さんが登場。日頃、表打ちに慣れている噺家の裏拍で手拍子しながら登場するシーンは新鮮かつ滑稽で、幕が開けるが否や会場は一気に盛り上がりを見せた。

 

Clubhouse寄席を通して見えた新たな発見

桂九ノ一さんは、Clubhouse寄席をきっかけに大きな気付きを得て、それが生の寄席に活きていると話す。

九ノ一さん
例えば台詞の言い回し、台詞が本当は大事だったんだと言葉だけのメディアにすることにより改めて大切になってきました。

音声だけだと上下(かみしも)がない状態で落語を伝えることになるのですが、それって一つハードルが高くなり、それに対する人物の表現の割合が生のものよりもClubhouseの方が大きくなるんです。その割合を大きくしたまま生の寄席に出ると案外、成功したりするんですよね。テクニック的なことで言うと、今まで気が付いてこなかったものに対して光が当たるというか。なので今日の生クラブハウス寄席では今まで音だけで聴いている人が多かったので、手の動きを見てもらえるように丁寧にしてみようかなと。所作的には僕たちもレベルがアップするので。

メンバー同士の印象の変化

ーーこの1ヶ月間弱でメンバーの絆は強まったはず。メンバーの初めの印象から今に至るまで、どのように変化しましたか?

紋四郎さん
九ノ一さんは随分と後輩になるんですが、今まで後輩と思っていたのが今では「仲間」です!

《皆大笑い》

今度独演会があって九ノ一さんには開口一番で出ていただくんですが、”ゲスト”って書き直そうって思っています。(笑)

九ノ一さん
せめて仲間って書いて下さいよ(笑)僕は後輩として、こうやって先輩の中に入らせてもらって、この1ヶ月間でお兄さん方と距離が縮まったと実感しています。ちょっと生活の部分が見えたり、信頼できる関係性が築けた気がして嬉しいんです。

リアルで会うのが5回目とは思えないほど、取材中も息がぴったりの4人。

笑利さん
『なるほどなぁ〜』って言葉を一番放った1ヶ月間だったなって。皆さんから色々と勉強させてもらいましたね。戦略的な部分やスピード感も含めて。

樋口さん
確かに、このスピード感とエネルギーは皆さんから感じている点で、10日連続でシーズン1をしましたが、あの時はこれで終わらせようとしていて。ただ、形を変えたら出来るんじゃないか?ということでシーズン2に移行した。「スラップアンドビルド」の名に相応しい1ヶ月でしたね。

Clubhouse寄席 の”シーズン2”はまるで思春期のような感じ!?

ーーシーズン1とシーズン2、それぞれの会の雰囲気やリスナーの違い、メンバーの心境の変化は?

紋四郎さん
シーズン2は落語ファンが半分くらい聴いてくださっているという風に、本来の寄席の形に近くなって来たなと実感しています。

シーズン1は落語が初めてだという人が多かったのですが、シーズン2になると元々の落語ファンの方も来てくださるようになって、落語ファンと落語が初めての人が融合する形になってきましたね。

樋口さん
シーズン1ではドキドキとワクワクの勢いでできていたけど、シーズン2になってからしっかり打ちに行かないと(ここで勝負をかけないと)逃してしまうのではないかという恐怖心もありました。

《「めっちゃ分かるー」と全員が声を上げる。》

九ノ一さん
芸の部分で言うと、シーズン2はゲストの方が毎回来てくださって、僕達も刺激になりましたね。江戸の落語家さんもいらっしゃったので相乗効果もあった。

樋口さん
シーズン2で一度、演目としては面白かったんですが、何か違和感があった時があったんですよ。終わった後すぐにLINEで反省会が始まって、皆も同じことを思っていて。届いてなかったと言うか…

紋四郎さん
そうそう、”会”として滑ったなって。

樋口さん
「我々もしっかりしなくては」という反面、”浮つき”もあったんじゃないかと。「きちんとしたエンタメを届けたい」と思ってやっていたけど、このClubhouseの空気というものに飲まれてしまった。

笑利さん
確かに熱でやっていた部分があった。思春期みたいな感じ(笑)あ、今は思春期を通り越して大人になりました。

 

繁昌亭で行われた生クラブハウス寄席は、先述したようにオープニングトークから始まり、表情豊かな桂九ノ一さんは、生の寄席だからこそ伝わりやすいネタの一つである「時うどん」を披露した。ゲストの桂三幸さんの観客が一緒になってより楽しめるネタ「ラスト一球」により会場の盛り上がりはヒートアップ。紙切りや手ぬぐいをプロデュースしたりと、アーティスティックな一面も併せ持つ笑福亭笑利さんは得意の歴史落語を創作した「千鳥の香炉」を力演、会場の空気はさらに盛り上がりを見せこのまま一気にトリの桂紋四郎さんへ。透明感ある声と軽妙な語り口で「親子茶屋」を見事に熱演し、最後はお馴染みの「Clubhouse締め」で大盛況となり、幕が下りた。

クラブハウス締めではゲストの桂三幸さん(写真中央)も参加

落語の可能性は無限である

 まずは、形にとらわれずに動いてみること

ーー恥ずかしながら、私は落語の事をあまり知らなかったんですが、Clubhouse寄席が落語を知らなかった私のような人たちにきっかけを与えてくれた。より多くの人に落語を知ってもらうために、皆さんは常にチャレンジされている。落語ってまだまだ多くの可能性が眠っているんですね。

紋四郎さん
ずっと悩み続けること、試行錯誤して動き続けること、その悩みがお客さんに来てもらう(惹きつける)ことに繋がるのかなと思っています。

我々が何かあったら知ってもらおう、何かあれば知ってもらおうと、そのように繰り返していると落語はずっと続いていくと思っているんです。Clubhouse寄席もその一つかなって。

樋口さん
ラジオだって同じですよね。形に囚われないことが大事で。形をどうにか変えていこうとする落語家さんたちのエネルギーが凄まじいって見ていて感じます。

明け方、Clubhouseのroomでメンバーが集まり偶然に始まった「Clubhouse寄席」は落語家たちの「落語を知ってもらいたい」「生の寄席に来てもらいたい」といった熱い想いがリスナー達に届き、落語を知らなかった多くの人たちまでも魅了した。

大阪での生クラブハウス寄席では筆者のように「Clubhouse寄席」をきっかけに初めて生の寄席に訪れたといった人々も少なくなかった。

KANSAI PRESS編集部が感じた“答え”

『生の寄席に来て答え合わせをしてほしいんです』前回取材した桂雀太さん、メンバー皆が言う『答え合わせ』、筆者なりの「ClubHouse寄席」と「生クラブハウス寄席」の“答え”を言うのであれば

『生で観る落語は、聴く落語の何倍も面白い』である。

あれこれ考えるよりも、まずは寄席へ行ってみるべきだ、と。「笑い」がもたらす幸福感に満ちたエネルギー、さらに演者と観客が一体化して生まれる会場の空気感と臨場感。これはいくらデジタルが進もうがリアルな体験でしか味わえない特別なものである。

そしてこんな面白いものを知らなかったことに対しての悔しさ、日本の伝統芸能を知ろうともしなかった自分の教養のなさに羞しさを覚えたりして・・・。偶然入ったroomで出会ったClubhouse寄席、取材を通して感じたメンバーの皆さんの熱い想いや行動力には、ただただ感服するばかりである。

大阪から全国へ 「紅楽葉寄席(くらは よせ」

落語会に新しい風を巻き起こした「Clubhouse寄席」は、新たなステージで、『紅楽葉寄席(くらは よせ』として全国行脚するとのこと。生の寄席+その前後にClubhouse上でのクラブハウス寄席を開き、感想会などをセットにするというリアルイベントである。詳細はLINE公式「Clubhouse」に登録、気軽にお問い合わせくださいとのことだ。

桂雀太:clubhouse・・@jakutta、桂雀太さん (@jakutta) / Twitter
笑福亭笑利:clubhouse・・@shofukuteishori、笑福亭笑利さん (@yntsgr) / Twitter
桂九ノ一:clubhouse・・@katsura9_1 、 桂 九ノ一さん (@katsura9_1) / Twitter
樋口大喜:clubhouse・・@itsdaikyhiguchi、 樋 口 大 喜 (び!!)さん (@ItsDaikyHiguchi) / Twitter
取材・文/ごとうまき