【インタビュー】「沼に落ちるタイプです」岡本幸太が明かす、新曲誕生秘話

インタビュー

広島から上京し、ガイドボーカルやバックコーラスで約3,000曲以上を担当してきた実力派シンガー・岡本幸太。メジャーデビュー3年目となる2025年9月、待望の3枚目のシングル「永遠の沼に堕ちたマリオネット」をリリースした。

今作で作詞を担当したのは、純烈のリーダーとして知られる酒井一圭。サビから始まるキャッチーなメロディとリズミカルな言葉が印象的な、直球型求愛型ラブソングだ。エキゾチックなアレンジに彩られた楽曲は、岡本幸太の新たな魅力を引き出している。カップリング曲では沢田研二をイメージした歌唱に挑戦。新曲やデビュー3年目の心境を語ってもらった。

「永遠の沼」で魅せる新たな色

——3枚目のシングル「永遠の沼に堕ちたマリオネット」が9月10日にリリースされました。今回は純烈のリーダー・酒井一圭さんが作詞を担当されたそうですね。

岡本
そうなんです。きっかけは、僕のボイストレーナーである向井浩二先生が純烈さんのボイストレーニングも担当されていて、酒井さんにお願いしようという話になった時に、向井先生から酒井さんに声をかけてくださり、快諾していただきました。

—— 詞を初めてご覧になった時の印象は?

岡本
正直、酒井さんがどんな感じで書いてくださるのかなとドキドキしていたんですが、出来上がった詞を見て驚きました。繊細で、いろんな風景や景色が浮かんでくる。本当に素敵だなと思いましたね。

——酒井さんとは以前からのお知り合いだったのですか?

岡本
実は、テレビ番組でちょっとご一緒したことがあるんですが、多分酒井さんは覚えていらっしゃらないと思います(笑)。

——レコーディングはいかがでしたか?

岡本
酒井さんは他の歌手の方へも楽曲を提供されていましたが、レコーディングに立ち会うのは今回が初めてだとおっしゃっていて。「純烈のレコーディングとは違う」と言いながらも、たくさんのアドバイスを下さいました。本当にアイディアが豊富な方で、「ここをもう少し抜いた表現にしたらどうか」とか「力が入りすぎてるんじゃないか」とか、細かく指導していただきながら進めることができました。

——実際にお話をされて、酒井さんの印象は?

岡本
純烈さんがスター街道を歩まれている背景には、やはり酒井さんのリーダーシップがあるんだなと実感しました。いろんな発想が常に溢れてきている方で、頭の中で同時にいろんなことを進めているんじゃないかという凄みを感じましたね。

——特に印象に残っている言葉はありますか?

岡本
レコーディング後にテレビでご一緒させてもらう機会があったんですが、その時のリハーサルで「それじゃあかんで、もっと行かなあかんで」と言われたんです。その言葉がすごく響いて。もっと踏み込んで、グイグイ前に出る姿勢を求められているんだなと。その言葉は今も自分の中にずっしり残っています。

サビから始まるキャッチーなメロディの魅力

——この楽曲、サビから始まるキャッチーな構成ですね。歌う上で特に意識されている部分は?

岡本
一番難しいのが、イントロ後のサビの入りなんです。小さなイントロがあって、その音が消えてから「ワン、ツー」で「愛!愛!」と入るんですが、合図がないので集中が必要で。ありがたいことなのですが、お客さんの歓声や声援があると入り口の音が聞こえなくなることもあって、それがまた難しさを増しています(笑)。歌詞の「愛!愛!」「Don!Don!」「Kyun!Kyun!」といったリズムの決めどころは、だらけないように気をつけています。一方で、Bメロの「足りない 愛が足りない こぼれ落ちた」という部分は流れるように歌う。このメリハリを意識して歌っていますね。

——「永遠の沼に堕ちたマリオネット」というタイトルも印象的です。

岡本
酒井さん的には、「永遠の沼」というのは「岡本幸太の沼」で、「マリオネット」は僕の歌を聴いてくださる皆さんのことを指しているんだそうです。発想が面白いですよね。

——岡本さん自身が沼にハマるものは?

岡本
いまラッコの沼にハマっています(笑)。あと、最近温泉の良さに気づいてしまって。大浴場での開放感。この年になってその良さに目覚めました。

向井浩二による作曲と猪股義周によるアレンジ

——全楽曲の作曲を担当されている向井先生とのタッグも3作目ですね。

岡本
はい、向井先生には本当にお世話になっています。そして今回、猪股先生のアレンジがまた素晴らしくて。レコーディングで初めて音が出た時の衝撃は忘れられません。このメロディと歌詞から想像していたものとは全然違う方向に行って、すごく新鮮でした。

—— インドや中東を思わせるエキゾチックな雰囲気。ミュージックビデオもゴージャスな雰囲気ですね。

岡本
王宮のようなセットで、プリンス風の衣装で撮影しました。1つのスタジオでいろんな壁やシチュエーションを使って撮影したんですが、スタッフのみなさんのおかげでかっこいい感じに仕上げていただいて。印象的だったのは、テーブルの上に立って歌うシーンです。それほど幅もないテーブルの上で振り付けもやらなきゃいけなくて、落ちるんじゃないかとドキドキしながら撮影しました(笑)。あと、虹色のフィルムをスタッフさんが投げて、その中を歩くシーンも。出来上がりを見ると自然に見えますが、人工的に作っているんだと思うと面白かったですね。

カップリング楽曲に込められた想い

——タイプAのカップリング曲「君よ幸せであれ」は、また雰囲気が違いますね。

岡本
この曲、僕は大好きなんです。大好きな人がいるけれど別れるという内容で、「また会える二人でいよう さよならは言わない」とサビで歌っているんですが、おそらく会えないんじゃないかという切ない楽曲です。面白いのは、サビまではマイナーキーで進んでいて、サビでメジャーキーに変わるんです。哀愁のある雰囲気から急に明るくなる。まるで鳩が飛び立つような感じで、その明るさがより切なく聞こえる作品になっています。

—— レコーディングで苦労されたところは?

岡本
向井先生から「サビをもっと明るく」と言われたんです。そのまま歌うと悲しいバラードに聞こえてしまうと。別れの歌なのに明るく歌うというのは難しくて、かなり苦労しました。

——タイプBのカップリング「OH!ジェニー」は昭和の香りがしますね。

岡本
気だるい雰囲気を意識して、リスペクトしている沢田研二さんをイメージしながら歌いました。ファンの皆さんからは「ジェニーがいい」という声も多くて、この曲を好きだと言ってくださる方が結構いらっしゃいます。

デビュー3年目、変化と成長

——メジャーデビューから約3年が経ちますが、心境の変化は?

岡本
少し余裕が出てきたというか、楽しめるようになってきました。もちろんトークが上手になったわけでもないし、よく噛むし(笑)、その辺は変わっていませんが、心の落ち着きは前より出てきたかなと。誰かの前に立って歌う機会がすごく増えて、それは望んでいたことなので嬉しいんですが、体調管理の大変さも感じるようになりました。体調が万全じゃない時でもステージを空けられない時もあるので体調管理は特に大事にしないといけませんね。

——体調管理で気をつけていることは?

岡本
乳酸菌飲料を飲んだり、R1のドリンクを飲んだりしています。本当はもっと睡眠をとった方がいいんでしょうけど、ついつい夜更かししてしまう夜型人間なんです(笑)。食生活ももう少し見直さないといけないなと思っています。

——今後の目標は?

岡本
47都道府県すべてに足を踏み入れて、その地の人たちに歌を聴いてもらいたいという思いがあります。少しずつ知ってくださる方が増えているのは、その地に行かせてもらっているからこそだと思うんです。生の岡本幸太を見て、好きになっていただきたいです。

——最後に、「永遠の沼に堕ちたマリオネット」の歌詞を引用しながら、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

岡本
いつも応援いただき、本当にありがとうございます。皆さんに支えていただいている一方で、僕も皆さんから元気をもらっています。辛い時には、僕の歌が皆さんの「悲しみからよける傘」になれたらと思っています。そして、この岡本幸太という深い深い沼にハマってくださった皆さん、ここが本当に素晴らしいところだ、楽しいところだと思ってもらえるように頑張っていきます。もっともっと甘い渦に一緒に溶けていきましょう。ぜひとも、永遠の沼に堕ちてください!(笑)

インタビュー・文・撮影:ごとうまき