【山内惠介ロングインタビュー】演歌歌手というジャンルにとらわれず、挑戦し続けたい。

アーティスト
演歌界の貴公子としての第一線を走り続ける山内惠介の新曲「紅の蝶」が2024年2月28日に発売された。今作は、前作「こころ万華鏡」に続き作詞を松井五郎、作曲を松村崇継が手がけた“JAZZY演歌”。また、新たな山内惠介を感じられる一曲となっている。愛盤、祭盤、虹盤にはそれぞれ違ったジャンルのカップリングが収録され、唄盤には「紅の蝶」のミュージックビデオのDVDが付属。
関西プレスには約2年ぶりの登場となる山内さん。新曲やカップリング曲、コンサートへの思い、そして25周年に向けての今の気持ち、プライベートについてなど……沢山語っていただきました。昨年40歳を迎えて、ますます大人の魅力と艶っぽさを放つ山内さん。話し上手でユーモア溢れる一面も垣間見れたインタビューとなりました。

山内惠介らしさが表現された艶歌

── 「紅の蝶」を最初に聴いた時の印象を教えて下さい。
山内
この曲はメロディーが先で、“懐かしいな”というのが最初の印象です。「異邦人」や「黄砂に吹かれて」などの異国を感じさせるような部分もあって。村松先生は僕の好きな曲をよくご存知なんだと感動しました。好きなものは早く覚えようとするので、急いで持って帰って1日2日で覚えました。
山内
それに、この曲は自分の良さをたっぷりと出せるんです。例えば“ひとの思いは 行ったり来たり”の部分を聞いた時、自分の声が聞こえました。譜面に書いていなくても、節を入れて繋げていく。こういった部分で女性の“艶”を表現できればと思っています。
── 前作「こころ万華鏡」同様、女性のコーラスも印象的です。
山内
どちらもテーマは“祭り”なんです。日本も世界もいろんなことが起きていますが、祭りの時は皆がそういったことを忘れて一つになれる。山内惠介の歌で盛り上げたい!この歌で皆の心も一つになってもらえたら……。そんな思いが「こころ万華鏡」「紅の蝶」に込められています。「こころ万華鏡」が人生の応援歌であれば、「紅の蝶」は女性(男性)の恋の応援歌となっています。
山内
そして、映画音楽を主に手掛けておられる先生が山内惠介で表現してくださっている。僕も演歌歌謡界で培ってきたものを村松先生のメロディーと松井先生の詞で表現する。この歌が今の僕の集大成となっています。

祭盤、愛盤、虹盤にはそれぞれ違った山内の魅力が

── 祭盤の「祭りだホイ!」は、とてもダンサブルな曲。阿波踊りなどをイメージしているのでしょうか。
山内
沖縄のエッセンスや阿波踊りなどをふんだんに盛り込んでの良い所取り。体力もとても使います。一層のこと、フンドシで歌った方がいいんじゃないかと思うくらい(笑)。もっと自分を曝け出し、殻を破るように歌いたい作品です。
── 売野雅勇先生作詞、伊秩弘将先生作曲の 「あなたを想うたび涙が止まらない」も山内さんの魅力を存分に堪能できる作品ですね。
山内
このラブソングによって、僕の幅を広げていただきました。この曲では、演歌独特の小節をいれないよう意識して歌いました。これまではどこか自分は演歌歌手だからと決めつけて“小節が回ってもいい、これが自分の表現方法だ”と思っていました。ですが、この楽曲では必要ないし、その方がメッセージがストレートに響くのだと思うのです。
── 虹盤に収録されている「傘」は、もりちよこ先生の作詞ですが、とても心に響きます。
山内
この曲では演歌の節を取り入れることで、山内惠介らしい“傘”になれるんじゃないかと思っています。スケールを大きく歌うことで景色が浮かび上がるので、その点も意識しています。もり先生は兵庫県ご出身。この歌詞は、阪神淡路大震災での心温まる物語から生まれました。そして、この歌の詞は良いことしかもたらさないと思っています。“僕1人の力だ!”なんて思ったらそこで終わり。自分1人でも良いことをする、その優しさをもらった人がまた違う人に優しさを与える……。その優しさが3人、4人と広がり、時間をかけて、1000人、何万人と広がっていくんです。良心は無限大。それを“傘”というタイトルで表現されるもり先生は凄い方ですね。
── まさに、今の世の中にこそこういった歌が必要なんですよね。
山内
そうです。そしてこのような時代がこの歌を生んだのだと思います。戦争、コロナ、地震……いろいろとありますが、これからもこのようなことは起こる可能性はあります。だけど人間って忘れてしまうし、忘れないと前に歩いていけません。
山内
僕はいつも“平和ボケ”してはいけないと思っています。“もしかして今日が最後じゃないか── 。” そういった気持ちでいつもステージに立っていますし、悔いが残らないように、ベストを尽くす気持ちで毎回臨んでいます。そういった気持ちはコロナ禍によってより強くなりましたが、それ以前から同じ気持ちです。コンサートをやることの大変さを知ってから、この時間を大事にしたいと、いつも思っています。

コンサートは幕が開く前から始まっている。

── 山内惠介コンサートツアー2024 〜舞い上がれ紅の蝶〜が始まっていますが、コンサートへの向き合い方はどのように変化していますか?
山内
選曲や舞台のセット、衣裳など、いい意味でこだわるようになりました。積極的に自分も関わり、それを形にしていくことが楽しい。コンサートは幕が開く前から始まっていますよね。例えば今日は雨が降っているな、お天気がいいな、とか。緞帳が開く前は、客席のお客さまのお顔や気持ちを想って僕も立っています。常にお客さまの目線でステージを見るように心がけています。お客さまと同じ景色を見て、時間を共有できる。これがコンサートの醍醐味だと思っています。
── コンサートツアー2024 〜舞い上がれ紅の蝶〜の見どころは?
山内
カバー曲を毎回歌わせていただいていますが、今回は初めて松山千春さんの楽曲に挑戦しています。そして紅の蝶がどのようにステージを魅せるか!衣裳も!楽しみにしていてくださいね。
── 山内さんはこれまでにもいろんなカバー曲を歌っておられますよね。公式YouTubeにアップされているスキマスイッチの「奏」も新鮮でした。
山内
この歌は意外と小節が回っているんですよ。演歌では普段しないような回し方など、大変勉強になりました。クラシックの先生に楽曲を書いていただいているので、いつか交響楽団の演奏をバックに歌ってみたいと思っていましたが、6月は東京芸術劇場で、7月は大阪のフェスティバルホールでその夢が叶います!もちろんここでも“この衣裳いいっしょ”って言うつもりです(笑)。

── 山内さんは毎日とてもお忙しいと思いますが、リフレッシュ方法は?
山内
料理です!昆布などの出汁からとって、塩分控えめに、素材の味をしっかり出すように心がけてます。いろんな料理を作りますが、中でも肉じゃがは月に3回ぐらい作っています。“なんでこんなに肉じゃがが好きなのか”と考えたとき、僕は作る工程が好きなんだと気づきました。ジャガイモや人参、こんにゃくの下処理など、一つ一つの工程をきちんとすることで心が整う。その時だけは歌のことを忘れて無心で作っています。最近は発酵食品や常備菜も取り入れるようになりました。バランスよく少しずつ食べることで体も喜んでいます。

隙のない歌を作り上げることが今後の目標。

── 来年で25周年を迎えられますが、そこに向けて様々なチャレンジをされておられるのですね。
山内
来年で25周年。あっという間ですから、そこまでどう過ごしていくかが大事だと思っています。周年を迎えてから新しいことを始めても、それは別モノ。23年、24年と山内惠介しかできないジャンルをお届けすることで、25年に繋がると信じています。そして、演歌歌手という枠を取り払って、新たな楽曲にも挑戦していきたいです。懐メロなどを歌うときは、新鮮ですし、すごくドキドキするんですよ。「こころ万華鏡」や「紅の蝶」で培ったものをお返しする。どちらも難しいんです。簡単な歌なんて一つもありません。
── 挑戦という意味ではTVアニメ『はなかっぱ』のエンディング曲「イチカバチカ」も大きな挑戦となりましたよね。
山内
はい、あの歌によって何か大きなものを掴みました。作詞のもりちよこ先生と作曲の伊秩弘将先生とご一緒したとき、伊秩先生から“演歌歌手ならではの歌い方をしないように”と、ご指導いただきました。この歌い方は「あなたを想うたび涙が止まらない」にも生かされています。
── 40歳という節目の年に「こころ万華鏡」を発売され、それを機に、水森英夫先生以外の作家の先生方の楽曲にも挑戦しておられますが、心境の変化や気づきはありましたか?
山内
ゼロからきちんと作っていく──。そういった気持ちはより強くなりました。これまではメロディーを覚えて、表情をつけて、水森先生のアドバイスがあれば歌は出来上がるものだと思っていました。これまで沢山アドバイスをいただいたお陰で自然と引き出しが広がっています。だけどこれからは、自分が歌を作り上げていくということが大事です。自分の歌をよく聴いて、自分を信じて、自分の気持ちに正直であり続けたい。大きい挑戦ばかりだと大変ですが、小さいことでもいいので挑戦していきたいし、そこに気付ける自分であり続けたいです。
インタビュー・文・撮影:ごとうまき