【独占インタビュー】反骨の二刀流経営者、大津雄一が描く「ダンボール ×サウナ」の西日本戦略(前編)

インタビュー

大阪を拠点にダンボール製造業を牽引する大陽紙業株式会社 常務取締役 統括部長。そして、熊本城サウナ「城の湯」を運営するゴールドアゲイン株式会社 代表取締役社長の大津雄一氏は、メーカーとサービス業、西日本二拠点を股にかける異色の「二刀流経営者」として、今、大きな注目を集めています。彼の経営哲学の根底にあるのは、「世間の常識や軽視を打ち破る反骨精神」。この強烈な原動力が、なぜ「ダンボール × サウナ」という異質な掛け算を生み出し、西日本を舞台にした壮大なビジョンへと繋がっているのか。そのルーツと戦略に深く迫ります。

反骨のルーツと、二天一流の経営哲学

—— 大津さんの事業の原動力は、「価値あるものが正しく評価されるべきだ」という強い信念にあると伺いました。そのルーツについて、改めてお聞かせください。

大津
私は大阪・寝屋川で育ちましたが、父が商売をしていたこともあり、幼い頃から「いつか自分で起業し、商売をする」という目標が漠然とありました。その根底にあるのが、父から教わった「ナイキのTシャツ」の話です。1秒で書けるロゴがあるかないかで、0の桁が一つ変わる。モノそのもの価値ではなく、「ブランド」や「世間の評価」で価値が決まるという面白さと事実を学びました。この時から「価値を正しく認めさせたい」という、強い反骨心と決意が芽生えたのだと思います。小学生、中学生時代は活発な子どもでしたが客観的に見ても浮いていました。スポーツも勉強も出来ませんでしたが、話すことやクリエイティブな能力やセンスは突飛していたと思います。群れない一匹狼タイプの人間だったので高校時代から漠然と「会社員には向いていない」と思っていました。

—— そして同志社大学に進学されてから、音楽と格闘技に打ち込み、また10個ほどのアルバイトを経験されたそうですね。これらの経験は、後の経営にどのような影響を与えましたか?

大津
大学時代は、格闘技と音楽活動に没頭しました。積み重ねた日々のインプットを人前でアウトプットする事が、私の経験としての財産になりました。当たりも外れも勝ちも負けもありましたが、自分事として「言い訳出来ず」「勝負し」「結果を受け止める」事で強い精神性を鍛えてくれました。

—— 先斗町のBARでの経験は、今でも忘れられない理不尽さだったと。

大津
 はい。納得のいかない待遇にキレて辞めてしまったのですが、その時の経験から、「社会の不条理を許せない、変えたい」という怒りとフラストレーションが、転化され私の「不満を行動に移すエネルギー」としての原動力になっています。ちなみに、クビになったバイトもありますし、スーパー銭湯の面接で落ちたことも。そんな私が今ではサウナを運営している。人生って何があるか分かりませんよね。

—— 会社員にはならない決意があったにもかかわらず、上場企業で6年間を過ごされています。この20代の経験は、大津さんにとってどのような意味を持ったのでしょうか。

大津
商売をする上で、情熱や反骨心だけでは勝てません。一度、社会の「型」と世の中を学ぶ必要があると考えました。自分の価値観や世界観の幅を広げるために、あえて1番興味のなかったフォークリフトの会社を選びました。また、自分の好きな事を仕事にする為に、半年休学半年留年したのですが、自分の才能と努力では厳しいと感じ、スパッと就職の道を選びました。「良い大学に行って良い会社にいく」日本では成功と言われる定番のロールモデルも経験しないと、今後何をするにも説得力がないと感じたからです。半年で辞めるつもりでしたが、ここで出会った2人の恩師にプロの仕事とは何かを身をもって学ばされ、社会人としての基礎、組織での論理、プロフェッショナルとは何かを気づかされました。

大津
会社員時代、会社が2回合併したんです。その経験は自分にとっても大きくて……。学歴、派閥、社内政治……、大人の世界の有り様を見せつけられました。誰も助けてくれないので、自分自身も「個」として強くならないと思うようになりましたね。学生時代、理不尽な待遇にキレてアルバイトを辞めた青臭い私が、「反骨のエネルギー」を「成果を生む実行力」に変える土台を築けたのが、この6年間でした。20代の会社員時代こそが、私の最大のターニングポイントです。

—— 29歳で退社後、30歳でさらなるターニングポイントが訪れます。メーカーとサービス業という全く異なる事業に参入されます。この二刀流の哲学を、宮本武蔵の「二天一流」に重ねていらっしゃいますね。

大津
宮本武蔵は、それまでの常識を覆し、「大小二本の刀」を同時に使う二天一流という独自の戦略を確立しました。これは、「一つの常識に縛られない柔軟な戦略」の象徴です。私にとって、メーカー(ダンボール)で培った合理性や生産効率、サービス業(サウナ)で培った顧客の心理やブランディング。この両極の視点こそが、武蔵の二刀です。この異なる二つの力を同時に、そして高いレベルで使いこなすことで、競合他社の予測を超え、業界の常識を打ち破ることができると確信しています。

—— この二刀流が、現在の大津さんのブランディングキーワード「ダンボール ×サウナ」の核心ですね。

大津
まさにその通りです。単なる箱と施設ではありません。メーカーのトップが、なぜ今、ウェルネスという最先端のサービス業に挑戦しているのか。この異質なギャップが、世間の関心を引くフックとなります。この掛け算によって、「挑戦的で、価値を創造する会社」という唯一無二のブランドを確立したいのです。

【後編へ続く】

大津雄一(おおつ・ゆういち)

1989年生まれ。福岡生まれ、大阪府寝屋川市で育つ。同志社大学卒業後、上場企業に6年間勤務。29歳で退社後、大陽紙業株式会社 常務取締役 統括部長に就任、同時に熊本の「サウナ城の湯」を運営するゴールドアゲイン株式会社 代表取締役社長を兼任。異業種二刀流経営者として、西日本での地域貢献と革新を目指し、精力的に活動中。

公式サイト・SNS情報

熊本城サウナ城の湯

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サウナイキタイ:https://sauna-ikitai.com/saunas/88756

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大陽紙業

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インタビュー・文・撮影:ごとうまき