映画に関わる人々と時代劇へのリスペクトが詰まった青春SF作品
元「乃木坂46」の伊藤万理華が主演を務め、時代劇オタクの女子高生が監督として映画制作に挑む姿を、SF要素を織り交ぜながら描いた青春ストーリー。“アイドルが主演”という先入観から映画ファンは敬遠しがちかもしれない。かくいう筆者も「アイドルファン向けの作品かしら」とスルーしてたけど(ファンの方すみません)、あまりにも評価が高いため“これは観ないと!”と慌てて鑑賞した次第です。すみません、謝ります。めちゃくちゃ面白かった、これ、名作です。
‟タイムマシーンにのって ”やってきた青年が未来を変える!?
物語は時代劇を愛する女子高生が文化祭での上映を目指して時代劇映画を撮ることになるのだが、理想の主役がなかなか見つからず苦戦していた。そんなある日、武士役にぴったりの凛太郎が現れる。すぐに彼を主役に抜擢すると決意し、幼なじみのビート板とブルーハワイを巻き込み、個性豊かなスタッフを集めて映画制作に乗り出す。順調に撮影が進んでいくなかで、凛太郎の正体が明らかになるのだが…。
時代劇へのリスペクト
「座頭市」の名シーンやポスターなどが映し出され、時代劇ファンにはたまらないだろう。女子高生たちが勝新太郎の“色気”やしぐさについて真剣に語るところには思わず笑っちゃう。また映画の中での時代劇映画を作るのに“7人の仲間”を集めたといった部分にも思わず膝を打つ。
秀逸な脚本と、キラリと個性が光る“7人の仲間たち”
女優としての素質も充分な伊藤万理華(元アイドルという色眼鏡ははずしましょう)の存在が作品に新たな息吹をもたらし、脇を固める‟7人の仲間”のキャスト陣が彩を加えている。とくに只者でない存在感を放つ凛太郎役の金子大地によってより華やかにラブコメ要素も織り込りこまれている。金子君は今後益々注目される役者ではないだろうか。あの美しい瞳には思わず吸い込まれそうになる。
高校最後の青春の夏、そこには友情、恋愛、映画愛、時代劇愛、SFなど・・・これだけ多くのテーマとなると諸所散らばりそうなところを巧みにシンクロさせながら令和時代の素晴らしい青春映画を作り上げているところに大きく評価したい。そう、本作はよくある青春ものではない、覚悟して見てほしい。
ストーリーが進むにつれて筆者の気持ちも彼女たちとともにヒートアップ。笑いあり、涙あり、主題家を歌うCody・Lee(李)の「異星人の熱帯夜」も夏にピッタリ、歌詞がいいね!
映画館を出た瞬間のいや~な暑さやジメジメさえも打ち消すような、観終わった後の“爽やかな余韻“、“7人の仲間たち”と一夏の青春を共有できた気分だった。観て良かった。