2025年6月、プロフィギュアスケーター宇野昌磨が自らプロデュースした初のアイスショー「Ice Brave」。観客に「こんなアイスショーは見たことがない」と衝撃を与えたこの作品が、早くも新章「Ice Brave 2」として11月1日・2日、京都アクアリーナで開催される。 愛知・福岡・新潟での上演を経て迎える関西初公演。宇野昌磨の限界なき挑戦は、どこまで進化を遂げるのか。8月末、大阪で開かれた取材会をレポートする。
進化の核心――コンセプトを変えずに、新たな高みへ
「コンセプトはあまり変えずに、よりレベルアップしつつ、ちょっと違う内容を見せていけたら」と語る宇野。第1シーズンで好評を博した要素を残しながら、「もっといろんなことができる」という思いを胸に、新たな挑戦を重ねている。
90分間ノンストップで繰り広げられるこのショーは、まさに音楽ライブのような熱狂を生み出す。「観客とスケーターが一体となってつくり上げる」という独特の世界観は、従来のフィギュアスケートの枠を超えた体験を提供する。
競技者からプロデューサーへ――心境の変化
現役時代とプロになってからの最も大きな変化について、宇野は率直に語る。 「競技の時は、やらなければいけないことを毎日、自分自身で取り組み続ける毎日でした。人とのコミュニケーションや、0から1を作るということをしてこなかった。でも、イベントを提供する立場として1回ショーを経験できたのは、すごく自信につながった」
競技者として数々の成績を残してきた宇野だが、プロデュースという新たな領域での経験は、また違った成長をもたらしているようだ。「自分が何かをしないと進まないんだ、ということを経験させてもらった。それは僕にとってはすごく苦手なことだったからこそ、めちゃめちゃプラスなことでした」と語った。
競技時代の拍手とアイスショーでの歓声の違いについて問われると、宇野の表情が明らかに変わった。
「競技の時の大きな歓声や拍手は感動する瞬間もありましたが、プレッシャーになったり不安になることもあった。でも今回のショーでは、お客さんを楽しませたいという目標での歓声。僕たちがその日まで積み上げてきた練習や過程が、そのままフィードバックとして返ってきているような感覚でした」 観客が楽しみにしてくれている熱量を肌で感じ、「今までとはまた違った応援、歓声が力になるというのを実感した」と振り返る。
選び抜かれたメンバーたち
今回のキャストには、本田真凜、吉野晃平、本郷理華、中野耀司、唐川常人、櫛田一樹、佐藤由基が名を連ねる。メンバー選びの基準を尋ねると、宇野は笑いながら答えた。 「完全に人間性で選ばせていただきました。僕自身が初めてプロデュースするショーだったので、手のかからない子たちを選びました」
冗談めかしながらも、その裏には深い配慮がある。「みんなを引っ張っていくのがすごく得意ではないので、ついてきてくれる人たちと一緒に作るという形で」。 練習環境についても独特の哲学を持つ宇野。
「僕は氷の上でずっと集中していろというタイプではない。やるときにやればいいし、楽しいときは楽しくやればいい。僕は練習していない時はずっとゲームをやっていました」とニッコリ。
プロ転向後、宇野は自身の表現力に対して論理的に向き合うようになった。「現役時代には感覚的で曖昧だった『表現』を論理的に突き詰め始めた。当時は避けていたバレエにも向き合い、数年単位で地道に身体の使い方そのものを見直している」 さらに、「ずっとやりたかったストリートダンスにも挑戦中。氷上ではあり得ないような動きも自分の中に落とし込み、『スケートの動き』として昇華させようとしている」と、進化への飽くなき探求心を見せる。
本田真凜との新たな挑戦
2nd Seasonでは、本田真凜とのアイスダンスプログラムがさらなる注目を集める。「以前出演したアイスショーで簡単なリフトを通して、自身の技術不足を実感したことが始まり」だったというこの挑戦は、単なる経験ではない本格的なプログラム制作へと発展している。
SNSやゲーム配信を通じて新たなファン層を獲得していることについて、宇野は意外な本音を明かす。 「僕自身がそもそも表に出るタイプではない。人とのコミュニケーションもそんなに得意じゃない。でも競技を引退して、自分から何かアプローチをしないと何も動かないということを知った。失うものはないので、好き勝手にSNSをやっています」と笑顔を見せた。
そんな等身大の宇野だからこそ、「SNSでは結構ふざけていますが、もちろんスケートも本気。決してゲームとかSNSで発言していることが全部嘘ではなく、本当に心からゲームが大好き」という言葉に説得力がある。
未来への眼差し
「Ice Brave 2」への期待について最後に語った宇野の言葉は、彼らしい謙虚さと情熱に満ちていた。 「僕たちがここをパワーアップさせたからというよりも、本当に見た人がすごいと思うか、驚いてくれるか、楽しいと思うかが大切。見に来る方がすごいと思っていただけるショーを、試行錯誤をしながら作っていきたい」
氷上の勇者たちの物語は、まだ終わらない。宇野昌磨が描く新章が、京都の地でどのような感動を生み出すのか。11月の京都アクアリーナが、その答えを教えてくれるだろう。
Colantotte Presents 宇野昌磨アイスショー「Ice Brave 2」京都公演概要
日時:2025年11月1日(土) 12:30/16:30、11月2日(日) 12:30
会場:京都アクアリーナ
公演時間:休憩なし約90分
料金: プレミアムS席(アリーナ席最前列) ¥27,000※オリジナルペンライト付き アリーナS席(アリーナ席2列目以降) ¥18,000 スタンドA席 ¥12,000 車いす席 ¥12,000 ※車いす席は一般販売からチケットぴあでのみ発売。
取材・文・撮影:ごとうまき






