【映画「カムアンドゴー」公開記念特別公演】 桂雀々独演会「カムアンドゴー」レポート

撮影:佐藤浩
EVENT
2021年11月27日(土)に桂雀々独演会「カムアンドゴー」が大阪うえほんまち銭屋ホールで行われた。本公演は現在公開中の映画『COME&GOカムアンドゴー』の公開記念公演となり、本作に出演中の桂雀々とメガフォンをとったリム・カーワイ監督のトークショーも行われた。
開口一番には雀々の愛弟子の桂優々が登場し会場の空気を和やかに緩めていく。優々は古典落語の『時うどん』を熱演。雀々は古典落語の『がまの油』と雀々の師匠で今は亡き桂枝雀が創作した『いたりきたり』のニ席を披露した。

撮影:佐藤浩

『ガマの油』と言えば、“さあさ、お立ち会い。御用とお急ぎでない方は、ゆっくりと聞いておいで。遠目山越し笠のうち、物の文色(あいろ)と理方(りかた)がわからぬ。山寺の鐘は、ごうごうと鳴るといえども、童子(どうじ)来立って鐘に鐘木(しゅもく)をあてざえば、鐘が鳴るやら鐘木が鳴るやら、とんとその音色がわからぬが道理…”というガマの油売りの口上からスタート。さすがは雀々師匠、枕(導入)から爆笑の嵐、本題の『ガマの油』に入るころには観客達のボルテージも上がり、お腹を抱えて笑う観客も見られた。

枝雀師匠の創作落語「いたりきたり」が深い

中入り後にはもう一席の『いたりきたり』を披露。前述したとおり、『いたりきたり』は雀々の師匠である桂枝雀が創作した落語。奇しくも雀々師匠が出演する映画『COME&GOカムアンドゴー』(和訳で行ったり来たり)と見事にシンクロし本公演にピッタリの演目だった。
映画の『カムアンドゴー』は大阪キタを舞台にした9ヵ国の人々が“行ったり来たり”する物語、一方で枝雀師匠が手がけた落語の『いたりきたり』は噺の中では「いたり きたり」「でたり はいったり」「のらり くらり」「寝たり 起きたり」などとリズム良く噺が展開されていくのだが、実は人間、生物の本質を鋭くついた哲学的な内容となっていて「相対性理論」を表現しているとも言われている。まさに枝雀師匠の生き様が表れた“泣き笑い”人生賛歌な創作落語ではないだろうか。

撮影:佐藤浩

雀々師匠×リム監督のトークショー

ニ席目終了後には、雀々師匠×リム・カーワイ監督のトークショーが行われた。息がぴったりな二人、「監督の作品って脚本がないんですよ」と撮影の裏話を話す雀々に対しリム監督は「雀々さんのシーンはワンカット(カメラの長回し)だったんですよ。一度もミスがなかった。素晴らしい演技でした」と雀々を称賛。公演が行われた11月27日は東京では劇場公開中で、プロモーションなどで東京大阪間を往来していたリム監督。「僕も“いたりきたり”しています」話し観客達の笑いを誘った。

撮影:佐藤浩

映画『COME&GOカムアンドゴー』のプロモーションとして開催された本公演、会場はほぼ満席で終始笑いの渦に包まれ観客も満足気に会場を後にした。
映画『COME&GOカムアンドゴー』はヒューマントラストシネマ渋谷では昨日で終演となったが、大阪ではテアトル梅田、シネ・ヌーヴォで絶賛上映中。また12月10日(金)からは京都で公開拡大し、京都シネマで上映される。京都公開記念として初日には桂雀々、兎丸愛美、監督のリム・カーワイが上映後の舞台挨拶に登壇。映画を観終わった後にはじんわりと心が温まり、作品の余韻がゆっくりと身体に染み渡っていくだろう。多くの人に届いてほしい作品だ。

(C)cinemadrifters

文/ごとうまき