【この本がエモい】ベストセラー『20代で得た知見』がなぜ多くの人々に刺さるのか

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年が明けたと思えばもう成人の日、そして小正月。例年に比べドタバタな年末年始だった。小さな子どものいるパパやママにとっては冬休みなんてもんはない。学校が休みに入れば毎日の三食作りに、学校や塾の宿題、毎日のピアノの練習も見てやらなくてはならない。私もお掃除アイロボットも食洗機も洗濯機も、絶賛フル回転。もし今ドラえもんが現れたら開口一番に『私のコピーを三人ください』と叫ぶだろう。

目を離す事ができない乳幼児期を過ぎ、就学し少し手が離れ、ほっとするのも束の間、次々と子供の成長段階によって立ちはだかる壁。子育ては壮大なクリエイティブな経験であると私は信じているが、同時に正解がなく、期間も長い。悩みは尽きないばかりである。

さて、そんなドタバタな年末年始に読んだある一冊が、慰めと癒しと、少しばかり乾いていた私の心に溢れんばかりの潤いを与えてくれた。その本は20代で得た知見』(KADOKAWA) 日本文学(日記・書簡)になる。

本書がバカ売れする理由を考えてみた

書店で何となく手にとり、パラパラと読むと、みるみるうちに惹きこまれ迷わず購入、後にアマゾンのレビューを読むと500近いレビューが。現在ベストセラー1位で、2020年10月上旬までは全国で完売していたほど売れに売れている。恥ずかしながら、今更手に取り本書の著者であるF氏の著書を読んだのも今回が初めて。その美しい文体は多くの読者の心を掴み、多数のファンが。これまでの著作に『いつか別れる。でもそれは今日ではない』『真夜中乙女戦争』がある。

さて、これほどまでにして本書が私たちの心を掴むのはなぜなのだろうか。

冒頭挨拶に著者はこう述べている。

二十代は最悪の時代で、寂しさ時代で、引き裂かれる時代ではなかったか。かつて「二十代の人生の質は、出会った言葉で決まる」と

 

一人の人間の人生は、ある夜友人が電話で語ってくれた台詞、または恋人がふとした瞬間吐き捨てた台詞、バーで隣の男が語ってくれた一夜限りの話、なんの救いもない都会の景色、あるいは、特別ではない夜道で雨のように己の全身を貫いた、言葉にもならない気づき。そういったものによって人生は決定されたように思うのです。

(20代で得た知見より)

二十代に入ると十代の頃と少しずつありとあらゆることが変わっていく。人間関係、恋愛、仕事、日常生活・・・・。その変化に戸惑いながらも、”そんなものだ”と私たちは受け入れ大人になっていく。

情報過多な現代、調べるとすぐに出てくるが、肝心なこと、本質はどこにも載っていない。いつでもどこでも常に誰かと繋がっていられるのに、ふとした時に訪れる”虚しさ” ”孤独”。その孤独の正体は、リアルに誰かともっと深く、もっと強く、強い絆で結ばれていたい、という願望なのか。

さらに2020年、コロナによって引き裂かれてしまった幾つもの日常、虚無感、孤独、悲しみ、憎しみ・・・

183個のエッセイが、負の感情までも優しく包み込んでくれる。時には違った側面から、新しい視点を投げかけ、そんな私たちの訊けなかったこと、モヤモヤした言葉にできないような、複雑に絡み合った感情の糸を著者のF氏は優しく解きほぐしてくれる。

そんな彼の「真のやさしさ」「強さ」が迷い傷ついた現代の若者たちの心に深く刺さるのかもしれない。

本書は20代だけに向けた本ではなく、まだ20代を迎えていない10代も、脂の乗った30代も、大人な40代も、50代も・・・お守りとして、人生のバイブルとして、これから歩んでゆく道を照らしてくれるのではないだろうか。

宝石のように美しいエッセイの数々

キラキラした宝石が詰まった宝箱のような本書の中で、個人的に印象に残ったものをいくつか紹介。

綺麗な女なんて山程います。可愛い女も山程いる。賢い女は、たまにいる。なんてことを申し上げるとフェミズムに怒られそうですが、続けましょう。歳上の男が好きな女は多い、大抵、余裕がないからです。

 

私が女に求めるのは、綺麗でも可愛いでもありません。曲線でも水分率でも、おべっかでも品の良さでもない。度胸です。仕事が飛んでも金がなくなっても一人で生き残る気迫と気概を持合わせた度胸です。その孤独に耐え得る、生き様です。

(20代で得た知見 《㉚女は生き様である》より)

「20代で得た知見」より

「20代で得た知見」より

「20代で得た知見」より

公開ラブレター

マキ

私、思うんです。世のモテたい殿方は巷に溢れる薄っぺらいペラペラのモテテクを身に着けるよりも、F氏の著書をご一読いただくことをおすすめいたします。一朝一夕では到底身に付かないと存じますが。

さて、本書の著者である”F”とは何者か、調べてみたものの、その正体は謎のまま。公開プロフィールからわかっているのは彼は新宿在住、歳は私の3つ下、同じ11月生まれの兵庫県出身ということだけです。

本書を読みながら著者の”F”という人物が私の中でどんどん膨らみ「もしかして、好きかも?」という気持ちになり、そして本を読み終えた後には「好きだ」という確信に変わりました。

会ったこともない他人に、文章だけで完全にノックアウトされてしまうという、いやはや、あっぱれ!です。

そうこう思いながら本書のレビューを読んでいますと、私と同じように本を読んでF氏を好きになったとラブレターを書いておられる女性がおりました。レビューの数が多すぎたため、少ししか目を通せていませんが、きっと他にもそんな女性がいるはずですよ。

人は自分との共通点が多ければ多い程その人に対して親近感を持ち、ミステリアスな存在に惹きつけられ、さらには自分を理解してくれる人(理解してくれそうな人)に一方的に幻想を抱くものなのでしょうか。

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Fさま

あなたの新たな新作を心待ちにしながら 、この美しい宝石箱を人生のバイブルの一つとして、大切に大切にします。

そして本書にも書いてあるように《よい物を見つけたら、よいと叫ぶといい》《好意は早く伝えたほうがいい。だってすぐに消えてなくなる。》

Fさん、もしこれをお読みになり、いつか大阪にいらっしゃる際は気が向いたらKANSAI PRESSのTwitterにDM下さい。大阪の最高に旨くてエモいお店でのお食事ご馳走します。

ニャーン

文/ごとうまき