葵かを里 ロングインタビュー「何度も何度もご当地に足を運ぶ、これが私の歌づくりの基本です」

葵かを里
アーティスト

“舞いながら歌う演歌歌手“葵かを里が、2022年9月7日に「諏訪の御神渡り(すわの おみわたり)」の特別盤をリリースした。「諏訪の御神渡り」は2022年3月16日発売され、オリコン初登場第3位を獲得した人気ソング。特別盤は「諏訪の御神渡り」「人情酒場」に加え、2021年5月12日に発売された「ひとり貴船川」、カバー曲「天までとどけ御柱」を収録、ジャケットも一新している。さらに歌の舞台である長野県諏訪地方で撮影したミュージックビデオと舞踊ビデオ、字幕入りカラオケ、そして茶野香 初作曲作品「女の花を咲かせます」を収録、「諏訪の御神渡り」撮影時のメイキング映像などが収録されたDVDも付いている!歌と日本舞踊を融合させた、葵かを里ならではの艶歌を堪能できる特別盤に込められた思いや、エピソードなどをじっくり聞くことができた。

「諏訪の御神渡り」特別盤で、より一層 長野に足跡をしっかり残したい!

——どんな思いで特別盤を発売されましたか?

この歌の中には“諏訪の御神渡り”“御柱祭(おんばしらさい)”が入っています。「諏訪の御神渡り」とはマイナス10度が4日続くと氷と氷がゴゴゴと音を立てて迫り上がり、一本の道ができるという幻想的な自然現象。今年も4年連続開催が叶いませんでした。自然現象だから仕方ないですよね。だけど7年に一度の御柱祭は開催されて、私も行かせていただきました。さらに長野県の諏訪湖、諏訪大社に特化した歌も残せたらと水田竜子さんの「天までとどけ御柱」をカバー曲として特別盤に収録させていただきました。

——ミュージックビデオの撮影秘話はありますか?

2022年2月、諏訪湖の三分の一が凍っている時に撮影をしました。御神渡りの雰囲気がわかるようなシーンも多く、諏訪地方の魅力が感じてもらえる映像に仕上がっています。諏訪の2月はとても寒くて、着物の中にインナーを着込んでカイロを18個貼って撮影に挑みました。桟橋の先で立っている部分はドローンで撮影をしてもらったのですが、あの日は風が強くてドローンの撮影をするのに30分待ったんです。もう、寒くて寒くて…、歌詞の通り、凍りつきそうでした(笑)。

諏訪大社の御柱上社本宮一の柱(7年間諏訪大社で任務を終える直前の貴重な姿)が映像に残っている。

現在は真っ新な白木の大木に取り替えられているので、もしこれから行かれる方は映像の中の、いぶし銀のような立派な柱と見比べてもらえると面白いと思います。

——式年御柱祭にも行かれたんですね。式年御柱祭について詳しく教えてください。

私も御柱祭という存在は知っていたのですが、実際行ってみると、自分が想像していたお祭りとは全く違っていました。よくニュースなどでは、大木に男性たちが大勢乗って坂から滑り降りてくる“木落し”が映っていることが多いのですが、これは神事の流れの一部分なんです。山から大木を切り出して綱引きのように引っ張ってくる途中で坂を降りないといけない、それが木落しになったんです。

四隅に柱を立てて7年に一度取り替えることによって、伊勢神宮のような式年遷宮の意味合いを持つという。

映画「君の名は。」のモデル地となった立石公園や、舞踊のビデオでは御神渡りの認定をする宮司さんがいらっしゃる八釼神社神楽殿などでも撮影、ミュージックビデオにも諏訪地方の魅力がたっぷり詰まっている。

「諏訪の御神渡り」について

——「諏訪の御神渡り」、歌詞がとっても切ないですよね。

御神渡りには伝説があって、御神渡りができると諏訪大社の男の神様(上社)が女の神様(下社)に会いにいく道ができるんです。つまり4年間会えていないんですよね。御柱祭のように7年後などと、わかっていたらいいけれど、自然現象なのでいつ会えるかわからない、「いつまで待てばいいの?」といった切実な思いが歌詞に込められています。

——歌う時に気をつけておられることは?

これまでの私の歌にも相手を待つ歌が多く描かれていますが、今作は極寒の場所で待っていてこれまでの状況や、前作「ひとり貴船川」とはワケが違います。いわゆる“極限状態“で愛する人を待っている気持ちを表現しました。歌詞の中“あなたお願い 今すぐ 今すぐ逢いに来て“など、切羽詰まった状況の中での女性の叫びを感じ取ってもらえると嬉しいです。

葵さん自身、諏訪地方の曲を歌うにあたり、何度も何度も足を運び、その土地の空気を肌で感じてきたという。

御神渡りができる前、御柱を山から切り出して眠っている時、山から里に来て里で白木にするところ、里引きを実際に見に行ったりして、節目節目で足を運んでいます。とりわけ御神渡りの関係者の方たちからは、「まさに今年の御神渡りの状況を表現した歌ですね」と言っていただきました。

 

——今作も作詞家・麻こよみ先生、作曲家・影山時則先生が手がけられましたが、お二人とは長いのですね。どんな先生方ですか?

麻先生は自分の娘のように接してくださっています。歌手の意見をとても尊重してくださる方。レコーディング中もペンを持って、必要があれば推敲してくださる。心から信頼しています。また影山先生にはずっと曲を作って頂いています。最近ではある程度メロディーが出来上がると、あとは私に任せてくださる。阿吽の呼吸で、お互い信頼関係で成り立っていると思っています。

作詞家、作曲家、そして葵さん、チーム一丸となってみんなで作り上げていると話す。

作曲した「女の花を 咲かせます」「人情酒場」について

——茶野香として作曲された「女の花を 咲かせます」、そして「人情酒場」ができたエピソードを教えてください。

「女の花を 咲かせます」は、元々は私が作る予定ではなかったんです。だけど最初この詞を見た時に、直感で自分に向けられた歌のように感じて、歌詞を読んでいるうちに、どんどんメロディーが湧いてきました。まるで天から降りてくるような感じで。レコード会社の方にそのことを話すと、背中を押してくださり、自分で曲を作ることになりました。

コロナ禍に生まれた明るく元気な曲、応援歌として昇華されている。そして茶野香として作曲する第二弾が「人情酒場」だ。

「人情酒場」では癒し系女将を意識

この詩を読んだ時すぐに、いつも応援してくださる居酒屋さんの情景が浮かびました。私はお酒が全く飲めないんですけど、よく行っているお店なんです。この曲では居酒屋の女将になりきって歌っています。特に歌詞の中の”今日の苦労を サアサ 忘れ酒“の部分は研究しました。語尾では優しく、そっと置く歌い方をして、”柔らかさ“や“癒し“を出しています。

ご当地ソングを歌って10年ほどになる葵さんのモットーは、レコーディング前に必ず現地に足を運ぶこと。それも何度も何度も、だ。

一回だけではなく、何度も何度も行くんです。そうすることによって、その時々で見えてくるものが違うんです。「ひとり貴船川」でも、レコーディング前に幾度となく足を運びました。本当にいろんな発見がありますよね。“舞いながら歌う演歌歌手“というキャッチフレーズをつけてもらってから、京都を舞台にした曲を6曲歌わせていただいています。桂川、鴨川、保津川、白川、貴船川と、京都の川を独り占め(笑)。

芙蓉流名取に訊く、日常生活でも使える美しい所作

日本舞踊(芙蓉流名取)、華道(池坊師範)、茶道(表千家師範)の資格を持つ才色兼備の葵さんに、日常生活でも活用できる美しい所作について尋ねた。

日常生活では歩き方に気をつけています。踊りでは下半身がとても大切、内側の筋肉を使って、楚々とした歩き方を意識するだけでも美しく見えるのではないのでしょうか。

デビュー20周年を目前に事務所を独立、原点回帰したいと葵さんは話す。また、2022年11月16日(水)には、ホテル「椿山荘」東京でバースデーパーティーが開催される。

素敵なホテルでディナーショーをさせていただくので、とてもワクワクしています。これまで東京でも行ってきましたが、コロナ禍になって延期に延期を重ねて、3年ぶりの開催。ディナーショーの構成は自分で考えます。皆さまに喜んでいただけるようなショーにするので、楽しみにしていてくださいね。

葵さんのインタビューを通して、これまで知らなかった諏訪地方の魅力を知ることができ、実際に行ってみたくなった。この土地の名前を聞くたびに葵さんのことを思い出すことだろう。来年こそは!2人の神様が5年ぶりに再会できることを願って・・・。

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インタビュー・文/ごとうまき