理論を数式を使わず映像で表現した社会派ドキュメンタリー映画
世界では2013年に発行、日本では2014年に発売された『21世紀の資本』はフランスの経済学者”トマ・ピケティ”の同名経済学書を映画化。この書は35カ国で翻訳され300万部を売り上げた。経済学書では異例のヒット作品だ。700ページを超えるこの本は、我々一般人が完読するには困難なため、著者のトマ・ピケティ自身が監修、出演し、5感で理解できるように難しい数式など使わずに「レ・ミゼラブル」「プライドと偏見」「ウォール街」「ザ・シンプソンズ」などといった有名な映画や小説、ポップカルチャーを用いて「資本」の視点から産業革命前から現在までの300年の世界の歴史を切り取りながら進んでいく。700ページ以上の経済学書が約2時間の映画にギュッと凝縮されているので、観る価値は大いにある。
財産の集中と社会権力の集中と対立
いま18世紀・19世紀の階級社会に戻りつつあって貧富の格差があまりにも大きい。そしてこの格差を放置していると、いずれ革命や戦争が起こるとピケティ氏は警鐘をならしている。そしてそのためには格差是正のために富裕層、大企業に対する強力な累進課税が必要なことも語っている。
また人はお金を持つと傲慢になり、自分より貧乏な人を見下すということが、心理実験によって分かっている。トリクルダウンや富裕層の自主的な再配分は期待できない。政府が介入するしかないと。
歴史は繰り返される
今回のパンデミックにしろ、歴史を振り返ると現在起こっていることは過去の再現である。資本主義がどういう歴史を辿ってきたか300年前から振り返るのだが古い映像を観れるのはなかなかない機会なのでむしろ新鮮だ。
資本主義が腐ったあたり、レーガン・サッチャー・中曽根時代以降、富の集中と、富裕層と貧困層の拡大・分断、独裁的経済支配者の出現、選挙を金で買う腐敗の蔓延などもアニメや映像でうまく描かれていてわかりやすい。今回のトマ・ピケティやイアン・ブレマーが予見し警鐘を鳴らしていた危機が、この新型コロナウィルスによって後押しされた。今こそ観るべき映画だ。
「21世紀の資本」関西の上映映画館情報
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