1月14日から全国劇場で公開中の映画『クライ・マッチョ』は、落ちぶれた元ロデオスターと親の愛を知らない少年との魂の交流を1979年のメキシコを舞台としたロードムービー。本作は1975年に発刊されたN・リチャード・ナッシュによる小説を映画化。

西部劇出身のスターであり監督としても名高いクリント・イーストウッド。イーストウッドといえば「許されざる者」「ミスティック・リバー」「アメリカン・スナイパー」「運び屋」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」など数々の名作を生み出してきた。今作は監督デビューから50年となる40本目、監督・主演作としては23本目となり、91歳にして監督・製作・主演を兼任するという、映画史に残る偉業を成し遂げている。まさに映画ファンは必見の作品だろう。

あらすじ

元ロデオスターのマイク（イーストウッド）は、かつては数々の賞を獲得し、ロデオ界のスターとして活躍していたが落馬事故をきっかけに落ちぶれ、妻や子どもとも離別しテキサスで孤独に暮らしている。ある日元雇い主からメキシコにいる彼の息子ラフォを元妻のところから誘拐して連れてくるよう依頼される。元雇い主には恩があるため、マイクは依頼を引き受け、テキサスからメキシコシティへ、そして親に愛されなかった生意気な少年ラフォとともに米墨国境を目指すのだが、その旅路には思いがけないトラブル、出逢いや僥倖が待ち受けていた。

「本当の強さ」とは？作中から見えるイーストウッドの生き様

愛を知らない少年と落ちぶれた男、旅を重ねるにつれて二人の絆が深まり互いに成長する。

ストーリー的には凡庸なロードムービーかもしれない。しかしだ、91歳のイーストウッドが演じることで奇跡的で希望に溢れた“唯一無二のロードムービー”と化する。

旅路での困難などにも飄々と受け流せる主人公の強さは「運び屋」でも見られたイーストウッド自身の生き様に通じ得るのかもしれない。彼の程よく肩の力を抜いた、むしろ人生に対する楽観性さえも感じられる。

劇中ではマニュアル車も馬もかっこよく乗りこなすイーストウッド、時にはロマンスや決闘シーンなどもあったりと、人生100年時代、“老いることも悪くない”と思わせてくれる、彼こそ“希望”となった作品だ。物語が進むにつれて明らかになる主人公が辿った人生行路、旅路で出会う人々の優しさに少年と主人公の“魂の邂逅”が、見終えた後にじんわりと沁み渡る温かい作品。イーストウッドに乾杯！