1990年代ニューヨーク、憧れの街で人生の一ページをめくる・・『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

9232-2437 Quebec Inc - Parallel Films (Salinger) Dac (C) 2020 All rights reserved.
映画

「ライ麦畑でつかまえて」などで知られるアメリカの小説家J・D・サリンジャーを担当する女性エージェントと新人アシスタントを描いたジョアンナ・ラコフの自叙伝「サリンジャーと過ごした日々」を映画化。1990年代のニューヨークを舞台に、憧れの大都市で夢を追いかけ、奮闘する主人公ジョアンナの姿に、かつての自分を投影してみたり…。
都会の片隅で「何者かになろうと」もがく姿、夢と現実との狭間で葛藤する姿には、国や場所は違えどきっと多くの人が共感するだろう。

インテリアやファッションからも眼福を得る

原作「サリンジャーと過ごした日々」の著者ジョアンナは1972年生まれで、まさにインターネット黎明期世代。今じゃ当たり前のように人々の生活に溶け込んでいるパソコンが、そりゃ90年代ではジョアンナの上司にとっては奇異なもの扱い。当時はスマホなんて誰が想像していた?劇中に登場するタイプライターが新鮮でオシャレ、それにカセットテープの録音機も今じゃ貴重。90年代のニューヨークにちょぴりタイムスリップしたような気持ちで心が躍る。
新社会人、働く女性、大都会で懸命に生きている人たちにはより響くだろう。

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ところで「出版エージェントってなんやねん?」って、筆者はずっと気になっていた。調べたところ、著者の代理人として出版社へ企画を持ち込んだり、著作物の権利管理を代行する仕事なんだとか。しかも欧米では一般的。
さらにホームページを見ると、ジョアンナが勤める出版エージェンシーは、1929年に設立の「ハロルド・オーバー・アソシエイツ」。マーガレットのモデルとなった人物は、サリンジャー 担当と経営を引き継いだ女性エージェントのフィリス・ウェストバーグ。
サリンジャーをはじめ、アガサ・クリスティ、ウィリアム・フォークナー、F・スコット・フィッツジェラルドなど数々の文豪の 作品の契約・著作権の管理などを行っていたという。

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サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に関連する作品は、数え切れないほど。最近の映画では「ライ麦畑でであったら(2018)」、新海誠監督作品「天気の子(2019」には主人公帆高が読んでいる本、村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」が描かれ、当時は書店でも並べられるほど話題となった。またジョン・レノンを殺した犯人が『キャッチー・イン・ザ・ライ』に影響を受けていた話も有名だ。本が好きな人には特に楽しめる作品。

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マイ・ニューヨーク・ダイアリー

監督:フィリップ・ファラルドー
製作:リュック・デリー キム・マクロー
原作:ジョアンナ・ラコフ
脚本:フィリップ・ファラルドー
キャスト:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース
原題:My Salinger Year
製作:2020年製作/101分/G/アイルランド・カナダ合作
配給:ビターズ・エンド

文/ごとうまき