「今の20歳だからこそ歌える『黒髪海峡』を」水森英夫の秘蔵っ子・藤崎詩乃インタビュー

インタビュー

作曲家・水森英夫のもとで7年にわたりレッスンを重ね、2026年5月20日に「黒髪海峡」でデビューした藤崎詩乃。福岡県北九州市出身、音楽大学で声楽を学ぶ現役大学生でもある。10月6日で21歳を迎える彼女に、デビュー後の日々、名前に込められた“歌”への思い、そして対照的な2曲の女性像について尋ねた。

デビューから5カ月「毎日が目まぐるしくて楽しい」

――5月にデビューされて数カ月。心境の変化はありましたか?

藤崎
初めてのことばかりで、毎日目まぐるしいです。新しいことがたくさんあって、とにかく楽しいです。



――大学のお友達の反応は?

藤崎
みんなデビュー曲を覚えて応援してくれています。一緒にカラオケに行ったら「演歌を歌うのは初めて」と言いながら歌ってくれました(笑)。



――大学では何を専攻されているんですか?


藤崎
音楽学部で声楽、クラシックを学んでいます。



「私は“うたの”だから歌手になる」

――子どもの頃から歌手を目指していたそうですね。

藤崎
本名も「詩乃(うたの)」なので、小さい頃から歌に特別な思い入れがあって。全然理由になっていないんですけど、「私は“うたの”だから歌手になるんだ」と思って生きてきました(笑)。母は「うたのっていいじゃん」と名付けたものの、すごく音痴だったらかわいそうだと心配していたみたいです。



――歌との出会いは?

藤崎
祖母の家がカラオケ喫茶で、物心ついた時にはマイクを握って歌っていました。3歳からヤマハ音楽教室でピアノを、8歳から歌を習い始めました。幼稚園の連絡帳に「今日、うたのちゃんがこぶしを回して踊りながら歌ってくれました」と書かれていたこともあって。どう歌っていたのか自分でも分からないんですけど、小さい時のほうが上手かったのかもしれません(笑)。



――8歳頃からは大会にも出場されています。

藤崎
はい。初めてテレビに出たのは「のど自慢」でした。



水森英夫に師事して7年

――水森先生との出会いは?

藤崎
13歳の時です。身長が小学4年生くらいからずっと158センチで変わっていなくて、先生は私を20歳前後だと思って声をかけてくださったそうです(笑)。13歳と分かると「まだ東京に出てきちゃダメだ。高校を卒業するまでは地元でしっかり勉強しなさい」と。そこから5年ほどは、長期休みに上京して先生のお宅でレッスンを受けたり、「次はこれを覚えて5曲くらいCDで送りなさい」と課題をいただいたり。高校卒業後に上京してからは、週2回しっかりレッスンを受けられるようになりました。



――7年間で、一番成長を実感したことは?

藤崎
週2回通えるようになったのは大きかったです。それに、一緒にレッスンを受けていた先輩が曲をいただいてデビューしていく姿を間近で見て、一気に現実味を帯びて。「私もこうなりたい」と意識がパタッと変わりました。



――水森先生の指導で、一番大切にしていることは?

藤崎
作曲家の先生ですが、本当に歌詞を大事にされる方です。言葉を伝えることをしっかり教えていただいているし、門下のお兄さん、お姉さんもみんなそう歌っていらっしゃる。私もそれに続いて、歌詞を届けることを頑張りたいです。実は水森先生のレッスンはグループレッスンなんです。それが普通だと思っていたので、デビューしてから他の歌手の方に「それは水森先生のところだけだよ」と言われて初めて知りました。



――上京後、音楽大学へ進んだ理由は?

藤崎
音楽で生きていきたくて音楽高校に進んだんですが、当初は先輩方のようにアルバイトをしながらレッスンを受けるつもりでした。でも周りはみんな音大を目指して切磋琢磨していて、ぽつんと取り残されたような気持ちになって。もっと学びたいと水森先生に相談したら、「ぜひ行きなさい。学ぶことは何も無駄にならない」と言っていただけたんです。そこから進路を切り替えて、必死に勉強しました。



――クラシックの学びは演歌にも生きていますか?

藤崎
クラシックは基本的にマイクを使わない歌い方です。演歌やポップスはどうしてもマイクに頼りがちですが、水森先生は「マイクに頼らず、自分の声で歌詞を伝えなさい」ということをすごく大事にされている。そこはつながっていると思います。



「黒髪海峡」は“強い女性”の歌

――デビュー曲「黒髪海峡」はとても大人っぽい作品です。

藤崎
最初に歌詞をいただいた時はびっくりしました。どんなメロディーになるんだろう、私に歌えるのかなと不安で。20歳になりたてだったので、私が歌うと物足りなくなってしまうんじゃないかと。でも練習を重ねるうちに、「今の20歳だからこそ歌える『黒髪海峡』を届けられたら、それが一番いい」と思えるようになりました。30代、40代になればまた違う「黒髪海峡」が歌えるはず。この曲と一緒に成長していけたらと思っています。



――1番、2番の「あなたしだいの」が、3番で「わたし わたし わたししだいの」に変わるのが印象的です。

藤崎
そうなんです、主導権を取り戻すんですよね。一見、男性を待つけなげで弱々しい女性を思い浮かべる方もいると思いますが、私はすごく強い女性だと捉えていて、今は力強く歌っています。解釈は人それぞれなので、柔らかく歌われる方もいらっしゃると思います。



――レコーディングでの印象的な指導は?

藤崎
音楽高校出身なので、どうしても楽譜を読んで覚えてしまうんです。でも譜面通りに演歌を歌うと、すごくつまらなくなってしまう。水森先生からは「楽譜にとらわれて歌うな」、特に「あなた あなた あなたしだいの」のところは気にするなと言われて、実は楽譜とは少し違う歌い方をしています。カラオケで歌ってくださる皆さんも、とらわれすぎずにご自身の気持ちを込めてほしいですね。



――クラシックとの違いに戸惑いは?

藤崎
全ジャンル大好きなので抵抗はなかったです。ただ、演歌は語尾の処理が特徴的。クラシックやポップスだと2拍分の音符があれば伸ばして綺麗に収めたくなるんですが、演歌は“語る”ので、ちゃんと切っていかないとただ歌っているだけになってしまう。奥深いジャンルだなと思います。



「冬航路」の女性は“逃げてしまう”

――カップリング「冬航路」は曲調がガラッと変わります。

藤崎
メロディーも歌詞も対照的です。「海峡」と「航路」で海つながりですが、「黒髪海峡」は待つ女性、「冬航路」は旅立ってしまう女性。耳なじみの良い曲なので、親しみやすく感じていただけると思います。実は私、「冬航路」の女性のほうが弱いと思っているんです。傷つくのが怖くて、このままでは一緒になれないと分かっているから、自分から身を引いて逃げてしまう。明るい曲調ですが、その中に切なさがにじむよう、感傷的に歌うことを心がけています。



――作詞の岸快生先生からは何かお言葉が?

藤崎
「大変だね、こんな大人っぽい曲で」「こんな若い子に行くと思ってなかった」と笑っていらっしゃいました(笑)。これから私の年齢が主人公に追いついていくのかなと。コトコト煮込むように歌い込んでいく曲だと思います。



――MV撮影の注目ポイントは?

藤崎
指先で襖をなでるインサートシーンで「色気がない」と言われて、何テイクも重ねました。最後はレコード会社の男性ディレクターさんがお手本を見せてくださったんですけど、それがすごく色っぽくて(笑)。一番手間をかけたシーンなので、ぜひ注目してください。



墨を流したような黒髪、実は金髪時代も

――黒髪がとても綺麗です。

藤崎
地毛なんです。黒染めしたの?と聞かれるくらい真っ黒で。先生が「墨をかけたような黒髪だな」と言ってくださって、それも「黒髪海峡」につながったそうです。実は大学1年生の時は金髪だったんですよ。高校を卒業したら一度やってみたくて(笑)。門下の兄弟子さんたちは金髪の印象が強いみたいで、今でも「黒髪になったね」と言われます。



――好きな言葉に『自省録』の一節を挙げていますね。

藤崎
高校がミッションスクールで、授業でローマの話がたくさん出てきたんです。マルクス・アウレリウスの『自省録』を読んで感想を書く授業があって、この言葉にビビッときました。1万年生きるわけじゃないんだから時間を大切に生きなさい、という意味と、欲張らずに生きなさい、という意味。2通りに捉えています。



――学業との両立はいかがですか?

藤崎
5月からが初めての両立生活で、まだルーティンと言えるほどではないんですが、大学の先生方に活動をきちんと伝えて応援していただくことが大事だと実感しました。おかげで単位も落とさずに乗り切れました。今3年生で、卒業演奏ではミュージカルに挑戦しようかと考えています。



――演歌にクラシック、ミュージカル。活動の幅が広がりそうです。

藤崎
本当に全ジャンルを愛しているので。今はいただいた「黒髪海峡」をしっかり歌って演歌歌手として成長したいですが、ゆくゆくはオールラウンドで活躍できる歌手になるのが最終的な目標です。



■商品情報
2026年5月20日発売「黒髪海峡」

TECA-26019 / 定価:¥1,700(税抜価格 ¥1,545) / シングルCD

公式YouTubeチャンネルでカバーソング企画「うたのJUKEBOX」がスタート

 

インタビュー・文・撮影:ごとうまき