【Gacharic Spinインタビュー】結成15周年、過去最高のメンバーでこれからも“言葉”を届けていく。

アーティスト

結成15周年を迎えたGacharic Spin(ガチャリックスピン)のEPアルバム『Ace』が2024年2月28日に発売された。初回生産限定盤は2023年11月18日に開催された日比谷野外音楽堂ワンマンライブ映像が全編収録されたBlu-ray付。前回に続き、メンバーのアンジェリーナ1/3(Mic Performer)と、今回初登場のオレオレオナ(Keyboards)にインタビューを実施。楽曲の制作秘話やツアーへの思い、いまの互いの想いを伺いました。結成15周年、現メンバー体制になってから5年、今後彼女たちはどのような物語を見せてくれるのだろうか。

5曲全てが“エース”

── アルバムのタイトル“Ace”の意味や今作のテーマを教えてください。

オレオレオナ
これまでハイスピード、ハイエナジーをテーマに曲を出していた中、今回はリード曲になってもいいくらいの最高の5曲を集めました。またメンバー6人が“エース”でいたい。そういった意味を込めて“Ace”とつけました。このアルバムの曲には幅広いメッセージが込められています。

── 「Let It Beat」の楽曲のコンセプトを教えてください。MVもとっても素敵!

アンジェリーナ1/3
この曲は死生観をテーマにしています。皆、生きている中で孤独を感じていて、社会と自分が別の位置にいるという疎外感を感じている。それをMVでどのように表現しようかと考えた時に、東京で人が一番集まる渋谷のスクランブル交差点で撮影をしました。渋谷の交差点の真ん中で寝転がった時に世の中はどんなふうに自分を見てくるのか……。実際撮影すると、案外人って自分のことを見ていないんですよね。そんな状況にホッとする自分もいたり、孤独感も味わったりもしました。

オレオレオナ
青信号になった瞬間に旗を振って、楽器を担いで信号を渡る。これを何十回も繰り返しました。外国の方で反応してくださる方もいましたが、日本人はほとんど無反応……。この曲もそうですが、より洗練された自分達の新しいサウンド、演奏スタイルや歌詞でアプローチをするために、挑戦的な作品を作るように心がけています。

── アンジーさん作詞、TOMO-ZOさん作曲の「BakuBaku」は歌舞伎役者・中村仲蔵さんの人生をモチーフに書かれたとのこと。どんなメッセージが込められているのでしょうか?

アンジェリーナ1/3
講談や落語に出てくる歌舞伎役者の中村仲蔵の講談を聞いてから自分の人生が大きく変わりました。血筋がないものは役者になれないと言われてた時代の中で、それでも夢を叶えたいと突き進んでいく中村仲蔵。現実は甘くなかったけれど、結果実力でのし上がっていった。自分の夢や希望を捨てずに強く進んでいくと、誰か一人でも見てくれる人がいる……。彼の人生が、自分自身やバンドの物語にも重なりました。紆余曲折あったバンドだけど、自分たちが芯をしっかりと持って、突き進んできたからこそ15周年を迎えられたのだと思っています。

── 「ストロボシューター」はアンジーさんのラップが効いていてかっこいい。

オレオレオナ
最近アンジーの語りラップがすごくハマっているので、作詞のF チョッパー KOGAと作曲のTOMO-ZOもアンジーのラップを活かしたいという意図もあったのだと思います。それに、この曲はアレンジでは鋭さや強さも感じられるけれど、歌詞は温かい。Gacharic Spinはテクニックバンドというイメージが強いかもしれないですが、実はそれだけじゃないんだよって知ってほしいなと思います。

アンジェリーナ1/3
語りの部分ではいかに自分に落とし込み、感情をしっかり出せるかを大事に歌いました。サビの部分は内に秘めている沸々とした感情を表現しているのですが、Aメロ、Bメロでは、それを見せたくない、自分では前向きにとられたいという葛藤もある。そういった思いを使い分けて、意識しながら歌いました。

「オドリオドレ」は、まるでどんでん返しの小説

── 「オドリオドレ」は、頭のメロディーが、構成もコードも違う最後の箇所に使ってあるんですよね。すごいアイディア!これによってカオスな感情が感じられます。

オレオレオナ
冒頭と最後が同じメロディーなんですが、私も言われるまで気づきませんでした(笑)。はなが曲を作りましたが、彼女は言葉で説明できないことを音楽で表現する鬼才。だけど伏線回収をしっかりしてくれて。この曲を聴くと、どんでん返しの小説を読んだような気分になるってTOMO-ZOが言っていました。インタビューで言うねって伝えたので、ここ使ってください(笑)。

アンジェリーナ1/3
面白いのが、この曲には、はなちゃんの子どもの頃の実体験、陰の要素が書かれているんですよね。ライブでは幕が開いたらすぐに歌いたい、起爆剤のような曲。皆で盛り上がりたいです。

進化し続ける15年の軌跡。

──あらゆるジャンルを超越した 「Lin-Lin-Lan」も凄い曲!ピアノの部分もめちゃくちゃカッコいいですよね。

アンジェリーナ1/3
この曲は声色を変えたり小手先の小細工をするのではなく、純粋な気持ちで大切な人に届けるように意識して歌いました。これまで5年間やってきたことを素直に表現して歌ったテイクがそのまま使用されています。

オレオレオナ
はながアレンジと全体の曲を書き、サビのメロディーはTOMO-ZOと私が書きました。はなのぴあのアレンジはいつも驚きがたくさんで楽しいです。曲調もこのアルバムの最後を締めくくるのにピッタリな曲だと思っています。

── 歌詞はメッセージ性が強くて深い。

オレオレオナ
歌詞はF チョッパー KOGAが書きましたが、身近にいる人を大切にして生きていきたい、大切だってことをちゃんと伝えたい、という彼女の想いが込められています。アンジーとyuriが入る前のGacharic Spinの歌は“諦めるな!”や“夢を掴め!”などゴリゴリの前向きなソングが多かったのですが、ここ最近は人の心に寄り添った曲も多くなりました。きっと私たちも年齢を重ねていく中で、悲しみやどうしようもない別れを経験し、その中で紡がれる言葉も作品に投影されているのだと思います。

オレオレオナ
そして私たちが15年間続けてこられたのはファンのみんなのお陰。ライブ会場でも“明日会えなくなるかもしれない”と感じることも多くなってきました。ファンのみんなとの時間を大切にしたい。ライブでもしっかり届けたい一曲です。

通常盤

── Gacharic Spin TOUR2024「Ace」のファイナルが 4月20日(土)、東京EX THEATER ROPPONGI で開催されます(チケットはSOLDOUT)。さらに7月6日のTOKYO DOME CITY HALLでの追加公演も決まり、12月からは15周年ツアーも予定されていますが、今のお気持ちは?

オレオレオナ
15周年を見据えて昨年から動いてきましたが、“Ace”の楽曲が入ったセットリストは過去最高で最強のGacharic Spinだと思っています。このまま15周年のZeppツアーに向けて加速できていると実感しています。

アンジェリーナ1/3
今回のツアーは自分の中でも手応えを感じています。日比谷野外音楽堂を終えて、自分の中での立ち位置が確立したような気がします。タイトルが「Ace」なので、自分たちの中で“Ace”だと思えるような曲をセットリストに入れています。今回は体力の消費量も凄い!(笑)。SOLDOUTしたファイナルではこれまでのツアーでは考えられないくらいの景色を作り、追加公演はさらに超えるようなものを届けていきたいです。

アンジーに出会えてよかった。

── 5年経って互いの印象はどのように変化しましたか?

オレオレオナ
初めて会った時、アンジーは17歳。黒髪の、少女のような子でした。私は「すっごい可愛い♡」って周りに言っていたのを覚えています。一方でこの子大丈夫かな、どのように変わっていくのかな、と思っていました。だけどガッツがあるし、人目を気にせずに一心不乱で努力する姿をオーディションで見て、この子は入るべくしてここにいるんだと思っていました。

オレオレオナ
そして5年経った今、化けたなと。元々ポテンシャルが高かったのでしょうけれど、本人が変わろうとして努力したからだと思うんです。あの時アンジーが入っていなかったら、15周年はなかったのじゃないかなと思っています。心から出会えて良かった。

アンジェリーナ1/3
嬉しいですよね。オレオさんの最後の言葉太文字で書いてくださいね(笑)。出会った時、オレオさんが一番怖かった(笑)。第一印象は明るくて受け入れ体制もしっかりしていて、歳の差のあるメンバーを迎えることに慣れているなと。だけどオーディションが進んでいくごとに厳しくて……。当時私はダメダメ酷かった。その度に毎回向き合ってくださって、見せ方や話し方のトーンまで細かく指導してくれたのがオレオさんです。今こうしてセンターに立ってカッコよくいられるのはオレオさんのお陰。私の基盤を作ってくれた人です。

アンジェリーナ1/3
そして今も感情に寄り添ってくれるし、オレオさんがいなかったらメンバーも乗り越えられなかったし、バンドとしてここまで続いていないと思う。人間性も大好きで尊敬しています。こんなに素敵な人には簡単に出会えないし、こんな素敵な人とバンドがやれているのは自分の人生においてとても素敵な事です。

── 改めて、15周年への思いを聞かせてください。

オレオレオナ
あっという間のような、長かったような不思議な感覚です。15年の中でメンバーチェンジなどもあっていろんな出会いがありました。はな、F チョッパー KOGA、TOMO-ZOに支えられてきたし、10周年のタイミングでアンジーとyuriが入ってきてくれた。このメンバーになって過去最高のメンバーでやれていると思ってるし、ファンのみんなにも沢山支えられてきました。15周年イヤーは今まで以上に感謝を届けていきたいです。

アンジェリーナ1/3
5年前には想像できなかった未来が作れている気がします。15年いるメンバーと5年しかいないメンバーでは感覚も見てきた景色も違っていて、私で大丈夫でしたか?というような不安もありましたが、オレオさんが“今のメンバーが最強”って言ってくれた事が答え。5年前に私とyuri を迎えてくれたメンバーには言葉では言い尽くせないものがあります。素敵なメンバーと活動ができていることに感謝しながら、この年を大事にしていきたいです。

インタビュー・文:ごとうまき