2025年、劇団☆新感線が45周年という節目を迎える。その記念すべき年に、豪華キャストが集結した「チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』」が大阪・フェスティバルホールで上演される(2025年10月9日(木)~10月23日((木)全17回公演)。
本作は、劇団の看板俳優・古田新太をはじめ、高田聖子、粟根まこと、橋本じゅん、羽野晶紀、橋本さとしといった劇団員に加え、ゲストとして小池栄子、早乙女太一、向井理という新感線を知り尽くした面々が揃う、まさに“祭り”にふさわしい公演だ。 今回は、主演の古田新太さん、小池栄子さん、早乙女太一さん、向井理さん、そして演出のいのうえひでのりさんが取材会に出席し、本作の魅力と稽古場の熱気について語ってもらった。
物語の舞台と情熱の演劇人たち
本作は、劇団☆新感線の座付き作家・中島かずきによる書き下ろしで、江戸時代を舞台に歌舞伎の名作『忠臣蔵』を上演しようと奔走する演劇人たちの物語。幕府の弾圧下で、芝居に情熱を傾ける彼らの姿を、劇団45年の歴史を織り交ぜたセルフパロディやオマージュで彩る。 いのうえひでのり演出の「いのうえ歌舞伎」らしい、歌、踊り、立ち回りが詰まった極上のエンターテインメントだ。
古田新太さんが演じるのは、無宿頭・弾兵衛。 「劇中劇でいろんな役をやるけど、全部弾兵衛じゃねえかよって感じ」と笑う古田さん。 役柄を自分に寄せてしまう弾兵衛のキャラクターは、古田さんの個性と相まって、観客を爆笑の渦に巻き込むこと間違いなしだ。 「面白いのか、本当に。確かめに来てください!」と、茶目っ気たっぷりに語る。
小池栄子さんが演じるのは、橋本じゅん演じる親父様に芝居を学び、江戸で花形役者を目指す活発な少女・お破。 「台本を読んだときは12~15歳の若い女の子だと思ったけど、稽古では体力勝負! 走り回ったり、アクションしたり、盾持ったり……。45歳の私がどこまで持つか、やってみないとわからない。」と笑う小池さん。 橋本じゅんとの親子役では、「じゅんさんの顔芸や熱い芝居を参考に、親子感を出したい」と意気込む。
早乙女太一さんは、芝居小屋「橘川座」の後継ぎで女方役者の夜三郎役。 「2009年の『蛮幽鬼』以来の女方ですが、演出のいのうえさんや振付の指導に沿って、丁寧に役を作っています」と語る。 13年前に小池さんと共演した際は「ひねくれ小僧だった」と振り返り、「今こうやって笑顔で共演できるのが嬉しい」と感慨深げだ。
向井理さんは、狂言作家・真狩天外と、芝居を抑圧する幕府の若年寄・藤川采女の二役を演じる。 「二役は対極にあって言葉遣いも違うからやりやすい。狂言作家中島さんの思いが詰まった役で、物語を動かすマッチポンプ的な存在。」と分析。 「これまで新感線で狐に取り憑かれたり乱丸になったりしたけど、今回は役柄が少ない(笑)」とユーモアを交えて語る。
いのうえひでのりさんは、本作を 「熱い芝居人の話だけど、チャンピオンまつりらしいお祭り騒ぎのテイストが強い」と表現。「『忠臣蔵』を上演しようとする彼らの情熱を、新感線のネタやパロディで包み、観客に笑いと感動を届ける」と意気込みを語った。
31年ぶりの全員集合と稽古場の熱気
本公演は、1994年の『古田新太之丞東海道五十三次地獄旅』以来、31年ぶりに劇団員が集結する“全員集合”の舞台。この知らせに古田さんは 「別に何も感じない(笑)。じゅん(橋本じゅん)や、さとっちゃん(橋本さとし)とはしょっちゅう会ってるし」と飄々と答えるが、稽古場の雰囲気は「芸大の学祭みたい」と楽しげだ。
ゲストの小池さん、早乙女さん、向井さんに対しても、「もう準劇団員みたいなもんだから、特別な感じはない」と笑う。
小池さんは台本について 「まるでおもちゃ箱のような本! 見たら絶対楽しいけど、演じるのは体力勝負」と語り、稽古で走り回る日々に「もっと体力をつけなきゃ」と奮闘中。
早乙女さんは「新感線の魅力は、どんな人でも楽しめること。稽古場で既に面白いシーンがたくさんある」と期待を煽る。
向井さんは「稽古場と本番のギャップがすごい。セットや衣装が入ると全く別物になる」と新感線の舞台の派手さを強調した。
新感線の魅力と見どころ
キャスト陣に新感線の魅力を聞いた。小池さんは「大掛かりな舞台なのに、稽古場は部活みたいな手作り感。いのうえさんが演じて見せてくれるのが面白くて、毎日変わる演出についていくのが必死」と語る。
早乙女さんは「どんな人でも楽しめるエンターテインメント性」と答え、13年前の小池さんとの共演エピソードを振り返りつつ、「今こうやって共演できて嬉しい」と笑顔を見せた。
向井さんは「稽古場では想像できない派手さが本番で花開く。場当たりが長いのも新感線らしい」と語る。
古田さんは、アンサンブルの頑張りを強調。「アクション、ダンス、コーラス、加えて着ぐるみまで! 何役もこなす彼らをねぎらってほしい」と呼びかけた。 小池さんも「じゅんさんの熱い芝居や顔芸がすごい。親子役として負けないように頑張る」と意気込む。
向井さんは「小池さんがじゅんさんの芝居を見て、顔がどんどん動くのが面白い」と稽古場の微笑ましい一幕を明かした。
いのうえさんは、45周年を振り返り「目の前の一本を積み重ねてきた結果」と語る。 中島かずきとは「『忠臣蔵』をいつかやりたい」という長年の構想を共有しており、「今回はお祭り感を前面に出した」と明かす。『忠臣蔵』の知識は「ウィキペディア程度で十分」と笑いながらも、「知っておくとより楽しめる」とアドバイスした。
ファンへのメッセージ 最後に、キャスト陣からファンへのメッセージをいただいた。 古田さんは「いつもの新感線のパロディ満載で、芝居を見ない人でも楽しめる。資金は低いので(笑)、気軽に来てほしい」と呼びかける。
小池さんは「3時間半~4時間の長丁場だけど、後悔させない。ファンの期待に応えられるよう稽古を頑張る」と力強く語る。
早乙女さんは「45周年という奇跡の舞台。稽古場で既に面白いから、絶対楽しめる」と熱を込める。
向井さんは「爆発するような派手さと、芝居への熱い思いが詰まった台本。新しい新感線のスタートを感じてほしい」と期待を煽った。
いのうえさんは「近年まれに見るネタモノチックなテイスト。45年の楽しさを劇場で感じてほしい」と締めくくった。
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』は、劇団☆新感線の45年を凝縮した、まさに“祭り”の舞台だ。古田新太のユーモア、小池栄子の情熱、早乙女太一の繊細さ、向井理の冷静さ、そしていのうえひでのりの演出が織りなす化学反応は、観客を笑いと感動の渦に巻き込むだろう。10月のフェスティバルホールで、新感線の新たな歴史が刻まれる瞬間を見逃すな!
取材・文・撮影:ごとうまき