香港インディペンデント映画祭が6月19日から25日まで大阪シネ・ヌーヴォ、6月25日から7月8日まで京都出町座、7月中旬から名古屋シネマスコーレにて開催される。本映画祭は香港では13回開催されており、日本では2017年に開催されてから今年で2回目となる。大阪では全18本、京都では全25本とドキュメンタリーから劇映画と幅広いラインナップで迎え、2014年に起きた雨傘運動から2019年~2020年の激動の香港民主化デモまでの香港の‟真の姿”が本映画祭を通して見ることができるだろう。また2020年香港国家安全法の立案によっていくつかの作品が香港では一般の劇場公開が難しくなっている。そんな貴重な作品も本映画祭では見ることができ、今年はより注目されている映画祭である。そこで本映画祭の主催者であるリム・カーワイ監督に映画祭への思いやきっかけ、見どころなどについて訊くことができた。
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香港インディペンデントを日本に持ってきたきっかけ
ーー日本では2回目となる香港インディペンデントですが、日本で開催するに至った背景は?
香港がイギリスから中国へ返還された1997年、当時は一国二制度が守られ香港も経済成長し、人々は裕福な生活と自由を手にしたように思えた。しかし2010年頃から刻一刻と厳しく迫る中国政府の規制、教育やマスコミにも中国政府の息がかかるようになった。「香港から自由が奪われるのではないか?」といった香港の人々が危惧していた中、2014年6月「雨傘運動」と呼ばれる大規模デモが勃発した。
商業的な作品ではなく香港の日常や社会的テーマを含む作品が揃う
香港インディペンデントは香港映画としてイメージされがちの商業映画を上映するのではなく香港の現実的な姿、社会的なテーマを描いた作品が楽しめる映画祭だ。
前述した雨傘運動のドキュメンタリー『乱世備忘(2018)』も、間近で雨傘運動を見て体験しているリム監督にとって、あまりの生々しさリアルな状況に妙に納得したと話す。もし当時香港にいなかったらこの状況を想像もできなかったと。
ーー「雨傘運動」は世界中のニュースに取り上げられましたよね。そして世界中の人々が驚いた。思い描いていた香港じゃないって!
雨傘運動では若者、学生が目立った。『乱世備忘(2018)』ではそこに参加する彼たちの背景、青春が描かれている。参加した若者たちの多くは政治にさほど興味もなく、デモに参加することによって自分の居場所を構築したり、人生を考えるきっかけとなっていた。またデモを通じて友情が生まれたり、ナンパをして楽しんでいる者たちもいたそうだ。
ーー2019年の香港民主化デモのドキュメンタリー作品が話題を呼んでいますね。
映画を通して伝える香港の姿
ーー政治的なテーマの作品がマスコミなどに取り上げられますが、そうでない作品のほうが多いですよね。香港の日常を描いた作品やラブストーリーも気になります。
前述した3作品以外はデモに関することは描かれていないものの、全ての作品にはデモの影が残っている。200万人が参加したデモだ、人々の日常生活や仕事に影響が出ないわけがない。これが商業映画であればデモに参加した人々やデモによって受けた影響など、現実的なことは映さないと監督は話す。
監督たちの思い
また本映画祭の作品のうちの半分近くの作品を女性監督が手がけている。女性監督の活躍が目まぐるしい昨今、香港のデモの様子を近くで撮る彼女たちの勇敢な行動と才能からも目が離せない。
2017年第1回開催時に来てくださった観客の多くは香港映画ファンや香港の政治に興味のある人、あとは私のファン(笑)が多かったのですが、それだけじゃ勿体ない。香港に関心のない人、香港映画に興味のない人も沢山来てもらえたらこんなに嬉しいことはないですよ。映画を通して香港や香港の未来に興味・関心を持ってもらい、香港の面白さや魅力を知ってもらいたいですね。沢山の方に来ていただけることを楽しみにしています。
香港映画と言えばジャッキー・チェンをはじめとする エンタメ要素の強い映画のイメージがありませんか?香港は資本主義の最先端を走ってきている為、実はアートより経済優先。社会問題や日常を描いたアート的な映画は香港人はあまり好まないんです。
しかし香港が返還された20年ほど前から社会問題、老後問題やラブストーリーなどといった“香港の日常”を描き、映し出した作品を撮る監督が多く出てきました。彼たちは自分たちでお金を集めるまたは政府からの助成金で制作していて、こうした映画を制作し観てもらうために香港インディペンデントは13年前から開催しているんです(「影意志」が主宰)。