青森県・津軽を舞台に、メイドカフェで働く津軽弁少女の奮闘と成長を描いた人間賛歌
「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が越谷オサムの同名小説を実写映画化した青森を舞台にした青春ドラマ。
あらすじ
弘前市の高校に通う16歳の相馬いと(駒井連)は幼い頃に母を亡くし、三味線奏者の祖母(西川洋子)と民俗学者の父(豊川悦司)と暮らしている。感情をうまく出せず、さらに訛りの強い津軽弁と人見知りな影響もあってか友達も作れずにいた。ある時、高時給と可愛い制服に目が眩み、メイド喫茶で働くことに。いとは先輩であるシングルマザーの幸子(黒川芽以)や漫画家を目指す智美(横田真悠)、店長(中島歩)に温かく迎えられ、少しずつ自分の居場所を見出していった。そんなある日店のオーナー(小坂大魔王)が逮捕され、店の存続危機に陥る。いとは特技の三味線×メイドで店を救いたいと提案するがーー。
なんといっても脚本が素晴らしい!!
16歳の少女がメイド喫茶でのアルバイトを通して仲間との絆、友情、家族との関係を深める青春ストーリーなんだけど、ここには親子愛、祖母の愛、友情、仲間、伝承、そして三味線や津軽弁といったアイデンティティが詰まっている。
さらに「メイド喫茶」を切り口に、これまでの男女差別、女性が男性に媚を売ることに対して静かに批判していて(時代は確実に変わってきている)、同時に老若男女問わず楽しめる新しいコミュニティの形を提案している。まさにこれからの時代に相応しい描き方で好感を持てた。116分の中であらゆるメッセージ性が凝縮された素晴らしい作品だ。
オール青森ロケ
映画の良さを実感するのは地域が一体となって作品を創り出せるところである。今作もエンドロールで青森のボランティアの方たちの名前が沢山流れ、映画は地域の多くの人たちの思いや力で成り立っているということを再認識した。私は本作で初めてまともに津軽弁を聞いたのだけど。ネイティブなほんまもんの津軽弁は全く聞き取れない(できれば字幕をつけて欲しかった(笑))、しかしここにも青森出身の横浜監督の思いがあって、青森弁のわからない人たちに媚びたくなかったとのことだ。
それにしてもいとを演じた駒井蓮ちゃんの三味線の上手さ、そして透明感には圧倒される。青森出身の監督と女優たちが紡ぐ人間賛歌、心温まる作品だ。
いとみち
文/ごとうまき