芥川賞作家・田辺聖子さんの短編小説が原作、2003年に妻夫木聡さん・池脇千鶴さん主演で実写映画化もされた『ジョゼと虎と魚たち』が、アニメーション映画となって登場。今作は原作の良さを残したままの現代の恋愛ストーリー『ジョゼと虎と魚たち』となっている。2020年12月25日に公開された本作は2021年1月18日のランキングにはランクインはしていないものの、評価やレビューは頗る良く、鑑賞した人たちからは絶賛の嵐である。 リアルな日常感やきらきらと輝く青春の日々、二人の不器用な恋愛が色鮮やかに瑞々しく描かれており、アニメーションならではの良さが生かされている。
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作品紹介
あらすじ
幼いころに両親を亡くし、車椅子での生活をしているジョゼ。彼女は外に出る日を夢見て、絵を描きながら祖母のチヅと一緒に暮らしている。夜にチヅと散歩をしていたある日、危うく坂道で転げ落ちそうになった ところを、大学生の恒夫に助けられる。
大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れを いつかその目で見るという夢を追いかけ留学費用を捻出するためにバイトに明け暮れていた。
そんな恒夫にチヅは、”ジョゼの注文を聞いて彼女の相手をする”というバイトを持ちかけ働くことになるが、口が悪いジョゼは恒夫にキツく当たり、心を閉ざしていた。しかし恒夫もジョゼに言われるままではなく、真っすぐに彼女にぶつかっていく。
そんな二人のやり取りの中から見え隠れするそれぞれの心の内と、恒夫を『管理人』と呼ぶジョゼの心の変化、少しずつ縮まっていくふたりの心の距離。恒夫との触れ合いを通してジョゼは徐々に心を開いていき、夢見ていた外の世界へ 恒夫と共に飛び出すことになる。物語が進むにつれてある困難が待ち受けているのだが、彼らを取り巻く人々の人間模様や二人の恋、恒夫の留学など、どのように展開していくのか注目である。
声の出演・スタッフ
恒夫の声を演じるのは、若手人気実力派俳優の中川大志。ジョゼには、清原果耶が演じる。
監督は、『おおかみこどもの雨と雪』助監督や『ノラガミ』シリーズの監督を手掛けたタムラコータロー、脚本を桑村さや香、キャラクター原案を絵本奈央、キャラクターデザイン・総作画監督を飯塚晴子が担当している。
アニメーション制作は数多くの人気作を手掛けてきたボンズ。主題歌には、約5億万回のMV総再生回数を誇るEveが担当している。 本作の内容にしっかりと重なる歌詞や美しいメロディーが観る者たちの心を掴む。
本作の見どころ
①「ジョゼの成長していく姿」と「二人の互いに対する想い」の描かれ方に注目!
ハンディギャップを抱えているジョゼは家に閉じこもり、心も閉ざしていた。そんな彼女が恒夫と出会うことによりどんどん変わっていく姿に注目してほしい。『管理人』から『恒夫』に変わっていく過程やジョゼの人間臭さ全開なところにも好感がもてる。等身大のジョゼがそれぞれ自分たちと重なるのではないだろうか。彼女の絶望の中で掴む希望や逞しさ、拗ねていじけるところ、素直になれないところ、、、そんなジョゼの全てが愛おしくもある。
②ピュアな恋愛模様
一言で、なんせ純粋。胸キュンしないわけがない。
大阪が舞台!色んな大阪を発見できる
本作は大阪が舞台となり、大阪の代表的なスポットなどが多く登場する。例えば梅田のヘップファイブ観覧車、駅前、ミナミ、道頓堀やあべのハルカス、天王寺動物園、海遊館・・・・大阪になじみのある人が見ると思わず反応するはずだ。また恒夫が通う大学は大阪大学の吹田キャンパスがモデルとなり、図書館は箕面市立図書館がモデルになっているとのこと。 大阪メトロもリアルに描かれていてこれは聖地化するかも!?関西人としてはちょっと、いや、嬉々として見入ってしまった。
レビュー
得点は94点!
良かった点
原作や、実写映画と異なり、本作では恒夫が主体的に描かれていていた。足が不自由なジョゼに対して特別に接するというわけではなく、ごく自然にあくまでも「個性」として受け止めている感じも受け取れる。
テーマ
人との出会いによって変わっていく、そして外の世界へ飛び立つ勇気、挫折してもやり直せるというメッセージ性を感じた。 ジョゼは車椅子という足が不自由というハンディギャップを背負っているが、誰かしら何かしら弱点短所を持っていて、一歩踏み出せず足踏みしてしまう場合がある。そんな人たちに対してもエールを、力強いメッセージ性を感じた。
ひとつだけ減点の部分は・・
一つマイナス点を挙げるとすれば、後半シーン。色んな意味で現実では難しいシチュエーションだったためにそこはマイナス評価となった。
とはいえ、のびのびとした世界観とキラキラした青春の日々をスクリーン越しから思い存分感じられることができ、私がこの一年で観たアニメーション作品の中ではぶっちぎりの一位である。アニメーションならではの情緒溢れる豊かで瑞々しい世界観を堪能してほしい。観て損はないと自信を持って言える作品だ。
「ジョゼと虎と魚たち」作品概要
文/ごとうまき