【インタビュー】歌手・チョン・テフ、空白の3年を経て「命」のステージへ。新曲『愛しさでボロボロ』に込めた不退転の決意

インタビュー

2025年1月、劇的なステージ復帰から1年。韓国から16歳で芸能界入りし、走り続けてきたチョン・テフが、約3年というあまりにも長く、そして深い休養期間を経て、ついに待望の新曲『愛しさでボロボロ』をリリースする。闘病生活、90キロまで増えた体重、そして自分自身を見失いかけた絶望の淵から、彼はどのようにして再びマイクを握る力を取り戻したのか。再始動の幕開けとなる10作目のシングルに込めた想いを、赤裸々に語ってもらった。

「歌は自分の命そのもの」だと気づいた絶望の淵

――約3年ぶりの新曲リリース、本当におめでとうございます。まずは今、改めてこの新曲を世に送り出す率直な心境をお聞かせください。

テフ
ありがとうございます。16歳でこの世界に入ってから、これまで一度も休んだことがなかったんです。スケジュールが埋まっているのが当たり前でした。それが、コロナ禍に加え、自分自身の体調を崩してしまって……。この数年間、歌の仕事から離れている間は、正直に言ってかなりネガティブになっていました。

――華やかなステージから一転、療養生活を余儀なくされたわけですね。

テフ
はい。今までずっと、皆様の前でパフォーマンスをすることで自分を保ってきましたから。「自分はもう、この仕事をするために生まれてきたのではないのか」と自暴自棄になったこともあります。でも、その空白の時間があったからこそ、確信したんです。「この仕事は、自分の命と一緒なんだ」と。今回の新曲を世に出せるということは、僕にとって再び命を吹き込まれるような、そんな特別な意味があります。

――2025年1月にステージ復帰されてから1年が経ちました。全国のファンの前で歌い、改めて「歌の力」をどう感じておられますか?

テフ
 実は、復帰当初は事務所が僕の体調を考慮して、あえてスケジュールを絞ってくれていたんです。少しずつ声を出し、少しずつ人の前に立つ練習をさせてくれた。そこで感じたのは、ファンの方々との絆の変化でした。これまでは、僕がお客さんにパワーをあげる側だと思っていたし、「テフさんの歌で生き返ったよ」という言葉をいただくのが誇りでした。でも今回は逆だったんです。

――逆、といいますと?

テフ
お客さんから「頑張ってね」「無理しないでね」と励ましの言葉をたくさんいただいた。どん底まで落ち込んでいた僕に、ファンの皆様がパワーを注いでくれたんです。休んでいる間、SNSからも距離を置いていました。弱っている自分、傷ついている自分を見せたくなかった。そんな僕を待っていてくれた人たちがいたことが、どれほど支えになったか分かりません。

体重90キロ、膝が上がらない……「プロとしての自覚」を取り戻すまで

――休養中、一時は体重が90キロまで増えたとお聞きしました。

テフ
 そうなんです(苦笑)。2020年に『冷たい雨』を出してすぐコロナ禍になり、北海道での大きなステージも中止。そこから体調が悪化して、ついには肺炎で救急車で運ばれ、2ヶ月入院しました。「すぐ治る、すぐ戻れる」と言い張っていたのですが、事務所の社長は「今のままでは先生方やスタッフ、何よりお客様に失礼だ。一度しっかり休みなさい」と。

――そこから3年の月日が流れたのですね。

テフ
その間は歌うことも練習することもありませんでした。ただただ、健康を戻すことだけに集中して。2025年に久々にイベントに立ったとき、当時の衣装が全く入らなかったんです。膝から上が上がらない。「えっ、嘘でしょ?」と。その時、初めて自分の姿にショックを受けて、プロとしての自覚が再び燃え上がりました。

――そこからのダイエット、そして新曲制作への流れは凄まじい執念を感じます。

テフ
昨年の7月頃、事務所の社長から「新曲を出す」と言われたときはまだ90キロ近い体型でした。徳間ジャパンの制作スケジュールもギリギリ。でも僕は、目標が決まると向かっていく性格なんです。「1週間に1キロ落とそう」と決めて。俳優の鈴木亮平さんが役作りのために肉体を変えるというインタビューを昔見て、「男の根性で見せてやる」と自分を奮い立たせました。今の自分があるのは、あの時厳しくも温かく見守ってくれた社長のおかげだと感謝しています。

新曲『愛しさでボロボロ』:西城秀樹、沢田研二の熱量を目指して

――そして1月14日にリリースされた記念すべき10作目『愛しさでボロボロ』。大人の男の哀愁が漂う、非常に切ない楽曲ですね。

テフ
今回も、叶わぬ愛、男女の衝撃的な恋物語というテーマは崩していません。僕はこういうテーマの曲が合っているのでしょうね。ただ、レコーディングにあたって僕から一つだけリクエストをしたんです。いわゆる“不倫”を思わせるテーマではなく、もっと情熱的な、男目線の愛を歌いたいと。

――作曲の徳久広司先生、編曲の伊戸のりお先生との制作はいかがでしたか?

テフ
徳久先生は、僕にとっては神様のような存在です。先生はいつもギター1本でデモテープを録られるので、アレンジがどうなるかは最後まで分からない。でも、今回は僕から「途中で転調してほしい」「70年代の歌謡ポップスのような、ドラマチックなアレンジにしたい」と提案させていただきました。

――それは勇気のいる提案だったのではないですか?

テフ
そうですね。でも先生方は面白がって受け入れてくれました。この曲は2分59秒しかないんです。今の時代には珍しく短い曲ですが、その中に西城秀樹さんや沢田研二さんのような熱いエネルギーを詰め込みました。

――レコーディングでのエピソードも印象的だったとか。

テフ
最後のサビのところで、徳久先生から「テフちゃん、もう自分が狂ってるみたいに歌ってくれ」と一言投げられたんです。正直、エネルギーを使い果たして限界でしたが、その「狂ってる」という言葉に身を任せて歌い切りました。終わった後、先生が「テフちゃん、これが正解だった」と嬉しそうな顔で言ってくださったとき、自分自身の過去もすべて報われた気がしました。

カップリング曲『Story~たった一度の物語~』に込めた人生の応援歌

――カップリングの『Story~たった一度の物語~』についても教えてください。

テフ
これは、僕のこれまでの人生を知ってくださっている円 香乃先生が詞を書いてくださった「人生の歌」です。これまでは悲しい恋の歌が多かったのですが、今回は僕自身の歩みとも重なる、励ましのメッセージが込められています。

――「山あり谷あり」の人生を肯定してくれるような曲ですね。

テフ
そうですね。日本には「山あり谷あり」という言葉がありますが、人生って本当にそうだと思うんです。僕自身も絶望を味わいましたが、この曲が皆様にとっても、困難を乗り越えるための応援歌になれば嬉しいですね。

13年目の再出発、47都道府県へ歌を届けに

――2026年はデビュー13年目を迎えます。今後の活動への抱負をお願いします。

テフ
10周年のときは何もできずに過ぎてしまいましたが、この3年のブランクを埋めるべく、今は新人のような新鮮な気持ちでいます。2017年にはバンドを連れて全国ツアーを回りましたが、またあのように全国の皆様の元へ直接、歌を届けに行きたい。それが2026年の大きな目標です。

――最後に、ずっと待っていたファンの皆様へメッセージをお願いします。

テフ
長い間、心配をかけてごめんなさい。そして、待っていてくれて本当にありがとうございます。今の僕は、以前よりも心が軽く、ポジティブです。今回の『愛しさでボロボロ』には、今の僕のすべてを、魂を込めて吹き込みました。この曲を聴いて、僕と一緒に新しい物語を始めてくれたら嬉しいです。ステージで、また笑顔でお会いしましょう!

インタビュー後記:かつてのシャープな印象はそのままに、どこか以前よりも深く、温かいオーラを纏っていたチョン・テフ。言葉の端々に滲むスタッフやファンへの感謝は、彼がどれほどの闇を見て、そこから這い上がってきたかを物語っていた。新曲は、単なる歌謡曲ではない。一度立ち止まった男が、再び命を懸けて放つ「叫び」そのものである。

インタビュー・文・撮影:ごとうまき