【インタビュー】黒川真一朗『男の無情』が切り拓く、大人の演歌の新しいカタチ

インタビュー

演歌歌手・黒川真一朗さんの新曲「男の無情」が2025年12月3日に発売された。2023年にデビュー20周年という大きな節目を越え、23年目のさらなる飛躍を誓う黒川さん。新曲に込められた思いから、意外な素顔が垣間見えるプライベート、そして25周年に向けた展望まで、たっぷりとお話を伺いました。

「女々しくて……」のフレーズに込めた、不器用な男の情けなさと覚悟

――新曲『男の無情』は、これまでの黒川さんのイメージを覆すような、骨太な「王道演歌」という印象を受けました。

黒川
ありがとうございます。実は、ここ5作ほど「優しい、あるいは少し弱い男」がテーマの作品が続いていたんです。ですので、今回はガラッと変えて「できるだけ男っぽい曲を」というコンセプトからスタートしました。男の矜持というか、弱さや情けなさを噛み締めながら生きている主人公を描いています。僕らの世代は「男は泣くな、強く生きろ」と言われて育ってきましたから、同世代の方には特に、胸に熱く込み上げるものがある作品になったんじゃないかなと思います。

――作詞は菅麻貴子先生ですね。女性の感性で描かれる男心はいかがですか?

黒川
菅先生には「本当によく男の気持ちがわかりますね」とお話したんです。先生も「女性の気持ちを描くより、男の気持ちを描く方が好きなのよ」とおっしゃっていて。当初はもっと硬派な、100%男っぽい詩だったんです。ところが、そこに水森英夫先生(作曲)が「どうしてもこの言葉を入れたい」と付け加えられたのが、あの印象的な「♪女々しくて 女々しくて」というフレーズでした。

――そのフレーズ、一度聴いたら耳から離れません。

黒川
正直、最初は戸惑いました(笑)。せっかく「男っぽい曲」でお願いしたのに、また「女々しい」に戻っちゃうのかな、と。でも水森先生が「ここを一番耳に残るメロディーにするんだ」とこだわってくださって。実際に歌ってみると、「あぁ、俺は女々しいな……」と自嘲する主人公の姿が目に浮かぶんです。今までの僕の作品にはなかった新しい深みが出たように感じています。

――黒川さんご自身も、主人公に共感する部分はありますか?

黒川
ありますね。僕も静岡から上京してこの世界に入りましたが、地元では妹夫婦が親の面倒を見てくれているんです。「二世帯住宅で親を任せきりにしている」という申し訳なさがどこかにあって。また、弱音を吐きたくても立場上なかなか言えない……。そんな葛藤は、歌いながら自分自身を重ねてしまいます。男性だけでなく女性の皆さんにも、「本当は触れられたくない、自分だけの心の痛み」ってあると思うんです。そうした部分に寄り添えるテーマですね。

カップリング曲『北の終着駅』へのこだわり

――カップリングの『北の終着駅』も、非常にドラマチックな旅情演歌ですね。

黒川
こちらは北海道が舞台です。青森までは作品で行ったことがあったのですが、北海道は今回が初めて。実は、レコーディングの段階ではどちらをA面にするか迷ったくらい、僕自身しっくりきていたんです。別れた女性を追いかけて北へ向かうという、演歌の王道を行くストーリーで、リズムもテンポもすごく歌い心地が良い。カラオケ好きの方には、こちらの方が「歌いごたえがある!」と喜んでいただけるかもしれません。水森先生からは「こっちは好きに歌え。いつもの黒川真一朗の歌い方でいいぞ」と言っていただきました。

――水森先生からはどのようなアドバイスがありましたか?

黒川
『男の無情』は「あんまりニコニコして歌うな」と釘を刺されました(笑)。つらさを噛み締めて、心に秘めている男になりきれと。ただ、演じすぎると歌がどんどん暗くなってしまうんです。ですので、声のトーンは明るさを保ちつつ、フレーズごとに気持ちを切り替えて歌うように意識しています。特に“女々しくて”の部分は、ドロドロしすぎないよう、あえてサラッと流すのがコツですね。

ハプニングだらけのミュージックビデオ!?

――ミュージックビデオ(MV)もとても素敵な仕上がりですね。ただ、裏話があるとお聞きしました……。

黒川
本当は2026年の2月頃の発売予定で動いていたのが、急遽12月発売に早まったんです。衣装もそれに合わせて作っていたのですが、納品されたのがなんと撮影の前日! 完璧だと思って試着したら、ウエストが10センチも合わなくて(笑)。

――10センチ! それはどうされたんですか?

黒川
後ろを洗濯バサミ10個くらいで止めて撮影しました(笑)。だからMVをよく見ると、この衣装のシーンでは絶対に後ろを向いていないんです。後ろ姿のカットは別の衣装に着替えて撮るという、必死の工夫がありました。今はもう作り直しましたけど、あれはある意味「お仕置き」だったのかもしれませんね。

――他にも大変だったシーンはありますか?

黒川
ソファの「背もたれ」に座ってほしいという演出があったんです。でもそこに座ると足が床に届かなくて、つま先立ちの状態。照明の調整などで「そのまま30分動かないで」と言われた時は、足がつりそうで冷や汗をかきました。皆さんに迷惑をかけちゃいけないと必死で耐えましたが、僕の「忍耐強さ」があの映像には凝縮されているかもしれません(笑)。

プライベートの癒しは「メダカの大家族」と「アロマ」

――多忙な日々の中、今の黒川さんの癒やしは何でしょうか?

黒川
今は「メダカ」ですね。コロナ禍で何か生き物を飼いたいなと思っていた時、お祭りでメダカの卵が200匹分くらいついたスポンジを1000円で見つけたんです。それを孵化させたのが始まりで、今はもう300匹くらいの大所帯。赤ちゃんはまつ毛くらいの細さなんですけど、一ヶ月もすると立派なメダカになる。我が子のような愛着がありますね。

――300匹! 冬場のお世話も大変そうですね。

黒川
冬越しが難しいんです。以前、春先に水替えをしたら、エビだけが増えてメダカが30匹くらいに減っていたことがあって……。ショックだったので、今年はベランダにビニールハウスを自作して守っています。

――喉のケアや体調管理で、最近ハマっていることはありますか?

黒川
「ユーカリのアロマ」です。以前、美容院でミントの香りに癒やされたのがきっかけで調べ始めたのですが、僕はユーカリの香りが一番深く眠れるみたいで。寝る前に枕元のタオルに一滴垂らすと、ぐっすり眠れるんです。年齢を重ねるごとに眠りが浅くなりがちですが、これのおかげで助かっています。あとは定番ですが「大根はちみつ」を作って飲んだり、24時間加湿器を回したり。あまり神経質になりすぎない程度に、喉をいたわっています。

2026年、そして25周年に向けて

――2023年に20周年を迎え、2026年はさらなる飛躍の年になるかと思います。今後の目標を教えてください。

黒川
気づけばもう歌手生活23年目。1日1日があっという間ですが、まずはこの新曲『男の無情』と『北の終着駅』を、一人でも多くの方に届けることが一番の目標です。発売して間もないですが、すでにカラオケで歌ってくださる方の声も届いていて、「今までの黒川さんと雰囲気が違うね」とポジティブな反応をいただけているのが嬉しいですね。あと2年で迎える25周年に向けて「これが黒川真一朗の代表作だ」と胸を張って言える作品に育てていきたいです。

――ライブ活動にも力を入れていらっしゃいますね。

黒川
「アフタヌーンライブ」という定期公演を続けていて、もう15回を数えます。ここでは、普段の僕のステージでは歌わないような、ファンの方からのリクエスト曲――例えばジャズやポップス、時には苦手な英語の歌にも挑戦しています(笑)。「ここだから見せられる新しい顔」を大切にしたい。これからはこの活動を大阪や名古屋など、全国の皆さんにもお届けできるよう、規模を広げていきたいと考えています。

――最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。

黒川
いつも温かい応援をありがとうございます。新曲『男の無情』は、男の弱さをさらけ出しつつ、明日へ向かう強さを込めた一曲です。新しい黒川真一朗をぜひ感じてください。2026年も全国を細かく回らせていただきますので、会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしています!

インタビュー・文・撮影:ごとうまき