【ニュー歌謡×演歌で更なる進化。】天童よしみインタビュー「若い人たちの力を借りながら、もっと可能性を広げていきたい」

アーティスト

聴く人の魂を揺さぶり、今も変わらない深みのある声は、時に哀愁を誘い、勇気を与え、希望を抱かせてくれる。2022年にはデビュー50周年を迎え、2023年2月には映画『湯道』で銀幕デビューを果たすなど、果敢に挑戦し、絶えず進化を続ける演歌の女王・天童よしみさん。そんな彼女に今回2回目となるロングインタビューを行った。2023年5月24日に発売された新曲『星見酒』のこと、コンサートのこと、そして天性の歌声を維持するための秘訣などを聞いた。前回よりも更に深く、天童さんの魅力に迫りたい。

天童よしみが届ける「おつかれさま」

── 今作のテーマは″酒″。前作『帰郷』に続き、作詞を松尾潔さん、作曲を本間昭光さんが手掛けられました。これまでとはまた違った雰囲気の曲調ですね。

天童
これまでオリジナル曲や昭和の名曲など沢山歌ってきましたが、『星見酒』はこれまでに歌ってこなかった新しい曲調で“ニュー歌謡”といった世界観になっています。本間さんは、私の声、歌い方、雰囲気など全部掴み取ってくださっているので、私の一番ベストな声が出るキーの高さや、低音の響きを強調して作ってくださいました。この曲で低音の心地よさ、厚みのある高音の歌声を感じていただけるのではないでしょうか。私のベストを引き出してくださる本間さんと出会えて良かったって思っています。

──この歌にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?

天童
コロナ禍で大変だったこの3年、皆一緒に頑張って乗り越えてきましたが、その頑張った人たちに贈る歌だと思っています。歌詞にある“遮二無二(しゃにむに)歩き”という言葉は、これまで歌ったことがありません。一生懸命を超えた言葉だから、より心打たれます。“忘れられない日もあれば”の部分は、自分にも同じような経験があるので、そのまま気持ちを込めて歌っています。悔しい経験をした人、一生懸命頑張ってきた人たちにこの歌が届くといいなと思っています。

──同じ酒をテーマにした曲でも、カップリング曲の『おんな酒じかん』は、男うたの『星見酒』とは対照的ですね。

天童
久々に会った同級生や女友達とお酒を飲みながら語り合いたい、という思いが込められた歌詞ですが、相手は母で「これからも長生きしようね」という親子の語り合いでもいいのかなと。私はお酒をあまり飲まないのですが、仲の良い同級生と“食事でもしよう”“話そう”ってよくLINEでやりとりをします。まだ実現していないのですが、この歌を歌うと、その子と会っているような気持ちになるんですよね。語りかけるように、優しい気持ちを込めて歌っています。

故郷・八尾が繋いだ縁。

──今回のレコーディングはいかがでしたか?

天童
曲をいただいてから、ある程度歌う設定を自分で考えて、レコーディングに臨みました。いざレコーディングに入ると、本間さんはとても自由に歌わせてくださいました。「ニュー歌謡だから、天童さんが生み出していけば良い。ニュー歌謡と演歌の融合って面白いじゃないですか!」って。そんな話し合いもできる作家さんとはこれまでに出会ったことがないんですよ。本間さんとはいろんな話をして打ち解けられる。いつも最高の雰囲気になる。だから、なかなかレコーディングも始まらないんですよ(笑)。

──お二人は同じ八尾出身とのことで、より盛り上がるのでしょうね。

天童
雑談が長くて、一つ話すとどんどん話が広がっていくんですよ。本間さんも私も八尾には滅多に帰れないのですが、話題によくあがるのは八尾で過ごした小さい頃の思い出。年代は違うものの、大抵似たり寄ったりの場所で過ごして遊んでいました。一番驚いたエピソードは、八尾の大聖勝軍寺の“成功の木″の話。“その木の上に登ると出世する″という言い伝えがあって、私も子どもの頃に登って、木の枝に腰掛けて、青空を眺めていた思い出を本間さんに話しました。そしたら本間さんも同じことをしていたって!!大都会の東京でレコーディングしながらこんな話ができるなんて、感慨深いです。

── 8月4日(金)には「天童よしみコンサート2023〜あなたの大切な街へ、50年の感謝を届けたい〜」がプリズムホールで開催されます。地元・八尾でのコンサートには格別な思いがあるのではないでしょうか?

天童
昨年発売した『帰郷』を地元で、“ありがとう”という思いを込めて歌える場所です。だけど地元ゆえに、知っている人も大勢来てくださるので、逆に緊張したりもしますよ。50周年記念アルバム『帰郷』に収録されたオリジナル曲や、これまで歌ってきた『昭和演歌名曲選』の中からもお届けできたらと思います。

歌に更に真剣に向き合うようになったこの5年

──天童さんの歌声、声量は若い頃からほとんどお変わりありません。コンサートで歌声を聴いたお客さまも、その声量に驚かれる方が多いとか。それだけしっかり喉を労っておられるのですね。

天童
喉に関しては、とにかく乾燥しないように気を付けています。喉も肌と同じなんですよ。大体、暖房と冷房の風で喉をやられるので、空調から喉を守るために試行錯誤しています。真夏や湿気の多い日は、一気に冷房をかけて湿気を取り払い、その間湯船に浸かって汗を出し、うちわで扇いですぐに寝る。タイマーはかけずに完全に切るんです。寝る時も喉は温めています。あの手この手で喉を守る。私だけでなく、歌手の皆さんは大変です(笑)。

──さらにこれからツアーも始まるとのこと。体力作りや健康維持も大切ですよね。

天童
確かに体力勝負ですし、コンサートでは異常なほどの汗が出ます。だけどそれをお客さまに見せてはいけないので、体力はつけるようにしています。運動に関しては無理ない範囲で、自宅の階段の3段ぐらいまでを使って昇降して足を動かしています。また、どうしても寝不足になりがちなので、睡眠はしっかりとるように意識していますね。とはいえ、寝過ぎてもダメ。声が寝てしまうので、適度に早起きして声を起こすことも意識していますよ。夜中に目が覚めたりすると、“あ〜”って声を出して、きちんと声が出ることを確認してからまた寝るんです。

── 24時間、声と歌のことを考えていると言っても過言ではないですね。

天童
考えています。その位の真剣さがないといけないと思っていますし、歌にしっかりと向き合いたいんです。45周年を過ぎた辺りから、より強く思うようになりました。もしかして、45周年が今の天童よしみのスタートラインなのかもしれませんね。“もっと良い歌を歌おう、極めよう”と心に決めたのは……。

── 45周年が一つの転機でもあったとのこと。きっかけは何だったのでしょうか?

天童
本間昭光さんとの出会いが大きいと思います。初めて本間さんにお会いしたのは5年程前。本間さんが立ち上げた「八尾フェス」でご一緒しました。八尾フェスの最後に皆で歌った『やまびこ』はとても素晴らしい歌で、本間さんが手がけられました。そして昨年50周年の時に本間さんと松尾潔さんに『帰郷』を作っていただき、今回は『星見酒』。これからも人とのご縁を大切にし、また新しい人を引き込みながら進化し続けたいと思っています。

歌は心。天童よしみが大切にしているもの。

──幅広い世代に愛される天童さん。天童さんの愛されキャラは唯一無二ではないでしょうか。

天童
私、子どもが大好きなんですよ。「VC-3000のど飴」のCMが流れていた頃は、子ども達からよく声をかけられましたね。それと、身内の子が赤ん坊だった頃からお風呂に入れてやったり、子守りをしていました。どれだけ夜泣きされても平気でした。知らないお子さんも、もちろん可愛い。お母さんに抱っこされた子どもが後ろ向いている時に目が合うと、私思いっきり変顔をするんです。そしたらケラッケラ笑ってくれる。そういうのが続いて、いつしか私は子どもに受ける顔なんだと気付いたんですよ。子どもに好かれることで、自信を持てるようになりましたし、そこから私は“愛くるしさ”を大切にしていこうと心に決めました。

──デビュー51年目の今年は、『湯道』で映画デビューをされるなど、さまざまな事にチャレンジされています。今後に向けて抱いている夢や、天童さんの信条を教えてください。

天童
気取ったり、偉ぶるのではなく、一つ頭を低くしていることが大事だと思っています。そして、今後は若い人たちとももっとコラボレーションをして、一緒に舞台を作っていきたいですね。若い方からは“天童よしみは大先輩で演歌歌手”というイメージで止まっていると思うんですが、そんなんじゃないよって伝えたい。若い人たちの考えていることや行動力は素晴らしいです。若い人達に歌のことを教えてもらったり、私も手助けしたり教えたりして、音楽の輪を広げていきたいです。今後もいろんな事にチャレンジして、幅を広げていきますよ!

天童よしみ 公式サイト (yoshimi-tendo.com)

インタビュー・文・撮影/ごとうまき