フランスでは男性が日常的に女性に花束を贈る。中でも薔薇は特別で“薔薇大国フランス”と言われるほど強く美しい多種多様な薔薇が咲き誇り、古今から人々を魅了してきた。
本作はフランス郊外のバラ園を舞台に人生崖っぷちの主人公と社会に躓いたはみ出し者達が紡ぐ奇跡のヒューマンストーリー。
あらすじ
フランス郊外で父が遺した小さなバラ園を経営する頑固者のエヴ。かつては優秀なバラ育種家としてフランス全土に名をはせていたが、愛するバラ園は今や倒産寸前。相棒のヴェラが経費削減のために手配したのは職業訓練所から来た前科者のフレッドに、中年男のサミール、そして精神的に少し不安定なナデージュという訳ありの男女3人だった。
薔薇など育てたこともない3人はエヴの足を引っ張るばかりで、前途多難。そんなある日エヴはフレッドのタトゥーと彼の前科をヒントに2つの品種を掛け合わせたバラの交配を思いつき、その新種のバラで翌年のバガテル新品種国際バラ・コンクールに挑むことを決意する。新種のバラの開発によって奇跡の人生一発逆転になるか!?
主人公エヴに「大統領の料理人」「偉大なるマルグリット」のカトリーヌ・フロが本作が長編二作目となるピエール・ピロ監督が手がけた。
フランスが誇る薔薇のスペシャリストたちが監修
世界で最も人気が高い花である薔薇、本作の中でもとびきり美しく輝く重要な存在感を放つバラの花をフランスが誇るバラのスペシャリストたちが集結し本気で監修したという。1930年創業のローズブランド・ドリュ社が主演のカトリーヌ・フロにバラの交配の過程のレクチャーや、劇中に登場するコンクールでの金賞受賞歴もある老舗、園芸のスペシャリスト、バガテル公園の関係者らがバラの交配やコンクールのシーンの監修などを事細かく行なっているため奥深い薔薇の世界観が忠実に描かれているところも見どころの一つである。
人生に花を、あなたの人生を生きなさい
何かを“育てる”ことの難しさ、バラも人も、何かを育てるって時間がかかるし根気のいること。
新種の薔薇のように、違った価値観やバックグランドを持つ人々が交わることにより生まれるものがある。「人生に大輪の薔薇が咲く」とはまさにこのこと。本作から見えるのは全く異なる者たちが目標に向かって協力し咲かせる一輪の花、それぞれの人生が交錯し一つになることにより芽生える友情や強固な絆だ。やっと東京、大阪などの映画館も開館し作品を楽しめるようになったが、「何を観ようか」と迷っているのならばまずは本作を観てほしい。薔薇のように彩り豊かなストーリーと人生に何かしら見る者の心に刺さる心温まる作品だ。
『ローズメイカー 奇跡のバラ』
文/ごとうまき