【東京国際映画祭2020】『カム・アンド・ゴー』舞台挨拶、上映会レポート

監督の「カム・アンド・ゴー」の掛け声に合わせて撮ったフォトセッション
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10月30日から11月9日まで開催されている東京国際映画祭 。11月1日、11月6日は『カム・アンド・ゴー』が上映されました。今回は11月1日の舞台挨拶、上映会、Q&Aのコーナーなどの模様をレポートします。

11月1日はEXシアター六本木で上映された

11月1日の登壇ゲスト

リム・カーワイ監督

渡辺真起子さん

桂雀々さん

兎丸愛美さん

尚玄さん

望月オーソンさん

渡辺さんが話している最中に自分のカメラで写真を撮るリム監督。リム監督のお茶目な一面も垣間見れた。

監督、そして俳優陣たちのぶっちゃけトークに度々笑いが起こり、会場内は終始穏やかで明るい雰囲気に包まれていた。

上映会開始前の監督、キャストの挨拶

上映前にキャスト陣からこの作品の見どころなどを聞きたかったのですが、そこにはある問題が・・・

渡辺真起子さん
あのー、実は私たちまだこの作品を観ていないんですね。ですから作品のここの部分に注目して欲しいとか、見どころをお伝えしようにもできないんですよね。(笑)今から皆さんと一緒にこの作品を観ます。

桂雀々さん
私は普段は落語家をしています。今回は「飯田さんという役」とだけ言われて、台本もないままで、セリフもほとんどアドリブで演じました。監督から「ここはこんな気持ちで喋ってください。こんな形で動いて下さい」ということしか伝えてもらえなかったので、どんなストーリーなのか、サスペンス?コメディなのか?全くわからぬままな状態でクランクインしました。なので今日は自分がどこに出てるか、自分を探しにきた形でございます。

雀々さんのさすがのトークの上手さで一気に会場が和む。さらに望月オーソンさんは

望月オーソンさん
ストーリーはわからないし、そして役の名前も覚えていないんですよ・・(会場内爆笑)アメリカ人と日本人のハーフの役です。皆さんと一緒に観ることを楽しみにしています。

上映終了後に行われたQ&A

あっという間の2時間40分、興奮冷めやらぬままQ&Aのコーナーに。

客席からの質問ーー

なぜこのような映画を撮りたいと思いましたか? 今回初めて見ましたが、普段我々が目を逸らしてくるなるようなテーマだなと。例えば技能実習生、留学生のビザ問題、AV女優、水商売とか日本人監督であれば映画から消し去りたくなるような場面も多くあったと思いますが、このようなディープなテーマを出した動機は?

リム監督
この映画は大阪三部作の中の三作目で、一作目は新世界を舞台にした『新世界の夜明け』、二作目は日本と韓国 香港の関係を描いた『恋するミナミ』、そして三部作目がキタエリアで日本と外国との関係を描こうと決めていました。 この10年で外国人観光客は増えて、大阪の状況は大きく変わりましたよね。日本に来る外国人観光客はとても楽しんでいます。だけど日本の最貧困の女性の実態、闇を皆さん知っていますか?

皆んな自分のことにしか興味がない、自分のことでいっぱいいっぱいで他人には興味がないんです。私はそれを批判するつもりはありませんが、これが今の現状なんですよね。

この作品ではそれぞれストーリーの登場人物たちが街ですれ違うシーンも多々ありますが、みんな気付かない。まるでパラレルワールドを生きているかのような。外国人と日本人のズレ、リアルを描いてみたかったんです。

矢田部さんーー渡辺さんはいろんな監督とお仕事をされていますが、リム監督の演出方法をどう感じられましたか?

渡辺真起子さん
インプロビゼーションには慣れているので、そこはあまり問題ありませんでした。リム監督が大阪キタの街を完璧に把握されているので街のステッチがとても細かく映し出されています。私自身は何を演じれば良いかというのがスムーズに出来ていたと思います。 例えばお弁当のシーンなど、自分の役を演じ切るのに時間が限られていますが、その時間の中で監督とセッションしながら演じて行くのは楽しかったですね。

リム監督
20日間の撮影期間、キャストの多くが2から3日と短くハードスケジュールでしたが、すごく楽しくて、もっと皆さんと映画撮りたいなと思います。

渡辺真起子さん
それはどうかな?(笑) 嘘うそ。笑

初日、監督が迎えてくださったんですが、撮影前、監督が死神のような顔をされていて(笑 )脚本もプロデュースも演出も段取りも全てリム監督が担っていた。よくこれだけの物量を組まれたなと。尊敬します。

作品を観た感想

桂雀々さん
私が演じた飯田さんは頑固おやじでしたね(笑) 千原せいじさんが演じた刑事さんは美味しい役でしたよね。緩和剤として笑って楽しめました。 そして、人間模様、大阪の人間の濃さを感じてもらえたのでは? 一つ提案として思うのは、今後は大阪のおじさんがおばさん化、おばさんがおじさん化していくところ、そういう姿を一般人で撮ると本当に面白いではないかなと思いますね。 大阪の人間と場所、東京にはないところをより多くの人に知らしめて欲しいなと思いますね。 そして、この作品をきっかけにリム監督の良い役目ではないかなと。どうぞこれをきっかけに一つ大阪を愛して下さい。よろしくお願いします。 良い作品に出会えて良かったです。

兎丸愛美さん
リム監督のすごいところは、私、映画の現場に入るまで他のスタッフさんと一切連絡を取っていないんですよ。 全てリムさんと直接やりとりし、集合時間・場所やお金の話とか諸々全部リムさんがやってくださっていて・・・

渡辺真起子さん
そうなんですよ。監督という仕事が始まるので是非やめてくださいと撮影に入る前に言いました。

リム監督
桂さん以外、ベトナム人や香港人もすべて僕が彼らとやり取りしていました。集合場所、ギャラの交渉、飛行機のチケットの手配もホテルの予約も全てしていました。なぜかというと準備する時間がとても短かった。そしてスタッフも少なかったんですよね。あと自分でやった方が早いし、すぐに決められる。だから自分でやっちゃった。

矢田部さんーーそれで死神のような顔になっちゃったと(笑)

(会場内笑い)

最後にリム監督から

リム監督
平成から令和に変わる前の大阪を撮っています。 大阪で撮った話ではありますが、東京でこうして観てもらえることが面白くて 、このズレが面白いなと思います。大阪人より早く観てもらえてよかったです。 皆さん今日はお越しいただきありがとうございます。

おこぼれバナシ

今回打ち上げにてさらにキャスト、スタッフの方 からもお話を聞くことができましたので、ご紹介します。

語学学校の校長先生を演じる森本のぶ さんにお話を伺いました。森本のぶさんは11月6日の上映会のゲストとして登壇されています。

森本さん
僕も今回初めて作品を見ました。以前から知っている役者も多く出ていてとても楽しかったです。 撮影では台本もなくてセリフもアドリブでしてたので、今日役者全員台本なくてアドリブと聞き安心しましたね。2時間40分の作品って大概寝るんですけど、今回寝なかったですよね。面白くて引き込まれるシーンがいい頃合いに入ってくるので全く飽きずに怠くならない。 一行くらいで言えるようなストーリーをこれだけの作品にできるって凄いこと。中々ないですよね。色んな人達のストーリーがあってどこかで混じり合って、まさに、“行ったり来たり”。 今回私が演じた校長先生、胡散臭かったですねぇ(笑)あ、僕、胡散臭い役演じることが多いんですよ。 自分の俳優としての色が確立出来てきたなと。胡散臭さい役と言えば「森本のぶ 」だと今後も色んな作品に呼んでもらえると嬉しいです。

今回なんと、撮影部アシスタントのツクダさんからもお話を聞くことができました

ツクダさん
この作品ではカメラアシスタントを、そして映画でもカメラマン役として台詞なしで出演しました。初めてだらけなので嬉しかったですよ。 今回完成版を初めてみましたが、「ようこんなんやったな」というのが感想。 ハードスケジュールで人数も少なかったので大変でしたけど、和気藹々とした現場で良い思い出です。なんかこう、達成感があります。

KANSAIPRESS編集部から

今回KANSAIPRESS編集部も11月1日の上映会に参加し鑑賞しました。2時間40分という長尺の作品は普段あまり観ることがないのですが、いざ観るとあれよあれよと言う間にエンドロール。

長尺なのに飽きずにこれだけ楽しめたのは、多くの国籍の登場人物の短い物語が沢山盛り込まれて、交差し、一つの作品として成り立っている。そして作品の絶妙なテンポ感とスピード感、タイミング良く笑えるシーンやハラハラするようなシーンもあったりと観る手をどんどん引き込んでいく。ここにもリム監督の手腕が発揮されている。

日本・大阪のダークな部分というより、人間誰しもが持っているダークな部分、“闇”を描いていて、そこに人々は目を逸らさずにはいられないのではないだろうか。

例えばタレント事務所のスカウトと偽りAVのスカウトだったとか、自分の妻が知らない男とホテルに入って行く所を目撃するとか、セクハラ、売春とか、、、。耳にはするけど、実際に自分の周りには起こり得ないこと、どこか遠い世界のように思っているけど、実は皆言わないだけで、そのような世界を覗いてみたい、もっと言えば、ごく身近な人や自分自身が経験していることだってある。

そして、この作品はダークな部分だけを描いてはいない。張良という香港人には愛する妻と娘がいて、ミャンマー留学生のミミには故郷でミミの幸せを願う母がいて、日米のハーフ ケンジも母を大切に想っているであろう部分が描写されている。誰かしら守るべき人、愛する人、大切な何かを持っていて、その大切な何かを守るために人々はあえぎもがきながら生きているのだ。

映画の中の人物達は皆んな自分のことに必死で他人に興味を示さない。そしてそれは現実世界でも変わらない。リム監督が言うようにそれが良い悪いは別にして、これが“平成から令和に変わる日本の春” 大阪を舞台にリアルに描いている。現在 時代の過渡期であるが、これも一つの象徴なのかもしれない。良い悪いは別として。

キレイな部分を多くは描いてはいないが、一つ一つの物語、登場人物から儚くも美しく、強い生命力を感じ、秀逸な作品を見せてもらえた。

そして9カ国の俳優陣を集め、ロケ地100箇所、20日間の撮影で、このような作品を作り上げてしまう偉才なリム監督。彼だからこそ、彼にしか作れない作品に今後ますます目が離せない。

取材・文/ごとうまき