【インタビュー】LUV K RAFT 結成13年でメジャーデビュー。「オリジナルって何?」と笑う3人が、2枚のアルバムに込めた”先人へのリスペクト”

J-pop

関西発の3人組音楽ユニット・LUV K RAFT(ラブクラフト)が、2026年9月26日、徳間ジャパンコミュニケーションズからメジャーデビューを果たした。デビュー作は1st Full Album『GREEN』『PURPLE』の2作同時配信リリース。全24曲には、結成から13年間の歩みが詰め込まれている。KAREN(Vo)、Mishu(Vo)、北野正人(Gt/Manipulator)の3人に、アルバムに込めた思いからコロナ禍の秘話までたっぷり聞きました。

「ここからがスタート地点」

――アルバムを聴き、90年代のJ-POPを聴いて育った世代として、懐かしい気持ちになりました。

北野
ありがとうございます。今の音楽を否定するつもりはまったくないんです。曲の一部分を切り取って楽しむのも、今の時代に合った良い形だと思う。ただ、僕らには合っていないなと。アルバムをトータルで聴いてもらえる音楽を目指しています。



――改めて、13年目のメジャーデビューを迎えた今の思いを聞かせてください。

KAREN
メジャーデビューして一番変わったのは、気持ちの持ちようですね。「皆さんありがとうございます」という感謝はもちろんありますが、それ以上に「ここからがスタート地点」という思いが大きいです。どれだけ恩返しできるか、周りの皆さんの思いを背負って進んでいけるか。「やっと出られた」というより、「ここからもう一回、気合いを入れ直して頑張らんと」という感覚です。



Mishu
私は音楽を始めた時から、メジャーシーンで活動したいというのが一番の思いでした。その場所に立てたので、本当にここからだなと感じています。



お互いの第一印象は「喋らない人」

――結成のきっかけと、お互いの印象を教えてください。

KAREN
もともと私と北野がバンドをしていて、ラブクラフトを結成した後にMishuとフィーチャリングで共演したんです。そこで「声、合うよね」となって一緒にやることになり、今の形になりました。二人の第一印象は……とにかく喋らない人(笑)。ずっとこっちを見ているのに何を考えているのかわからない。二人とも無口で、私だけが喋っていました。

――今はいかがですか?

KAREN
今は私を支えてくれています。私が自由に走り回っているのを後ろから見ながら、「そこまで行ったらあかんよ」と。Mishuは年下なんですけど、私よりお姉ちゃんをしてくれていて、「KARENさんの歌はこっちがいいですよ」と歌い方まで助言してくれる。音楽面でも人間的にも支えてくれる二人です。

Mishu
私は初めて会った時、お二人ともすごく気を遣う人だなと思いました。そこからずっと先行しているのは「羨ましい」という気持ち。才能はもちろん、しっかり努力されるところ、天真爛漫なところも含めて、まさに天賦の才。ずっと羨ましかったんですけど、今はそこを打破しようとしているところです。

グリーンとパープル、そして”オマージュ”の美学

――ジャケットが印象的です。なぜグリーンとパープルに?

北野
グリーンとパープルは反対色で、どちらをメインにしても、もう一方が差し色として引き立て役になる。面白い組み合わせなんです。2枚組と言えばビートルズの赤盤・青盤が思い浮かびますが、それでは芸がない。そこで2人のまったく違うキャラクターを表す反対色にしました。たまたま2人がよく使う色がグリーンと紫で、マイクのケーブルまでその色だったんですよ。ちなみにベスト盤と思われがちですが、まったく違います。

――ジャケットのデザインにもこだわりが?

北野
実はジャケットも曲の中の音も、先人へのオマージュなんです。バンド名はホラー作家・ラヴクラフトから頂いていますが、ホラー映画ってオマージュがすごく多いですよね。僕らもほぼ全曲にオマージュを入れていて、ジャケットはユニコーンさんの『パニック・アタック』のオマージュ。格好悪い言葉かもしれませんが、僕らはオリジナルをやるつもりがないんです。「オリジナルって何?」という考えなので。先人たちがやってきたことを消さないように、という思いです。

――選曲の基準は?

北野
『GREEN』は、洋楽が一番盛り上がった80〜90年代のシンセサイザーを取り入れた前衛的なサウンド。『PURPLE』はオアシスやブラーが入ってきた90年代のブリットポップ。そう分けたうえで、曲順は当時のA面・B面を意識して6曲ずつ。7曲目でガラッと場面が変わるようにしています。

KAREN
グリーンはMishuの色、パープルは私の色。元気な曲も多いですが、パープルには影の中の光を表現した歌詞や、切ない曲が集まっています。

リード曲「ココア」と「Alice」

――リード曲について教えてください。

KAREN
「ココア」は、3人で歌詞を持ち寄った初めての曲です。北野がトラックを作り、メロディーを当て、3人それぞれが1曲丸々歌詞を書いた。その中から良いと思う1〜2行を選び、さらに3人で書き直しました。3人の思いが一番合致した曲です。

「Alice」はBS-TBS『アリスさんちの囲炉裏端』のオープニング主題歌です。ラブクラフトではこれまで恋愛の曲をあまり書いてこなかったんです。恋をたくさん経験した人だからこそ書ける曲があると思っていて、10代・20代の頃には書けないなと。この年齢になり、13年やってきた今だからこそ書けたのが「Alice」。原作も読みながら、物語と自分たちの感性の両方を取り入れました。

 

――エンジニアのFuyuhiko Inuiさんがミックスした曲も4曲収録されています。

北野
Inuiさんとは25年ほどのお付き合いで、彼はメタルの人。僕らの音楽とまったくかすらない人が手がけるとどうなるかという化学反応ですね。上がってきたミックスが全部かっこよすぎて、1回目のものをそのまま使わせていただいています。

――Mishuさん作詞の「The day dragged on」には「マイノリティ」「孤独」といった言葉があり、強く響きました。

Mishu
シンプルに、私がこれまで生きてきた20代までの自分の話です。隠しているつもりはないけれど、わざわざ言うことでもないと思って生きてきました。その人生の片鱗を、生まれて初めて自分から出したのがこの曲です。悲しいと捉えるか、苛立っていると捉えるか、受け取り方は自由です。

社長が困惑?「ハッピーバースデー」シリーズ

――「ハッピーバースデー」シリーズについても教えてください。

北野
2018年から毎年、誕生日ソングを作っているんです。きっかけは、ずっと面倒を見てくださっている事務所の社長への贈り物。でも、すべての誕生日の方に向けています。これだけ作っていたら、いつか誕生日の歌といえば僕らの曲、とならないかなと。あと2年で10曲、アルバムができますね。

Mishu
私が作った「Day by Day」はひとりぼっちのハッピーバースデー。「雨あがりの空」は、殻を破って新しい自分に生まれ変わる日もハッピーバースデーだよね、という曲です。

北野
社長へのプレゼントにレコードを作ったり、CDとフライヤーを100枚ずつプレスして送ったり。さすがに「在庫が困る、もうやめてくれ」と怒られました(笑)。それでも処分せずに置いてくださっているのが愛ですよね。2026年版はYouTubeに限定公開でリンクだけ送ったら、1週間再生回数ゼロ。当時は社長に、まだ聴いていただけていなかったんです(笑)

学生とのコラボで「ポージングが古い」

――ジャケットとアーティスト写真は専門学校大阪ビジュアルアーツ・アカデミーの学生さんとのコラボです。

北野
僕らは若くないので(笑)、今の10代・20代の感性を取り入れたらどうなるか見たかったんです。学生さんは僕らにとって孫みたいな世代。撮影では「ポージングが古い」と言われました。”デルモ立ち”は古いらしいです(笑)。

KAREN
皆さんがそれぞれ意見を出し、アーティスト側にも聞いてくれて、一日かけて話しながら作れました。全員が納得できる、本当にみんなで作った作品です。

コロナ禍で生まれた曲たち

――コロナ禍はどう過ごされていましたか?

KAREN
ライブができなくなって、初めてSNSを始めました。どんなに夜中でも毎日生配信をして、2週間に1曲新曲を出し続けた。その動画が一度跳ねて、たくさんの方にフォローしていただけるようになったんです。腐らずやり続けたからこそ、今回やっと日の目を見る曲もあります。私が一番思い入れがあるのは「SOMEDAY」。「そう遠くない未来 キミはどこに居るの?」という歌詞は、SNSで応援してくれる皆さんへの「次は本当にライブに来てくれますか?」という問いかけ。悔しさも希望も、ぐちゃぐちゃな気持ちのまま書いた等身大の曲です。

北野
僕はコロナ禍で最初に作った「魚」。みんなが落ち込んでいたので曲を作ろうと、CGまで勉強してMV付きでスタッフに送ったら、2日間既読スルー(笑)。怒って電話したら、部長とマネージャーがすぐ新幹線で大阪に飛んできてくれて、最後は仲良く食事して帰りました。

Mishu
私は「17days」。当時働いていた会社から、ある日突然「明日から来ないでください」と言われて、翌日から無職になったんです。「なんでやねん」というモヤモヤを全部ぶつけました。私のラップパートは、まんま当時の気持ちです。

北野
初めて聞いたよ、そのエピソード!

2曲目が”本当のリード曲”

――初めて聴く方には、どの曲から薦めますか?

北野
1曲目から聴くのが一番です。レンタルCDの時代、ジャケットで借りてきて1曲目から聴いた、あの流れを再現しています。1曲目もリード曲ですが、昔のアルバムは2曲目が本当のリード曲だった。ちゃんと聴いてくれた人にはそれがわかる、という作り方です。

――今後の展望を聞かせてください。

北野
これからは、もう一度メジャーが強くなっていく気がしているんです。当時の元気だった時代がまた来ることを願って、その中心に僕らがいられたら。1年に1枚アルバムを出して、3枚出したら4枚目がベスト、という当時の流れもやりたいですね。

KAREN
もっとツアーがしたいです。東京と大阪以外でも待ってくれている方がたくさんいるので、全国を回りたい。

Mishu
大きい会場で自分たちの音楽を聴いてもらうことが、ずっと変わらない目標です。

リリースツアーはソールドアウト。追加公演は2027年2月20日、東京・有楽町I’M A SHOWで開催される。13年分の思いを乗せて、LUV K RAFTの新たな旅が始まった。 

インタビュー・文・撮影:ごとうまき