【三山ひろし座長公演 火消役に挑戦!】『三山ひろし特別公演』大阪・新歌舞伎座にて5月20日から

撮影:大西二士男
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演歌歌手 三山ひろしの座長公演『三山ひろし特別公演』が大阪・新歌舞伎座で5月20日(金)~31日(火)まで上演される。第一部はお芝居の「いごっそう纏 天までとどけ!!」、第二部は三山ひろし オンステージ 「みやまつり2022 ~名曲100年!歌絵巻!~」の二部構成となっている。今回取材会にて、三山さんに新歌舞伎座での公演に向けての意気込みや自身の歌、趣味のことなど沢山語ってもらった。

関西のお客さまの温かさが好き

ーー新歌舞伎座、関西のお客さまの印象は?

三山さん
私が座長として初めて劇場公演をさせていただいた新歌舞伎座さんには、ご恩返しをしたいと思っています。そして関西圏の皆さまの温かさにいつも救われていますし、自分が高知県出身なのもあってか、関西の方には、より親しみを感じています。何しろ関西の皆さまの反応の良さ、何をやっても笑って、泣いて、喜んで下さるので本当にありがたいです。一方でそこに甘んじないように、昼の部と夜の部で台詞の言い方などを変えたりと創意工夫して、お客さまに‟生きた芝居”を見てもらえたらと思います。

第一部「いごっそう纏 天までとどけ!!」について

ーー3年ぶり4回目となる新歌舞伎座での座長公演、公演が決まった時の心境は?

三山さん
まだまだ予断を許さない状況ではありますが、コロナ禍が少し落ち着き、やっとお芝居ができるようになったと、お芝居と共に歌の世界をお届け出来ることに胸が躍ります。私はお芝居も好きなので、本公演が決まった時は本当に嬉しかったです。やはり新歌舞伎座という劇場に立つからには、お芝居も楽しんでいただき、歌も聴いてもらいたい。歌もお芝居も両方楽しめるのが新歌舞伎座さんのステージの魅力の一つかと。胸のワクワクとドキドキが止まりません。

ーー火消役に挑戦、「いごっそう纏 天までとどけ!!」台本を読んでの感想や見どころは?
三山さん
人と人との絆や愛情、温もりや人間臭さというエッセンスがたっぷり詰まった人情喜劇です。今回も作・演出を池田政之先生にしていただき、台本を頂戴しましたが、私は池田先生の世界観が大好きなんです。今回の「いごっそう纏 天までとどけ!!」の‟いごっそう”とは、私の故郷である高知の土佐弁で快男児、気骨のある男のことを意味します。お芝居からは火消の文化も垣間見れて、高知と大阪の風景を両方感じてもらえるところも見どころの一つです。もちろん、土佐弁もたくさん出てきますし、今回は方言指導もさせていただきます。
“いごっそう”な性格は三山さん自身の性格とも重なると話す。
三山さん
これまでにも自分がやりたいことは必ずやってきました。高知の男性は出来そうもないことはやらない人が多く、一度手をつけたり口を出したら絶対に最後までやり抜く!という一本木な性格の人が多く、僕もその通りの性格です。
お芝居では共演したことのある役者の方たちとの再会も楽しみで、役者さんたちの芝居の‟芸”の世界を見て学び、自分の歌の世界に取り入れたいと意気込んだ。
ーーお芝居が歌にどんな影響をもたらしていますか?
三山さん
歌の世界も数分間の演劇を歌で演じるので‟演歌”ですが、一つの作品に対する造詣の深さが、お芝居をすることによって変化しました。インプットとアウトプットを両方経験することによって作品への理解が深まり、自分の歌に良い影響を与えていると思います。

第二部三山ひろし オンステージ「みやまつり2022~名曲100年!歌絵巻!~」について

第二部の三山ひろし オンステージ 「みやまつり2022 ~名曲100年!歌絵巻!~」では、演歌以外にも童謡、唱歌、ポップス、ロックなど、ジャンルを超えた幅広い作品をお届け。音楽史 激動の100年を振り返るステージとなっている。例えばカバー曲だと「ブルー・シャトウ」「シーサイド・バウンド」「君だけに愛を」などの、GS世代が湧きたつような楽曲が。昭和歌謡では三橋美智也、春日八郎などが聴けるとのこと。‟100年”というテーマでの選曲にはとても頭を悩ませたと話す。
三山さん
皆さまからのリクエストや私が歌いたかった歌などを含めての選曲、あれもこれも入れられなかったのが心苦しいのですが、皆さまに満足していただける内容となっています。
新曲「花恋歌~はなれんか~」について

第二部では新曲「花恋歌~はなれんか~」も聴けるとのこと。‟離れんか”と言われても‟離れない”といった男女の思いを‟花恋歌”の語呂合わせで表現された夫婦歌。

三山さん
どんな困難や苦労があっても2人寄り添って、肩を並べて人生坂を歩んでいきましょう、という歌です。私自身が家庭を持っているのもあり、こんな歳のとり方をしたいですね。そしてコロナ禍、物理的に距離ができる今だからこそ、この曲を聴いて心の距離を縮めてもらえたら。この歌が人と人とを繋ぐ新たなツールになれば嬉しいです。

けん玉、落語、カブトムシ飼育…趣味にも‟いごっそう”を発揮

けん玉のイメージも強い三山さんは、日本けん玉協会に所属し二級指導員を取得、多くの人々にけん玉の魅力を伝え活動している。昨年の大晦日に放送された「第72回NHK紅白歌合戦」では「連続してけん玉をキャッチした人の最も長い列」に挑戦、2年連続で世界記録を達成している。
ーー三山さんにとってけん玉とは?

三山さん
けん玉は、伝承あそびでもある一方で身近に達成感を感じることのできるスポーツの一つだと思っています。一つ一つの技をクリアしていくためには、努力や鍛錬が必要で、達成するたびに自分に自信がつく、これってどの業種にも繋がると思っています。
どの業種にも通ずる3つの「あ」
けん玉にある “慌てず、焦らず、諦めず” という3つの “あ” が演歌の世界にピッタリとハマると話す。
三山さん
気持ちが焦っていても歌は届かない、自分が年相応の歩み方をしていないと(焦っていても)いい歌が歌えないんです。こういった話をすると、他の業種の人たちも「私たちの業界でも3つの “あ” の精神が通用する」と言って下さるんです。けん玉の奥深さを体感しましたね。けん玉は、私のライフワークとなっています。今4段なんですが、来年の15周年には5段を取得したくて、毎日練習に励んでいます。

撮影:大西二士男

多趣味で多才な三山さん、けん玉以外にもカブトムシの飼育に熱中したり、昨年、テレビ番組の企画で古典落語を披露し落語家・三山家とさ春としてデビュー、今年3月には師匠の立川志の春とともに二人落語会を開催した。趣味についての質問が幾つかされた時にも、目を輝かせながら語った。
ーーカブトムシの飼育や落語について
三山さん
今年は少なめの40匹ですが、去年は138匹、夏の譲渡会でファンの方に「ミヤマカブト」をプレゼントしました。幼虫から成虫になる羽化するときの完全変体に心奪われるんです。あの神秘的なドラマに目が離せません。角が見えてきた瞬間などには、もう、ゾクゾクしますね。
と、記者たちに共感を求めて笑いを誘うお茶目な面も見られた。また落語も演劇同様に歌の世界に良い影響を与えていると話す。
三山さん
お芝居も落語も歌の世界に通じるんです。ただ芝居と違うのは、話芸でお客さまに楽しんでいただかないといけないので、演じる度合いはお芝居よりは抑えめにして、言葉の抑揚や間の取り方を工夫しています。お客さまを落語の世界に誘うことは難しいですね。
その追求力には舌を巻く。手を出したら徹底的にやり抜く姿はまさに“いごっそう”そのもの。
三山さん
以前から浪曲や講談、落語が好きで移動の際にも聞いていたんですが、気づけばハマっていて。立川志の春師匠にお稽古をつけてもらいました。最初に覚えたのは「金明竹」、次に「厩火事」なんですが、これがなかなかハードルが高くて、毎晩悪夢にうなされました(笑)。そこで師匠に相談したら『それは落語家が見る夢、あなたは歌い手さんだから見なくていい』と言われました(笑)。このようにやり始めたらとことんやってみたいし、色んな方の「厩火事」を聞いて自分の中に取り入れたりして。もう、突き詰めるとキリがないんですよね。ますます落語の世界に惹かれている自分がいます
今回の公演では落語はないが、今後、落語×歌謡ショーを全国に向けて発信していきたいとのこと。

趣味で得たものが栄養となり、歌にプラスとなっている

自分のその時の年齢に応じた歌を歌っていきたいと話す三山さんは、この道は終わりがないからこそ、毎年、半歩でも成長していきたいと話す。いただいた新曲を解釈する際に、それを読み解く力や表現力に、芝居や落語などで得たものが生かされると話す。
三山さん
私は本道である歌の世界を歩んでいますが、だけど人間って自分の思う通りに進まなかったりするんですよね。ついつい方向が逸れてしまう時があったりして。だけど道から逸れる時も常に一生懸命に逸れたいって思っているんです。そうすると本道に戻るときには何か必ず得るものがある。何か自分の道に使えないかな、と常に考えています。突き詰めて研究をして、最後まで行き着くところまで行きたいんです。

生の舞台、全力で演じたい

千穐楽は筆舌に尽くしがたい寂しさと切なさを感じるという三山さん、お客さまの喜ぶ姿と笑顔が自身のエネルギーと癒しになると話す。
三山さん
僕の作品では池田先生に新作を作ってもらっているので、今後他の人が演じることはないんですよね。つまり千穐楽での僕の台詞が過去のものになるんだ、という一抹の寂しさと切なさは、毎日のように通ってくださっているお客さまも同じ気持ちなのかなと思います。なので一言一言、一幕一幕を全力で演じ切りたいです。そして、もれなく笑顔になっていただき、明日はまた違った舞台になるんだろうな、と思っていただけるような舞台にするためにお稽古も頑張ります。‟生きている芝居”を観て、歌を聴いて、心の洗濯をしてもらえたら、こんなに幸せなことはないです!
『三山ひろし特別公演』は大阪・新歌舞伎座で5月20日(金)~31日(火)まで。

公演概要・チケット

三山ひろし特別公演
公演期間 2022年5月20日(金)~31日(火)
料金 (税込)
1階席 12,000円
2階席 6,000円
3階席 3,500円
特別席 14,000円

チケット三山ひろし特別公演 ○一般発売 | 新歌舞伎座ネットチケット[演劇 演劇のチケット購入・予約] (pia.jp)

新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222(午前10時~午後4時)

 

取材・文/ごとうまき